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2019年10月29日 (火)

曾田本その2を読み解く46行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写46の2長谷川流居合術横雲虎一足稲妻

曾田本その2を読み解く
46、行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写
46の2長谷川流居合術

1、横雲  敵の拳へ抜付
1、虎一足 敵先に抜付
1、稲妻  敵の打込拳へ抜付 

1、浮雲  右脇より我柄を取来る時
1、颪   敵抜かけ来る処にて我が右足にて敵の柄をふみおとす心にて胸へ抜付け勝つ
1、岩浪  敵真向にて左の方より我が柄を取んと両手を出す時我柄を左足の方へよぢて敵の胸乳の上へ切先りに突込勝つ

1、鱗返  敵は真向にて抜かんとかまえるか声にてもかくれがたくさままはって抜付て勝つ
1、波返  右同断
1、瀧落  敵我鐺を取り上へおしあげる所を前へたち抜くひょうしに鐺にて當て突く

以上

 前回は初伝として大森流居合、今回は中傳と位置付ける長谷川流居合がこの流の通り相場と言えるのですが、初伝・中傳・奥伝と振り分けた伝書は古伝ではあったのでしょうか。
 さて、それよりも中村虎猪への行宗貞義の中伝授与では大森流と違って業手附が書き込まれています。通常この手の伝書は目録として業名のみなのですがこの様に教えたと云うのでしょう。

 一本づつ、古伝神傳流秘書(曽田本その1)、大江居合(剣道手ほどき)、細川居合(梅本三男著居合兵法無雙神伝抜刀術)と手附を並べてみます。
1、横雲 敵の拳への抜付
 神傳流秘書:右足を向へ踏出し抜付打込み開き足を引て先に坐したる通りにして納める。
 大江居合:正面に座して刀を右へ静に抜きつゝ、三寸残りし時右足を出し、刀尖を抜付け、その姿勢にて上段にて真直に前方を斬る(敵の首を斬る)。
 細川居合:・・(対座して居る者を斬る)右足踏み込んで(対手の右側面へ)抜付け左膝を進ませつつ刀尖を左後ろへ突込み右諸手上段に引冠り、更に右足踏み込んで斬込み、刀を開く・・納刀
* 
 横雲の抜き付けは「拳」と行宗居合は明言しています。どの様な仮想敵の想定なのでしょう。柄に手を掛け抜き出さんとする拳、或いは抜刀して上段に振り冠って打ち込まんとする拳でしょうか。抜付けは現代居合では、敵の害意を察してというあいまいな動機より横一線に抜き放つ抜付けを指導されて細かな演武上の形をとやかく言われています。古伝神傳流秘書はおおらかです、拳とも首とも右側面とも言って居ません。
 状況次第で如何様にも抜付ける様になれと言って居るわけです。従って敵の右側面と大雑把に捉えれば、敵の動きに拘わらず立膝から腰を上げ「抜付けたる拳の高さは右肩の高さにて右前の所にて止る」と稽古の際に教わったものです。相手の身長に依ってこの抜付けでは首などという固定されたところへの抜き付けなど出来るわけはない、そこで相手は我と同体格で同じ様に動作するとありえない事を稽古してきたわけです。現代居合では河野先生は大日本居合道図譜では「敵の抜刀せんとする腕より其の顔面に(首とも胸とも想定可)横一文字に斬付ける」としています。
 行宗居合の「敵の拳への抜付」は動く標的に抜き付ける事を要求しているわけで中村虎猪さんは、出来たのかこれからの道標なのか判りませんが、根元之巻に基づいた「柄口六寸」の勝を見つめるもので、古伝の安易な稽古の大らかさを踏み越える奥義を要求していると思いたいものです。
 柳生新陰流の抜刀の稽古をしています、一人稽古では仮想敵相手に抜刀していますが、相手に小手を着けてもらい、その小手に向かって抜打ち稽古をします。もたもたして居れば頭上に木刀が打ち込まれてきます。

1、虎一足 敵先に抜付け
 神傳流秘書:左足を引き刀を逆に抜て留め扨打込み後前に同じ
 大江居合:静かに立ちながら左足を引きて刀を抜付くと同時に膝をう囲う、此の囲うは体を左向き中腰となり、横構にて受け止める事、此の体形にて刀を上段に冠り正面に向き座しながら斬り下すなり。・・(膝を受け頭上を斬る)。
 細川居合:(向脛へ薙付け来る者を斬る)・・右手を柄に掛けるなり立上り、左足を一歩後へ退く、同時に刀を引抜き(刀尖放れ際に)左腰を左後へ捻り体が左向きとなるなり(相手が向脛へ薙付け来る)差表の鎬にて強く張受けに受け止め、左膝を右足横へ跪きつつ右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み、刀を開き納め終る。

 居合膝に座す処を相手が先に抜付けるのは同様ですが、さて我は坐している時相手は向こう脛に切り付けるなどあるでしょうか。双方居合膝ならば相手は横雲の抜き付けならば、我が拳、首、右側面でしょう。
 此処は双方抜刀せんと右手を柄に掛け立ち上がりながら刀を抜き出す、そこへ相手が先に抜刀して我が向こう脛へ薙付けるでしょう。そうであれば大江居合の「静かに立ちながら云々」は如何にも演舞向けの対敵意識の無い動作と言えるでしょう、それとも我は敵に先んじ敵の抜刀を誘う様に静かに立ちつつ刀を抜きつつするのでしょう。仮想敵を想定する事を怠って稽古したり演武して居る人が居るようです。習った形ばかり気にしていると何をしているのか傍から見ていると直に判ってしまいます。中には修行を積んで仮想敵が見えるようになったなどと意味不明の事を云う人も居たりして思わず吹き出す始末です。
 古伝神傳流秘書は「左足を引き刀を逆に抜て留め」です。「刀を逆に抜き」とは刃を下にして抜くと読めます。刃を上にして抜出し差表の鎬で相手の我が右足脛に斬り込む刀を受止めるのとは違う様に思えます。行宗居合の横雲の「敵の拳への抜付け」が頭を過ります。相手の斬り付けんとする拳へ「刀を逆に抜きて留め」であったならばこれも根元之巻の極意柄口六寸の勝になるでしょう。
 一本目横雲で出来たならば二本目虎一足でも容易でしょう。刀で相手の刀を受け止める受太刀を何時まで稽古しているのでしょう。
 留めた時は斬った時でありたいものです。基本の形から次々に変化をさせ根元之巻の要求事項を押さえたいものです。

1、稲妻 敵の打込拳へ抜付
 神傳流秘書:左足を引き敵の切て懸る拳を払ふて打込み後同前
 大江居合:右足を少し立てながら左足を後へ引き、両膝を浮めて稍左斜へ斬付け、姿勢の儘上段に取り其体より両膝を板の間に着けて斬り落すなり、血拭い刀を納るは1と(横雲)同じ。抜付けは刀尖を高くするを宣とす。(敵の甲手及頭上を斬る)
 細川居合:・・右手を柄に掛け抜きつつ立上がり、右足を出し(或は立上り左足を退きてもよし、対手の右側面へ)抜付け、左足を右足横へ跪きつつ刀尖を左後へ突き込み、右諸手上段に引冠り更に右足踏込んで斬込み刀を開き納め終る。

 現代の無双直伝英信流では大抵、相手は立ったまま抜刀して上段に振り冠って真向に打込んで来る、我は立ち上がり左足を引いてその拳に抜打つとしています。古伝は相手の状況は一言も述べていません。
 現代居合に口伝口授の面影を偲べば、相手は立って真向に打込んで来るだったと云いたい処ですが、古伝の大らかさから深読みすれば、相手が座したまま腰を上げて抜き打って来る、左足を引いてその拳に抜き付けるならばこの業は根元之巻の柄口六寸が見えて来そうです。
 行宗先生はどの様に「敵の打ち込む拳へ抜き付けたのでしょう。細川居合の『右足を出し」は相手はどの様にして掛って来たのでしょう。打太刀を設けて様々な変化を稽古して見ると一本目横雲、二本目虎一足、三本目稲妻は拳に抜き付ける事でそれらの集大成となりそうです。

下次号に・・

 

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