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2019年10月31日 (木)

曾田本その2を読み解く46行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写46の4長谷川流居合術颪

曾田本その2を読み解く
46、行宗先生より中村虎猪氏に授与したる中傳書写
46の4長谷川流居合術
1、颪 敵抜かけ来る処にて我右足にてふみおとす心にて胸へ抜付け勝つ

 前回までに浮雲迄を解説して来ました。動作が複雑になって手附の文章が長く、複雑になりました。今回も似たようなところが有りそうです。

 神傳流秘書 山下風:右へ振り向き右の足と右の手を柄と一所にて打倒し抜付後同前
  大江居合 颪(又山おろしとも云う):左向き腰を浮めて右斜めに向き、柄止め、直に左へ足を摺り込み、其踵へ臀部を乗せ右斜向体となり、斜刀にて筋変へに打ち其形状にて左手は刀峯を押へ、左足を左横に変へ、刀を右へと両手を伸ばして引き、敵体を引き倒すと同時に右足を右斜へ寄せ、直に其刀を右肩上の處にかざし左足を後部に引き右足を出し、正面に向き上段となりて斬るなり。血拭い刀納む。(敵の眼を柄にて打つ進んで胸を斬り更に頭上を斬る)
 細川居合 山下風:(右側に座して居る者を斬る)正面より右向き・・体を右へ廻し正面へ向くなり右足を引付けると同時に柄を右胸上部へ引上げ右手を柄に逆手に掛け右足踏出すと共に鍔にて対手の左横顔を打ち直ぐ右足を引寄せる。同時に鯉口を腹部へ引付け、刀を右真横へ引抜き(切先き放れ際に)左膝を左へ捻り正面より左向きとなり対手の胸元へ(切先上りに手元下りに)斜に抜付け、更に体を右へ捻り戻しつつ刀の腰に左手の四指を添へ刀尖を下へ柄頭を後上へ引上げ体を右へ廻しつつ対手の体を押倒すなり(正面より右向きとなり)左足を跪き刀尖を(上より)後へ振返し右足踏だすと共に双手を向うへ突出し横一文字に構へ(視線は左正面の対手に注ぐ)左膝を右足へ引寄せつつ諸手上段に振り冠り右足を正面へ踏み出し(胴体へ)斬込み刀を開き納め終る。

 行宗先生の長谷川流の颪は「敵が抜きかけ来る処」を右足で「ふみおとす」そして胸に抜きかけて勝つ業だそうです。中山博道の夢想神傳流の山下嵐が行宗居合の様でした。
 神傳流秘書の山下風は敵の起こりは語られず一方的に「右の足と右の手を柄と一所にて打倒す」と意味不明な文章です。現代居合の夢想神傳流を思い浮かべて、浮雲が敵が柄を取り来るのだからこの業は、同方向に向いて坐している敵が、我が方を向き柄に手を掛け抜き付けんとする、その敵の柄手を我が鍔で打ち右膝を我が右足で打倒して、打ち倒した敵に抜き付けるのも変ですが、起き上がる処を抜き付け、引き倒して、上段から打ち込むのでもいいかなと思えるし、敵が柄を取りに来るのを避けて打ち据えるのもいいかなといった程度で妥協します。

 大江居合は敵の動作は「柄止め」とだけあるのですが、敵が抜かんとするのを「柄止め」するのか、敵が我が柄を取らんとするのを止める「柄止め」なのか疑問です。我が敵のぬかんとするのに行宗居合の様に柄止めして、或いは敵が我が柄を取らんとするのを柄止めして、斜めに抜き付け、敵体を引き倒し、上段となって切り下ろすのでしょう。

 細川居合も解かりずらい、敵の動作は不明ですが、柄を右胸に引き付け右手で逆手に持ち、(反りを返すのでしょう)斬り、敵の左横顔を鍔で打つ、刀を右真横へ抜いてから切先上がりに敵の胸へ斬り付ける、敵を押し倒し、上段から切り込む。

 第20代無雙直伝英信流の宗家河野百錬先生の昭和8年1923年発行の「無雙直傳英信流居合術全」から「颪」:意義 正面より左向に立膝に座し、・・左手を鯉口に掛け鯉口を握りたるまゝ拇指を鍔にかけ右手を柄に掛け、右足を踏み込みつゝ柄頭にて敵の顔面を一撃し、左足を引き付けつゝ右手にて刀を抜きつゝ腰を十分左にひねりて抜き放ち敵の胸元へ切り付け(体は左にみぎ膝は浮かし左膝は下に付く)顔は正面に向け左足を少し後に引き左手の四指をかたなの腰に当て、敵を横に引倒すや右足を正面より右(九十度)に踏み開き肩の高さに右拳を伸ばし(顔は正面に向く)刀を後にはねかえし、みぎあしにて廻り正面に向き乍ら雙手上段に冠り真向に斬込みて納め終ること同前。

此処でも何故「柄頭にて敵の顔面を一撃し」たのか説明はありません、顔面の何処とも言って居ません。昭和17年1942年の河野先生の「大日本居合道図譜」の颪では:浮雲と同様に我が柄を取らんとするを我れ柄頭を敵の顔面に当てる、敵退かんとするを直に其胸部に斬込み右に引倒して上段より胴を斬下して勝つ。 
 動作の解説の中では、柄を敵が取りに来るので、柄を左に逃すや右上方に半円を描く心持にて・・顔面に柄当てするそうです。河野先生の独創かこの辺りも気になる所です。
 そこで昭和13年1938年の山内豊健、谷田左一著「図解居合詳説」の「颪(又山おろしとも云ふ):目的 右側に坐って居る敵が、我に斬り掛かろうとするので、先ず柄頭を以て敵の眼に柄当てを行い、其のひるむ処を胸に斬り付け、更に之を引き倒して、頭上を両断するのである。

 古伝神傳流秘書の教えが抜けだらけなために、昭和になっても夫々の師伝か独創ばかりでした。恐らくどれも指導されてきた名残をとどめながら動作をして来た結果でしょう。どの様な状況に於いても応じられることが出来なければ武術ではないわけで、それぞれの状況下での最善を盡せれば良しでしょう。

以下次号 
 

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