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2019年11月30日 (土)

道歌1秘歌之大事(林崎新夢想流 新庄藩)1の1千ハ品

道歌
1、秘歌之大事(林崎新夢想流 新庄藩 元禄14年1701年)
 
千ハ品木草薬と聲しかと
     と乃病尓と志らで詮なし

読み
千ハ品木草薬と聞きしかど
     どの病にとしらで詮なし
(せんやしなもくそうやくとききしかど
     どのやまいにとしらでせんなし)

 此の歌は新庄藩の林崎新夢想流の伝書にある秘歌之大事の一番目に記載されている歌で、林崎甚助源重信公資料研究委員会による「林崎明神と林崎甚助重信」平成3年1991年発行によるものです。それによると元禄14年1701年に相馬忠左衛門政住が田口彦八郎に伝授したもので、昭和58年1983年秋に最上郡金山町中田の柿崎トミヨ氏宅で発見され、同年11月1日居合振武館に寄贈され陳列されていると有ります。
 秘歌之大事は変体仮名による草書体の毛筆のもので同書の写真ではすでに読むことは困難です。従って伝書の写真の下段に「読みや易くするために天童郷土研究会長伊藤文治郎氏の筆による解読歌を付した」とされています。
 本来居合振武館で原書を見ながら解読すべきでしょうが「林崎明神と林崎甚助重信」の貴重な資料を基に解読させていただきます。一部伊藤文治郎氏と読みの違いは文字の判読及び武術ではこう読むべきとしてミツヒラの浅学も恥じずに述べさせていただきます。

 新庄藩には明治以降にも秘歌は多少変わっていても伝承された様です。「千ハ品の木草能薬と耳しかととの病尓と志らてせん奈し(ちやしなのきくさのやくとみみしかどどのやまいにとしらでせんなし)

 妻木正麟著詳解田宮流居合には田宮流居合歌之伝の中に「千ハ品草木薬と聞きしかどそのあてがひを知らでせんなし」と此の歌が伝わっています。

 歌のもつ深い意味はどの様に解釈しようといいのですが、そのまま読めば、「千に余る木や草の薬があると聞いてみても、どの病に効くのか解らなければ聞いた甲斐もない」という事でしょう。
 さて、この歌を巻頭に掲げた新庄藩の林崎新夢想流の居合心をどの様に理解すればいいのでしょう。
 前回の秘歌之大事の一首目2011年11月4日のこの歌の解釈は「いくつもの業を習ったとて、実戦ではどのような場面に有効なものか解らなければなすすべはない」としています。

 あれから8年経って、今、さてと首を捻っています。直解としては間違いのない解釈でしょう。しかし、是では8年も何をして来たことか、同じ業の同じ形を繰り返し、指導者の指導に従って稽古して来ただけで満足な人はそれでいいかも知れません。
 例えば大森流の一本目前の形を無双直伝英信流の谷村派では正面の敵に正対した抜き付け、下村派では半身の抜き付け、夢想神伝流でも半身の抜き付けなどと、初心者の稽古形をいつまでも引き摺って、型にはまらなければ「違う!」と罵声が飛んでくる始末です。
 その動作の元になる仮想敵は何時も同じ相手で同じ動作なのです。そんなバカなことはあり得ないものです。此の動作で、やすやすと斬られる想定は良しとしても、想定はこの業一つでも幾つもあり得るものです。
 相手の身長や、攻撃の進捗状況によっても目標の抜き付け位置は変わって当たり前、それに瞬時に応じられる事が修行であって、決められたことだけを見事にやるのは武的踊りの練習に過ぎないでしょう。
 林崎甚助重信の居合の根元は「柄口6寸」にあります。敵の柄を握る小手に抜き付けるものです。現代では横一線の抜き付けは右肩、首、コメカミです、相手は我と同じ身長です。それでもこれだけ抜き付けの位置が大まかになっているのに、抜き付けた切先は右肩よりやや低くだそうです。そんな都合の良い相手など居るわけもない。
 身長も、相手の攻撃の状況も違う状況の中で「柄口6寸」に抜き打つ稽古は、それこそ寸刻みの高さで抜付ける稽古、相手との距離の違いに応ずる、体裁き、先を取られた時の請けるか外すかその同時に斬り付ける工夫、これはもう修行そのものです。
 現代居合の目録はせいぜい72本程度のことです、神傳流秘書の業名だけでもたった150程度のものです。千に余る業など目録からではありえませんが、一つの業から幾重にも応じられる稽古を重ねればそれを越えてしまうでしょう。それを瞬時に演じられなければ実用に役立たない唯の体操か武的舞踊に陥ってしまうものです。
 そのような「相手の状況に応じ、幾重にも変化する業技法を身に着けない限り目録の形だけでは稽古した甲斐は無い」と秘歌之大事の一番目に諭されている様に思うこの頃です。
 
        

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