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2019年11月22日 (金)

曾田本その2を読み解く50神道無念流居合幾つか50の5本目

曾田本その2を読み解く
50、神道無念流居合幾つか
50の5本目

太田龍峰著中山博道校閲「居合読本」より神道無念流(立居合12本)第5本目:
意義
前右左の敵に対する動作である。
動作
第1、第1本目第1動に同じ。
 第1本目第1動:「右足より前進し二歩目(左足の地についた時)右手の拇指を下方より其他の指を上方より鍔元近く刀柄を握り右足(三歩目)を出すと同時に右手を以って刀を抜き(此時左手で鞘を前方に出す気持ちを加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十字形をなし左足は右足につれ前方に送り概ね左足尖を右踵に接する如くあらしむ)敵の右前肘を下方より切り上ぐ。」
第2、左足を軸として右方に向ひ右方の敵の正面を切る。
第3、左足を軸として廻れ左をなし右足を一歩踏み進出して左の敵の正面を切る。
第4、刀を収む。

曾田本その2神道無念流(立居合12本)5本目
意義
前右左の敵に対する動作なり。
動作
第1、1本目1動に同じ。
 第1,1本目1動:「右足より前進し二歩目左足にて柄を握り三歩目右足を出すと同時に抜刀(此時左手で鞘を前方に出す気持を加へ後方に振り上げ上体を左斜にして十字形をなし右足につれ前方に送り左足先を右踵に接する如くする)敵の右前肘を下より切り上ぐ」
第2、左足を軸とし右の敵の正面を切る。
第3、左足を軸とし廻れ左をなして右足を一歩出して左の敵之正面を切る。納刀。

 曾田本は第一動の柄握りを解説していませんが、居合読本は「右手の拇指を下方より其他の指を上方より鍔元近く刀柄を握り」と解説しています。無双直伝英信流では当然の柄握りですから「柄を握り」とさらりと書いたのでしょう。
 抜刀して敵の前肘を切り上げる際、刀の刃を下に返して切り上げるはずですが、居合読本も曾田本も触れていません。むしろ「左手で鞘を前方に出す気持ちで後方に振り上げ」と意味不明の文章を掲げ、鞘を前に出す気で後方に振り上げたら、上体は前が掛かりになりそうだなとか思ってしまいます。切り上げるにはその方が手打ちにならず切先に力が乗っていきそうです。
 次に「上体を左斜にし」は右半身でとは読めますが、次の「十字形」の意味は理解できません。刀と体が十字形かななど思いますが、此処は神道無念流の教えを受けなければ理解できそうにありません。
 敵の前肘を切り上げる際左足を右足踵に追い足裁きを要求しています。第1動は右足と左足が接した状況で、その足で左足を軸に右回りに右に向き直りつつ刀を左から上段に振り冠り「右の敵の正面を切る」この際右足を踏み出す指示は無いのですが左右の足を接しての斬りこみは無双直伝英信流には見当たりませんので、右足は敵に向いて一歩踏み込んでしまうのは我が流の癖でしょうか。相手との間合い次第で調整するとします。
 第3動では左足を軸に左回りに左の敵に振り向き右足を踏み込んで左の敵の正面を切る。納刀。
 神道無念流立居合の抜付け後の動作は対敵を置いていますが、手附では仮想敵の動きは特定せず、状況は自分で幾つも想定して応じろと云うものでしょう。

 長州藩相伝神道無念流立居合5本目では「切上げ、右正面打込、左正面打込、納刀」で想定は同じ、前敵抜付は同じですが、左足は右足に追足ではなく、右足を踏み込んで切上げ、右敵に対しては、右足の半歩前に左足を踏み出し左足を軸に右に回り、右足を踏み込んで右敵に打込む。次に右足を軸にして左回り、右足を踏み出して左敵に打込む」この方が形を演ずるばかりの者には、容易そうです。形を「かたち」だからと言って教えられたままにしかしない、出来ない、変化に応じられないのが現代の状況です。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」より大村藩無念流立居合業手付 5本目右、左敵:
 三歩進んで左足を軸に右に向き、右足を一歩踏み出すと共に頭上に抜刀し、右敵の正面に打込む。
 右足を軸に左に回って後を向き、右足を一歩踏み出して左敵の正面に打込む。血振い、納刀は前に同じ。

 大村藩 の神道無念流立居合5本目では左右の敵に割り込む様にして、右左と切るのであって、前敵が想定されていません。是では立居合12本が時代経過と共に変化した例とも云えるでしょう。
 大村藩では安政元年(1854年)大村藩主大村純煕によって斎藤弥九郎の三子歓之助を剣道師範に迎えているのですが同じ斎藤派なのに長州藩とは異なる処が多い。と木村高士先生は「長州藩相伝神道無念流」に書かれています。

木村高士著「長州藩相伝神道無念流」より戸賀崎無念流立居合業手付 5本目:
抜付は1本目に同じ。
 1本目抜付:「三歩進んで間に入るや「矢」と、右手を水平にして前敵に抜付ける。抜付けたとき、刀は水平にして切先は眼の高さ、刀刃は斜左に向く。左手は鞘を放して、後方水平になるまで腕と指も伸ばす」
 左足を右足に引き寄せ乍ら右敵に向い、刀刃ひだりから上段に冠って右足を踏み出し「当」と真甲を打つ。足組はそのままで左回りに左敵に向い、上段から右足を踏み出して「鋭」と正面に打込む。正眼に攻め、納刀。

 戸賀崎居合は敵は前・右・左で長州藩相伝と同じですが、前敵には横一線の抜き付けで応じています。神道無念流の前敵に応じる抜き付けは、横一線の水平抜き付けと下からの切上げ、或いは抜き上げて切り下す「抜打」の方法が伝わっていたのでしょう。どの流派にもある抜刀法ですから我が無双直伝英信流の動作で対応でします。しかしそれは本来の神道無念流であるかどうかは別問題です。

 

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