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2019年12月 4日 (水)

道歌1秘歌之大事(林崎新夢想流 新庄藩)1の5寒事(夜)にて

道歌
1秘歌之大事(林崎新夢想流 新庄藩 元禄14年1701年)
1の5寒事(夜)にて

寒夜にて霜を聞く辺幾心こそ
      敵のあふて能勝をとる遍き
読み
寒夜にて霜を聞くべき心こそ
      敵にあうての勝を取るらん
(かんやにてしもをきくべきこころこそ
      てきにあうてのかちをとるべし)

天童郷土研究会長伊藤文治氏の 解読は「寒事にて霜を聞くべき心こそ敵にあ婦手の勝はとるべき」ですが「寒事」は「寒夜」草書体でしょう。

 此の歌の意味は、寒い夜に水蒸気が氷滴となって結ぶ音を聞き分ける様な、そんな心持ちであれば敵に逢っても勝を取る事が出来るであろう。
 霜が結ぶ音のように聞こえない様な敵の心の動きを事前に察する事が出来ればどんな敵に逢っても勝てる、と云っています。
 
 妻木正麟著詳解田宮流居合には「寒き夜に、霜を聞くべき心こそ 敵に逢いても勝は取るべし」
 林崎新夢想流 新庄藩寛政3年1791年「寒き夜尓霜能聞く辺起心こそ敵尓逢て能勝をとる遍し」
 林崎新夢想流 新庄藩明治44年1912「寒夜尓て霜を聞べき心には敵に逢うての勝をとるらん」
 曾田本その1 居合兵法の和歌「寒夜尓て霜を聞べき心こそ敵に阿ふても勝を取るなり」
 どの時代も多少違っても同じ様なものでしょう。

 無双直伝英信流の河野百錬宗家の昭和8年1933年発行の「無雙直傳英信流居合術全」の正座の部一本目前の業手附を読んでみますと「正面に正座し十分気の充ちたる時、左手を鯉口に取り拇指にて鯉口を切り右手の全指を延ばしたる儘柄に掛けて握り、柄を少し中央に寄せる様にし腰を左にひねりて刀を抜きつゝ両足先を爪立て、膝を延び切るや右足を前に踏み出すと同時に刀を抜き払ひ、(胸の通り横一文字に)更に雙手上段に振り冠りて真向に割付け、・・」とどこの手附でも見られる、演武の為の技術一辺倒のものでした。
 それが昭和13年1938年の「無雙直伝英信流居合道」では「意義 吾が前面に對坐せる敵の害意を認むるや機先を制し直ちに其の首に(又は顔面或は敵の抜刀せんとする腕、以下は同じ)に斬り付け・・」と此の業を繰り出すに当たっての状況を「害意を認むるや」と「霜を聞くべき心」を意図する様な前書きが付加されています。

 昭和9年1934年に太田龍峰著中山博道校閲「居合読本」の大森流初発刀にも意義があります「互に4尺位離れて對坐せる時、急に敵の眼の附近を横薙に切り付け、相抜きの場合は敵の抜付けし拳に切り込む、倒るゝ所を直ちに上段より斬る業である」。此の意義は業手附のおおまかなもので、次に動作が展開します。

 心持については宮本武蔵が兵法三十五箇条に「心の持様は、めらず、からず、たくまず、おそれず、直に広くして、意のこゝろかろく、心のこゝろおもく、心を水にして、折りにふれ、事に応ずる心也。水にへきたんの色あり。一滴もあり、蒼海も在り、能々吟味在るべし」と述べています。五輪書の水之巻兵法心持之事に同様の心が述べられています。

  曾田本その1では土佐の居合の心持肝要之大事では「居合心立合之大事 敵と立合兎やせん角やせんとたくむ事甚嫌う、況や敵を見こなし彼が角打出すべし其所を如此して勝ん抔とたくむ事甚だ悪しゝ、先ず我身を敵の土壇ときわめ何心なく出べし、敵打出す所にてちらりと気移りして勝事也、常の稽古にも思いあんじたくむ事を嫌う能々此念を去り修行する事肝要中の肝要也」

 自分自身の心の持ち様から敵の心が自然に読み取れるもので、常の心であれ、それが「霜を聞く」ことと読んでみました。
 

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