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2020年2月 1日 (土)

道歌3田宮流居合歌の伝と曾田本居合兵法の和歌3の1規矩準縄6水月をとる

道歌
3、田宮流居合歌の伝と曾田本居合兵法の和歌
3の1規矩準縄
6水月をとる

田宮流歌伝口訣
水月をとるとはなしに敵と我
      心の水に澄むにうつらふ

曾田本居合兵法の和歌には有りません。古伝神伝流秘書抜刀心持引歌に水月之大事として古歌が有ります。
水や空空や水とも見へわかず
      通いて住める秋の夜の月
おしなべて物を思わぬ人にさへ
      心をつくる秋の初風
秋来ぬと目にはさやかに見えねども
      風の音にぞ驚かれぬる


 田宮流の上の句は、敵と我が相対してそれと無く水月を取る、と云うのですから是は、水に月は写るその写る状況を我を水として相手を月として見れば下の句との関連が読めて来そうです。

 一刀流仮字書目録が流祖伊藤一刀斎景久から教えを受けた教えを文書化したもので、その中に「水月之事」の項目が有ります。そこでは、水に写る月のように「清く静かな心を養うと相手に少しでも隙があるとそれが心の明鏡に写って打てるようになる。これが水月の教えである」笹森順造著一刀流極意より。

 田宮流伝書口伝では「水月とは機の移りをいう。清水に月の移る如く敵の機の我に移ることを水月と名付ける。我が心の水澄めば敵の機は彼れより来たって移る理ぞ、そこを譬えて水月と云う。・・。」妻木正麟著詳解田宮流より。写るを移るの文字で表しています。
「我が心を無心として澄み渡れば、相手の思う事は水に移る月の如く手に取る様にわかるもの」と歌心は歌っています。

 新庄藩の秘歌之大事から似た歌心を求めれば「寒事にて霜を聞くべき心こそ敵にあふての勝は取るべき」が有ります。霜の結ぶ音を聞き分けるには心を無心にして居なければならない。この歌は曾田本居合兵法の和歌では「寒夜にて霜を聞くべき心こそ敵にあうても勝を取るなり」として伝えています。
 いま一つは「萍をかきわけ見ずば底の月ここにありとはいかでしられん」浮草を掻き分けとは、心を無にして澄んだ水面の如くしなければ其処に月が有る事はわからないよ、というものです。

 一刀流の水月之事に「早き瀬に浮かびて流る水鳥の嘴振る露にうつる月かげ」水鳥が嘴を振る水しぶきにも月は写る、僅かな変化も見分けられる、と水と月を譬えて歌っています。

 無外流の百足伝には「うつるとも月も思はずうつすとも水も思わぬ猿沢の池」「剣術は何にたとえん岩間もる苔の雫に宿る月影」

 
これらの歌だけを詠んでいると、心を無にして相手の心を我が心の鏡に写し、その動きを察して斬り込むのだと思ってしまいそうです。
 宮本武蔵の五輪書空之巻に「心のまよう所なく、朝々時々おこたらず、心意二つの心をみがき、観見二つの眼をとぎ、少しのくもりもなく、まよひの雲の腫れたる所こそ実の空と知るべき也」と無心とは言っても「心意」の二つがあることを述べています。更に「兵法35箇条の心持之事」では「心の持ち様は、めらず、からず、たくまず、おそれず、直にひろくして、意のこゝろかろく、心のこゝろおもく、心を水にして、折りにふれ、事に応ずる 心也。水にへきたんのいろあり。一滴もあり、蒼海も在り。能々吟味あるべし。」と唯無心では済まされない事を述べられています。

 曾田本居合心持肝要之大事居合心立合之大事では「敵と立合兎やせん角やせんとたくむ事甚だ嫌う況や敵を見こなし彼が角打出すべし其の所を此の如くして勝たんなどとたくむ事甚だ悪しゝ。先ず我が身を敵の土壇ときわめ何心無く出べし、敵打出す所にてチラリと気移りて勝事也。常の稽古にも思い案じたくむ事嫌う能々此の念を去り修行する事肝要中の肝要也」とあります。「我が身を敵の土壇と極め」はこのままではただの無心に過ぎない物となってしまいます。
 棒振り剣術を良くする訳知り顔の者が得々と説いて来ても、武蔵も唯無心になれなどと云っていないなあ、と思ってしまいます。

 柳生新陰流に截相口伝書が有ります。そこに「水月・付位をぬすむ事」を。更に歿滋味手段口伝書では「水月活人刀之事」。そして柳生兵庫助による始終不捨書には「水月活人刀と云う習いは昔の教えなり。悪し。重々口伝」として「敵の移り来るを待つ心ではなく先の心を以て敵を移れと移す心」を述べています。(柳生延春著柳生新陰流道眼より引用)

 

 

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