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2020年3月 8日 (日)

道歌4無外流百足伝と曾田本居合兵法の和歌4の1稽古には

道歌
4、無外流百足伝と曾田本居合兵法の和歌
4の1稽古には

無外流百足伝
稽古には清水の末の細々と
     絶えず流るゝ心こそよき
*
 無外流は江戸時代土佐でも相当稽古されていたと思われます。明治以降の高知の剣道家川崎善三郎も無外流でした。
 武術の和歌はどの流派でも持たれていますが。独特の歌と云うより他流と同様の歌であったりしますが、まとまって残されているのは古伝の無雙神傳英信流居合兵法、現在の無双直伝英信流や夢想神傳流。田宮流の歌は林崎甚助重信の系統としてほぼ土佐の居合と同じような和歌であった事は前回でご紹介しました。
 今回は、中川申一著「無外流居合兵道解説」より百足伝40首の和歌を曾田本と対比しながら居合心を学んでみたいと思います。中川先生の「無外流居合兵道解説」は昭和30年1959年発行の非売品で神戸の凌霜剣友会発行で古書としてもなかなか見つけられない状況にあると思います。 
 百足伝については、他に「塩川寶祥の武芸極意書真伝無外流居合兵道」が塩川寶祥監修無外流居合道連盟編著で平成18年2006年に発行されその中に「百足伝解」として40首掲載されています。
 本来ならば無外流に入門してその居合の歌を学ぶべきものでしょうが、古伝の解説同様、土佐の居合の現代居合をベースに其の歌心に迫って見たいと思います。
 無外流の先生方にお叱り頂くとは覚悟の上で、進めて行きます。本物を何としても身に付けて残して行きたい一修行者のわがままをお許し下さい。

 百足伝に戻ります。
 稽古をする心構えを湧き出す清水の細々とでも絶えず流れている風情に譬えて歌っています。この歌は日本の伝統文化のあらゆる分野にも共通する心でもあると思います。

 静かな山の奥から湧き出て、流れ落ちてゆく澄んだ水に心を洗われる歌でしょう。前回の田宮流までは居合の奥義の心を歌った歌が殆どでしたが、無外流の一首目の歌に百足伝を纏められた自鏡流祖多賀自鏡軒盛政の人となりを偲ばせます。
 百足伝の序文に無外流宗家中川申一先生は「流祖多賀自鏡軒盛政が、門人を指導する毎に人体の差別を見て、指導した口授である。人には大小長短幼老貧富に差別ある故指導者は此の点に心を配り、其の人に応じて指導すべきで、決して画一的に指導すべきではない。指導者の心得うべき事である。
 百足とは「ムカデ」のことである。百足は歩くのに此の数多い足を絡ませる事無く、緩急自在に運んでいる。これ無意識なるが故である。居合を行うに当たっても之と同様で刀に気をとられ、手や足に気をとられては充分な動作は出来難い。無意識の状態に入ってこそ真の居合が出来るので、この境地へ迄行くのが修行である。」と述べられています。

 柳生新陰流の柳生兵庫助利厳が尾張大納言に柳生新陰流兵法正統第四世の印可相伝の際もたらした「始終不捨書」のはじめに、円の上に等分の三点を書き「三摩之位」とし「習い・稽古・工夫」の三磨を示されています。

 入門すると早く上手くなりたいとばかりに向きになって勵むも、しばらくするとサボりがちになっていつの間にか消えてしまう人も居ます。そうかと思うと低段者の頃、演武大会などで良い結果を出すと、それから猛烈に励んで何年かは続きますが、やがて初期の業技法から抜け出せずに結果が出ずに消えていきます。
 どこでも、4、5年くらい迄は師匠や古参が兎や角指導らしきことを口挟みますがやがて知らん顔、新人に興味が移って相手にされずほおって置かれます。此処から本来の自分自身で磨き上げる稽古が始まるのかも知れません。
 今の昇段制度は、そんな浮き沈みを程よく慣らす格好の制度かもしれません。

 曾田本居合兵法の和歌に「物を良く習い納むと思うとも心懸けずば皆すたるべし」と歌われています。百足伝の歌とは違い、体力気力器用さも時間が自由になる事もあって、幾らでも稽古が出来て湧き出る清水がいつの間にか大河になった気分になると、曾田本の和歌になってしまう様です。それでも最高段位迄30年も40年もかかる仕組みでは何とか其処までは良さそうですが、そこから先がお粗末です。昇段にのみ頑張って来た人は目標を失って何のために武術を修業して来たのかも見えなくなってしまう。借り物の武士道精神を持ち出して得々としてみても始まらない。稽古をおろそかにするため力量は忽ち低下し、口先ばかりになり、はては「俺は最高段位」とばかり権威を嵩に権力を振るうだけになってしまいます。其の原因の一つが昇段制度に依る、技量の区分けがもたらすもので、段位が高ければ人としても上位であるとの錯覚を起こさせるものでもあるのでしょう。
 果ては段位を金で忖度するのでは、やれやれです。

 

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