道歌6塚原卜伝百首6の81から95
道歌
6、塚原卜伝百首
6の81から95
・
81、む士能狩漁を好ま須ハ
い可なる事も身をかくさ満し
もののふの狩り漁(すなどり)を好まずは
如何なることも身をかくさまし
82、武士能雪にや希多流手足をは
酒あ多ゝ免天洗とそよし
もののふの雪にやけたる手足おば
酒温めて洗うとぞよし
83、む士の夜る乃眠を覚まし徒ゝ
四方能左王きを聞くそゆゝしき
もののふの夜の眠りを覚ましつつ
四方の騒ぎを聞くぞゆゝしき
84、武士能其暁を志らぬこそ
鼠取道志ら奴祢こ成れ
もののふの其の暁を知らぬこそ
鼠取る道知らぬ猫なれ
85、武士ハ軍能事を常々尓
思王さ里世ハ不覚阿るへし
もののふは軍の事を常々に
思はざりせば不覚あるべし
86、む士は鞠琴鼓枇杷笛尓
心つく須ハ愚那類遍し
もののふは鞠琴鼓枇杷笛に
心盡すは愚かなるべし
87、む士能知ら天中ゝ拙なきハ
弓馬鑓堂兼天志るへし
もののふの知らでなかなか拙きは
弓馬鑓と兼ねて知るべし
88、武士ハ古き軍の物語
常耳聞なハ便あるへし
もののふは古き軍の物語
常に聞くなば便りあるべし
別伝
武士の如何に心の猛くとも
知らぬ事には不覚あるべし
89、む士の心尓懸天知へきハ
可川可多礼奴乃敵能色阿以
もののふの心に懸けて知るべきは
勝つ勝たれぬの敵の色あい
90、武士の心能内尓死の一川
忘礼さ里せ盤不覚あらしな
もののふの心の内に死の一つ
忘れざりせば不覚あらじな
91、武士能学不教ハ押並天
其之究尓は死の一川奈利
もののふの学ぶ教えは押し並べて
その究(極)みには死の一つなり
92、武士能まよ不處ハ何奈らむ
いきぬいきぬ能一ツ成介里
もののふの迷う処は何ならむ
生きぬ生きぬの一つなりけり
93、む士能心能鏡曇ら須ハ
立逢敵越う川し志類へし
もののふの心の鏡曇らずば
立逢う敵を写し知るべし
94、武士ハ生死不多川を打捨天
進む心耳し具こ堂ハなし
もののふは生死二つを打ち捨てて
進む心にしく事はなし
95、学ひ怒る心耳態の迷てや
態耳古ゝ路のま多迷不らむ
学びぬる心に態(わざ)の迷いてや
態(わざ)に心の又迷うらん
*
以上で「慶応二丙とら祐持写」卜伝百首を終りますー
次回から一首ずつ卜伝百首を読み解いてみます。柳生石舟斎宗厳の兵法百首と読み比べて楽しんで見たいと思います。毎日一首ずつ読んで行きますので終るのは11月7日頃になるでしょう。
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