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2020年11月16日 (月)

月之抄を読む4、遠飛 面太刀ナリ

月之抄を読む
4、遠飛 面太刀ナリ

 遠飛 面太刀ナリ
 遠飛 猿廻 月影 山陰 浦波 浮舟 切甲 刀棒 

 月之抄に掲げられている形名は、恐らく上泉伊勢守から伝わるものかも知れないし、そうでないかも知れない。
 どの流であっても時代の要請や時の指導者によって変化してしまう事はあり得るものです。
 私が稽古で習っている形(勢法)は柳生厳周に依ると聞かされています。それと月之抄とは異なります。
 月之抄に依る形の名称が「遠飛」ですが厳周伝は「燕飛」と書いて「えんぴ」と読んでいます。疋田伝や柳生神秘抄は「猿飛」です。どれが正しくどれが間違いと云う程の事でもない。
 月之抄の遠飛は8本の名称が記載されていますが、他は6本で月之抄にある「7本目切甲」と「8本目刀棒」の名称が見られません。是は柳生厳長著「正傳新陰流」の柳生石舟斎自筆相伝書の新陰流兵法目録事によれば、「江戸柳生宗矩は、燕飛六箇の太刀の次へ、1、折甲、1、十方(実は刀棒)の二太刀を附け加えている」とされています。
 それとは別に他の伝承された形にも「浦波」と「浮舟」が前後入れ替わったりしています。
 柳生流神秘抄では、8本によって組み立てられています。

新陰流の極意の続け遣いの勢法ですから呼称の入れ替わりなど有っても基本的に同じと考えればいいのでしょう。どれもこれも手附けさえあればやってみれば良いと思います。
 現代剣道の影響か、道場内で決められた「かたち」でしか稽古出来ない、或いはしてはならないという料簡では古流剣術からは何も得られないでしょう。まして新陰流の形は勢法と教えられています。

 赤羽根龍夫先生の「柳生の芸能」では「世俗、武芸の形をみな形といいきたれども、形といえば木や竹にて形を作り、雲形、山形、鳥の形ち、獣の形ち、そのほか種々の形ち等の類の如くに聞こえるなり。されども左様に身形を死物に作ることにはあらず、中国の「武備誌」にては、これを「勢」と称したり。さればこの形も勢々変化して勝ちを取る法を習う基本の姿をいうなり。・・初学、形の名の義を尋ねんと欲せば、「勢」という字にかえて見るべし。・・故に形の見えたるを悪しとし、何とも察し測られぬ処を好しとす。もと「兵」は「常形なく常勢なし」(孫子)といえり。・・されども、それにては一定したる指針なし。指針なくしては修行困難なるにより、仮に種々の形ちを挙げて勝ちを制する道を顕わし示したるなり・故にこれにて身体を習わし、これにて「因敵転化(敵に従って変化する)」の道を心悟せしむ。故に手本の勢なれば手本の形と思うべし。よってまた、これにて勝てということにてはなきなり。それ故に形を死物に作り飾ること悪しく、また情のあらわれたるも悪く、また一つの形にて勝たんと泥むも悪しと知るべし。」
と語られています。この心を失ってしまい「かたち」のみを、押し付ける、古流剣術の似非指導者のなんと多い事でしょう。結果はその形にも至れないものです。中には「手本の形も出来ないのに先へは進ませられない」と仰る指導者も居たりします。剣術の「身体を習わし、敵に従って変化す」の事を指導出来ない自らを恥じるべきでしょう。 

 月之抄:名称遠飛:遠飛・猿廻・月影・山陰・浦波・浮舟・切甲・刀棒

 厳周伝:名称燕飛:燕飛・猿廻・山陰・月影・浦波・浮舟 
    (柳生厳周伝の研究(二)赤羽根龍夫著)

 疋田伝:名称猿飛:猿飛・猿廻・山陰・月影・浮舟・浦波 
    (新陰流(疋田伝)の研究 赤羽根龍夫著)

  柳生流新秘抄:名称猿飛:猿飛・猿廻・月陰・山陰・浦波・浮舟・折甲・刀棒
    (史料柳生新陰流今村嘉雄著 正徳6年1717年)

月之抄は柳生十兵衛三厳であり、柳生新秘抄は柳生宗矩の子柳生宗冬の子宗在の門弟、佐野嘉内勝旧が正徳6年1716年に著したものですから、当然の事として折甲、刀棒がある事になります。
 尾張柳生の厳周伝や上泉伊勢守の門弟疋田豊五郎の疋田伝には折甲、刀棒は存在しません。

 

 

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コメント


万法帰一刀さま
コメントありがとうございます。
折甲と刀棒江戸柳生の猿飛赤羽根先生の「柳生厳周伝の研究」で見ますと続け遣いすれば尾張の燕飛とさして変わる様には思えませんね。
月之抄を読みながら新陰流の心持を学んでいます。お気づきの事がございましたら、是非コメントいただき御指導いただきたくお願い申し上げます。個々の勢法の固有名詞による技法には触れない様に心がけております。
                 ミツヒラ

投稿: ミツヒラ | 2020年12月20日 (日) 00時12分

尾張に伝わる新陰流を学んでいます。
江戸柳生のエンピに足されているセッコウとトウボウ。
截合二十七箇条の「折甲」は月影切りと浦波切りで構成されそれぞれ燕飛の月影、浦波の打太刀側であり、「刀捧」の浮舟切りでは燕飛の浮舟の打太刀側です。
江戸では通常のエンピにそれらをカタとして足したのでは無いかと想像しています。

投稿: 万法帰一刀 | 2020年12月19日 (土) 21時39分

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