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2020年11月18日 (水)

月之抄を読む6、九箇

月之抄を読む
6、九箇

九箇
必勝 逆風 十太刀 和卜 捷径 小詰 大詰 八重垣 村雲
右之九つは構をして居る者にまた構をしてせん(先)を仕掛打そんして(打ち損じて)二の目を勝稽古残心の習也。これ老父のおしえ(教え)なり。
*
 九箇(くか)
 必勝(ひっしょう)、逆風(ぎゃくふう)、十太刀(とうたち)、捷径(しょうけい)、小詰(こづめ)、
大詰(おおづめ)、八重垣(やえがき)、村雲(むらくも)

 右の九本の勢法は構えている相手に、此方も構え先を仕掛け打ち損じる、其処を相手が打込んで来るのを二の目に勝つ稽古で残心の心持ちである。懸り待つ教えで老父(柳生宗矩)の教えである。

 前出の三学は「待ち」で相手が打って来るのに応じたのですが、九箇は「懸かり待つ」もので我の懸り打つのを、相手は外し、ここぞと打って来る処を「二の目」(二の太刀)で打つ「誘い」と「迎え」によるものです。
 業手附については、赤羽根龍夫先生の「柳生厳周伝の研究(1)(2)」、もしくは「柳生の芸能江戸武士の身体操作柳生新陰流を学ぶ」をご参照下さい。読まれた後にDVDを拝見するとより見えて来ます。
 九箇の一本づつの呼称は、どこぞで聞き及んだ熟語なので、、その意味が込められているかもしれませんがそこまで辿るものが見当たりません。業名の由来や、稽古形などに捉われていては居着くばかりですから、語意と勢法のほんの一部の心持ちを並べてみます。
 必勝 :必ず勝つ事。左手を鍔側に持つ、左太刀による。
 逆風 :向かい風。左車
 十太刀:(十文字の太刀)。切上げ・くねり打ち
 和卜 :うかがい和す。剣先を挙げないで打ち落し
 捷径 :近道。刀棒
 小詰 :小さく詰める。獅子洞入り
 大詰 :大きく詰める。抜面
 八重垣:幾重にも巡らされた垣根。横雷刀・当たり拍子
 村雲 :幾重にも群がって動く雲。抜面・くねり打ち

 形の呼称と運剣については柳生新秘抄に、なるほどと言う解説が為されています。短めなのを一つ今村嘉雄著史料より「柳生新陰流新秘抄」を読んで見ます。
 「逆風:逆風はさかしまに吹く風と云うことなり。相手清眼にかまへ居るものに仕懸けて、袈裟がけに前後へ足を踏みかへて、左の方へ太刀を車にまわして打払ひ、返す太刀に腕を搦んで斬るなり。払ふ太刀、振もどす太刀は、さながら弓手右手へ入違うて、風の吹くがごとし。此のありさまを逆風と云うべき、幾度も敵の打つに随って、弓手の足を右手へ踏み、右手を弓手へなし、敵と反して勝つなり。」

 燕飛(猿飛・遠飛)、三学、九箇、を月之抄と合わせ稽古して見ますと、今まで何を稽古としてきたのか、かすかに見えてくるかもしれません。いたずらに些細な意味不明な事に拘って、本筋を見失う様では何時まで経っても先師の残した教えを習い稽古したとは言えそうにないでしょう。
 燕飛、三学、九箇を「形」では無く「勢法」として稽古するにあたり、これ等は「かたち」を稽古するのではなく「勢法」に依る「術」を学ぶことを、抜きにした棒振りを何年やっても何も出来て来ないものでしょう。
 

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