月之抄を読む2、新陰流兵法目録 序 閑長老作の2
月之抄を読む
2、新陰流兵法目録
序 閑長老作の2
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君見ずや、漢高三尺の剣を提げ(ひっさげ)天下を平ぐ、炎運四百年洪基(こうき、大きな事業)を開きしを、亦快からず哉。
凡よそ賢士大夫、志を武名に染むるは、是も学ばざれば、孰(いずれか)学ぶべき。日之を学ぶと雖も、一朝一夕にして其妙を得るに非ず。
日に問い月に学び、旬鍛季錬(十日鍛え一年錬る)、朝に三千打ち、暮れに八百打つ、自然この心に応じてこの手を得るに非ずんば、豈能く其の妙を尽くさん乎。
其の妙を得れば、郢工泥を斲(えいこうどろをけずる)、輪扁輪を斲(けずる)異曲同行与(いきょくどうこうと)。
寔(まことに)夫れ剣術之士、神勢妙術を得れば敵に臨んで戦いを決するに、猶予有る無し。足軽く善く走る、一たびは左、一たびは右、一たびは向き(正面)、一たびは背く。倐而(しゅくとして)往き、忽而(こつとして、すばやく)来る。或は其の表を撃ち、或は其の裏を撃つ。若(もしくは)地より出で、若は天より下るがごとし。其の疾(とき)こと風の如く、其の暴(にわか)なること雷のごとし。人の識する所に非ず、無窮の変を行。凛々(りんりん)威風として人逼り(せまり)て寒し。
白刃始めて合うや、正按、傍堤、横斬、竪截、一刀両断、赤肉、白骨、電光の影中春風を斬るものや。嗟(ああ)至れる哉。
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漢高は剣を以て天下を納め四百年続いた大事業を為したのも剣に依る。剣を学ばずして何を学ぶべきなのか、と投げかけています。然し一朝一夕では其の妙は得られない、得ればどのように異なる事であろうと「異曲同行」だと、漢文の語句を並べ立てています。
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