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2021年1月15日 (金)

月之抄を読む11、習之目録之事11の54神妙剣之事

月之抄を読む
11、習之目録之事
11の54神妙剣之事

11の54神妙剣之事
古語云く
心地含諸種 普雨悉皆萌 頓悟花性者 菩提菓自成(心地に諸種を含めば 雨普くして悉く皆萌す 花の性を頓悟すれば 菩提の菓は自ずから成る)

老父云、中墨と云う也。太刀の納まる処なり。臍の周り五寸四方なり。手字手利見、水月、神妙剣此の三つは人間の惣体の積り、兵法の父母たり。此の三つより心持種々に別れる也。大形(方)此の三つ極まるなり。
水月も是れ神よりの儀、思いつく心を月と定め、神妙剣を鏡とす。夫れに写してよりは、勝ち良きもの也。
人に大小あり。水の場を取る時に、其の影を考えべし。其の場を取る処を、打たずと云う事無し。それを見損ずるもの也。不覚取りては後ろへ退く事ならぬもの也。
外しは浅く取る処にあり。場を取る処を、打つと思う心を、予ねて心に持つ事肝要也。取る処を切らざるものは、其のまゝ勝べき也。懸々先々たるべし。味を持つ処神妙剣也。

亡父の録に神妙剣之事付り身位三重位分之待曲条々之事、或は中墨とも云うと書る。

亦云、神妙剣之事付り両一尺之習之事
太刀の神妙剣源也。兵法の本来共云と書る。是は秀忠公御稽古の時分の目録に父書る多し。

亦云、神妙剣之真之位之事、能く分別すべし。
是極意の頂上也。古語云く
喜与嗔同乎 嗔時喜自俱 心随物作寄 人謂我非夫
と書るもあり。

亦云、身位三重之事、是は上中下の身の懸かり、又身の捻り、或は開き、三重あり。又、高上極意神妙剣之太刀の勝口、身位三重なり共書るあり。

 神妙剣之事に就いて少々長いのですが、先ず古語で述べられている語句を読んで見ます。
 心の地には諸々の種を含んでいる、すみずみ迄雨が降ればそれらの種が皆芽を出して来る。それらの花の性を真に悟るならば煩悩を断って不生、不滅の真如の道を悟って得る仏菓は自ずから成る。心には色々の応じる手立てを持っているのであるから、無心となればそれらの手立ては自ずから成る、と云うのでしょう。

 老父柳生但馬守宗矩は神妙剣とは中墨之事だと云う。太刀の納まる処、臍の周り五寸四方である。
 手字手利見(手字手利剣)、水月、神妙剣此の三つは人間の惣体の積りであって、兵法の父母である。此の三つより心持ち色々に別れるものである。大方この三つに極まるのである。十文字勝する際の敵之太刀を持つ手の裏、間積り、中墨は兵法の大切な積りであると云うのです。
 水月も神より与えられたもので、思いつく心を月として、神妙剣を鏡として写しとるならば、勝つ事は容易である。
 人には大小あるので、水月の場を取る時に、相手大小による影は一定ではないので考えて、水月を取ったならば、必ず打込んで来る。それを見損じるものである。間積りで不覚を取れば、後ろへ退いても敵之打込みを外せないものである。敵の打込みを浅く外し、敵の場を取った所に打つと思うもので、此の心持肝要である。場を取っても切って来ない場合は、そのまま打込んで勝つべきである。懸々先々であるべし。味を持つ処神妙剣也。

 亡父の録に神妙剣之事付り身位三重位分けの待曲条々の事、或るは中墨とも云うと書いてある。
 是は石舟斎の「新陰流截相口伝書亊」の「神妙剣付両一尺位分待曲之事」を指しているのでしょう。
 亦云、での両一尺之習の事は、間積り之事で、一尺の太刀の当たらない間合い、其処での仕掛け。仕懸けても待の敵に対する懸勝事。
 太刀の神妙剣は源である。兵法の本来のものと書いてある。是は秀忠公の御稽古の時分の目録に父宗矩が書いている事が多い。

 亦云、神妙剣之真之位之事、能く分別すべきである。是は極意の頂上である。古語に曰く。
 喜びは嗔(いかり)と同じか 嗔(いかる)時喜び自ずから倶(ともなう) 心は物に随い作り寄す 人謂(いう)我れ夫れに非ずなり
 此の偈は石舟斎の没滋味手段口伝書に書かれています。

 亦云、身位三重之事、これは上中下の身の懸かり、身の捻り、開きの三重のことである。又、高上極意神妙剣之太刀の勝口、身位三重也とも書いてある。
 石舟斎の「新陰流截相口伝書亊」に神妙剣の後に「身の位三重付残心之事」と有ります。三重は残心の事と云っています。無双直伝英信流の残心は敵を斬り倒した後に、新たな敵が現れるのに応じる心構えや斬った敵を思い残心を行います。この新陰流の残心は、一度の斬りで後が続かない事を戒めて、打・撥ね・打等の続け打ちを三重と云い残心の事と云う。

 新陰流の伝書は石舟斎によって目録のみで解説は不断の稽古の中で口伝された習いなのでしょう。随って石舟斎によって第三丗として相伝した、兵庫助以外は正しく口伝されていなかったかも知れません。石舟斎の覚書がある様ですが江戸の宗矩や十兵衛には無く正しく伝承されたか否か、この神妙剣にも表れていて月之抄だけでは読み取れません。

 

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