神傳流秘書14-3大森流・英信流・太刀打

2014年10月25日 (土)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事十本目打込

神傳流秘書を読む

5.太刀打之事

 十本目打込

 相懸又は打太刀待処へ遣方より請て打込み勝

*この業の文章は判読し難いので困ります。
打太刀待つ処へ又は相懸りに懸るのでしょう。
前回の心明剣が打太刀上段、遣方納刀。絶妙剣が双方上段でしょうから、此処も双方上段で行きます。
「遣方より請て打込み」は、上段に構え相懸りにスカスカと歩み寄り、[遣方より請て]では、打太刀が打込んで来るのを遣方請けて、直ちに打込んで勝様にも読めます。。
それとも、遣方より打込まれるのを打太刀請けて、直ちに打込んで打太刀が勝ってしまっては仕組みの意味が根底から外れてしまいます。

一刀流の切落としや新陰流の合し打ちとも意味合いは同じでしょう。合し打ちは相手の打ち込みに瞬時遅れて打ち込みます。その辺の呼吸を「遣方より請て」と書き表したのかもしれません。
政岡先生は「斬り結ぶのみ」としています。
是では、伝書の意味とは同じように思えなくて首を捻っています。
動画で見たり、稽古を見ていますと、大方はこの斬り結びで終わらせていますが、このような殺陣(たて)まがいの稽古ではこの打ち込みから得られるものは無さそうです。

曽田先生の業附口伝によりますと「(伝書になし口伝あり) (留の打込なり)仕打中段、双方真向に物打にて刀を合はし青眼に直り退く」
この業附口伝は、合し打ちを暗示しています。「双方真向に」を稽古し、相手に打ち勝つ技を手に入れなければただの見世物です。「物打にて刀を合し」ばかりが上手くなっても意味なしの様です。
失念してしまった技のように思えてなりません。

曽田先生はメモで神傳流秘書の太刀打之事には十本目打込は無かったと言っているのです。それでは誰が何時書き込んだのでしょう。そしてその証はどの伝書に依るのでしょう。

口伝とは、当時の(昭和初期10年頃)田口先生に指導を竹村静夫先生と請けておられますからその辺か実兄の土居亀江あたりによる口伝でしょう。証明できません。十本目打込ですから留の一本「合し打ち」で遣方が打太刀の打ち下す刀に勝事を習うべきでしょう。

此処までで、大森流(正座の部)、英信流(立膝の部)、太刀打の所謂初伝、中伝を終ります。
稽古の順序は、大森流と平行して太刀打之事はぜひ稽古しておきたいものです。
太刀打は決して高段者のものでは無いと思います。
居合は一人稽古による空間刀法ですが、稽古では常に相手を認識する習慣が欲しいものです。
そして体軸を基とした左右の使い様の認識が出来て来るからです。
他の武術では柔道、合気道、空手、太極拳などをされる方はどんどん先に進めるはずです。

次回から第九代林六太夫守政が神傳流秘書で伝える坂橋流の棒になります。
棒は、足と手と体の捌き方を覚え間と間合いを覚え、手の内の軟らかさも助けてくれます。
棒は自由です。

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2014年10月24日 (金)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事九本目心妙剣

神傳流秘書を読む

5.太刀打之事

 九本目心妙剣

 相懸也打太刀打込を抜なりに請て打込み勝也打込む時相手の刀をおしのける業あるべし

*打太刀上段に構え、遣方刀を鞘に納め、合懸りにスカスカと歩み寄り、打方真向に打ち込んで来るのを遣方抜くなりにこれを受ける。遣方左手を柄に添え、左足を踏み込み打太刀の刀を右下に押し退ける様に落とし上段に振り冠って右足を踏み込んで打太刀の真向を打つ。

相手が打ち込んで来て片手抜きでこれを、顔前頭上に請け止める、左手を柄に添えて強引に押し退ける様にしてみますが、力押しで余り良いとは思えません。
打太刀が再び打ち込まんと上段に振り上げんとする機を捉えて押し退けるべきでしょう。
あるいは、我れが右足を少し引いてフット拮抗を破ってその機に押し退けるべきでしょう。
剛力を頼りでは稽古の必要はないでしょう。

あるいは、打太刀の打ち込みを抜き受けに受けるや体を左に転じて押し退けるように擦り落としてしまうとか研究課題でしょう。
大人のチャンバラでは太刀打之事はないはずです。

曽田先生の業附口伝心明剣
この業附口伝は谷村先生、五藤先生による業附口伝です。
「是も相懸りにても相手待ちかけても不苦敵は真向へかむり我鞘に納てスカスカと行也
其時我片手にて十文字に請る也其儘敵引也スグに我打込勝也気合大事也云々
最後に打込む時は敵の刀を押し除ける様にして左足を踏み込敵の首根に打込む也」

曽田先生の業附口伝が古伝を補っているようです。

政岡先生は、「額前で十文字に受けるや直ちに左手を柄にかけつゝ左足を踏み込み体を開きながら刀を右下にまき落とし刀を後ろからまわして首根を斜めに切る」と見事に相手の打ち込みを瞬時に受けていなしています。

ここは、右足を踏み込み相手打込むのを、抜き請けに片手で受けるや柄に左手を添え、左足をやや左前に踏み込むや体を開き、相手刀を右に巻き落し、廻し打ちに斬り込む、をごつごつとせず流れる様に当たり拍子に捌く事が出来れば良いのでしょう。

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2014年10月23日 (木)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事八本目絶妙剣

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5.太刀打之事

 八本目絶妙剣

 高山に構へ行て打込み打太刀より又打込を請て相手の面へ摺り込み相手肩へ取る(請くる時は切先に手を添え頭の上にて十文字に請け留むるなり)

*「高山に構へ行て」は遣方高山、打太刀高山でしょう。
高山の構えは、上段です。この流の上段はどのように構えたかは不明です。大森六郎左衛門に第九代林六太夫守政が剣術の指導を受けたという事ですと新陰流の雷刀と思われます。竹刀剣道の上段とは違って左拳を頭の上まで上げ額より前に出ない様にし、太刀の角度は45度位後、太刀を振り上げる時肩を下げる意識で肘を拡げます。
竹刀打ちに見られる、肘をすぼめて構え、肘をすぼめて打込むのとは違うと思われます。
現代居合は竹刀剣道の統一理論に合わせる指導者によって失念したと思われます。
河野先生の大日本居合道図譜に於ける上段は、「我が両拳の下より敵の頭上を見下ろす心持ちにて刀を頭上に把り剣先は高く構ゆ」ですが、左拳は額のやや上前、刀は45度で両肘の間から敵を覗き見する様です。是は一刀流の上段でしょう。

打太刀は前回の独妙剣で中央から五歩退いていれば合い進み、留まっていれば待ち掛ける、双方上段に構え、遣方スカスカと歩み行き、間境を越すや右足を踏み込んで打太刀の真向に打ち下す。打太刀右足を少し引いて頭上にて十文字に請ける、打太刀右足を踏み込み遣方の真向に打込む、遣り方之を頭上にて左手を物打ちに添え十文字に請けるや打太刀の刀を右に摺り落とし打太刀の面へ摺り込み勝。「相手肩へ取る」は打太刀摺り込まれて一歩下って八相に取り負けを示す。
この遣方が十文字請けして摺り込む方法についてですが、右手を左手よりやや高く取ります。
物打下辺りに左手をやや低く添えます。
其の添え手は、一般に拇指と食指の股に刀の棟を挟む様にして添えるのを指導されますがそれでは、真向に打込まれた場合砕かれてしまいます。
刀の棟が食指の第3関節から小指の下のふくらみに掌を斜めになる様にして顔前頭上に左手を右手よりやや前にして刃を上にして受けます。
十文字請けした処を支点にして左足を踏み込んで打太刀の右面に切先を摺り込みます。

曽田先生による五藤先生の業附口伝絶妙剣(独妙剣と業名が変わっています)
是も同じく抜也敵待かけても相懸りにても不苦八相にかたきてスカスカと行き場合にて打込也其時敵十文字に請て又我が真向へ打込也其時我又本の儘にて請け面へ摺り込み勝也(我請たる時は左手を刀峯に当て次に摺り込み勝也)(摺り込みたる時敵刀を右肩に取る 曽田メモ)

此処は古伝も業附口伝も上段と八相の違いで同じ様です。
租の違いは、古伝神傳流秘書は真向打ちです、五藤先生の業付口伝は八相からの打ち込みですから相手の左面へ打込み請け止められ、相手真向に打ち込むでしょう。

この絶妙剣は大江先生の英信流居合之型からは外されています。相手と間を十分詰めて打込ませ、両手十文字請けと摺り落とし、勝つ位と敗ける位を学ぶ良い業でしょう。

後に出てくる詰合の五本目鱗形が座して行う同様の業です。

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2014年10月22日 (水)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事七本目独妙剣

神傳流秘書を読む

5.太刀打之事

 七本目独妙剣

 相懸也打太刀高山遣方切先を下げ前に構え行場合にて上へ冠り互に打合尤打太刀をつく心持有柄を面へかへし突込み勝

*独妙剣の業名は大江先生が英信流居合之型を独創する際、太刀打之事を捨て去るつもりでしょうか、英信流居合之型の四本目に盗用しています。
業名を使っただけで内容は異なり太刀打之事の五本目月影の変形です。
古伝を改変して中学生向きに、あるいは当時の状況に則した業を独創するのは仕方が無かったことかも知れません。

古伝を消してしまう様にされたと思われるのは如何なものかと思います。
この辺の経緯はどこにも見当たりません、日本の伝統芸能に於ける宗家制度の独創性の習いの一つかもしれません。
消されたものは稽古される事も無くなり自然消滅してしまいます。それにより時代遅れにならずに現存する原動力になって行くのかもしれません。
今時の、責任感の乏しい未熟な委員による多数決の選択よりは、適切でよい場合もあるものです。

*打太刀上段、遣方「切先を下げて」は下段に構え、互いにスカスカと歩み寄る、遣方切先を打太刀の喉を突き上げるように上段に振り冠り、双方真向に打合、拳を合わせ押し合い、打太刀退かんとするのに乗じて、遣方右足を踏み込んで柄を突き上げて打太刀の顔面に突き当て勝。
打太刀の退かんとするに乗じた面への突き上げとしましたが、拮抗した鍔迫り合いを、遣方右足をどんと踏み込みその拍子に柄頭を突き上げ左足を踏み込んで打太刀の顔面を打つのも一つです。
押し合いの拍子を利用して下から相手の腕をかち上げる事も出来るでしょう。

曽田先生の業附口伝七本目独妙剣(谷村先生・五藤先生の業附口伝では七本目絶妙剣の業名が該当します)
「仕下段・打八相、是は我前へ切尖を下スカスカと行き場合にて互に拝み打に討也敵と我とは拳と拳と行合其時すぐに面へ柄頭を突込て勝也
相懸りにても敵待ちかけても不苦我鍔ぜりとなるや右足をドンと踏み直に左足を踏み込みて敵の拳の下より人中に當てる打の構え不明なるも八相ならん」

この業は後に出てくる詰合の八本目眼関落に同じと言えます。ここで稽古しておきます。
「眼関落:是も互いに立ち敵も我も真向へかむり相懸りにてスカスカと行き場合にて互に拝み打に討也其の時敵の拳と我拳と行合也其時我すぐに柄頭を敵の手元下より顔へはね込み勝也(右足をドンとふみ急に左足を踏み込む也)互に五歩退り納刀以下同じ」

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2014年10月21日 (火)

神傳流秘書を読む 5、太刀打之事六本目水月刀

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5.太刀打之事

 六本目水月刀

 相手高山或は肩遣方切先を相手の面へ突付て行を打太刀八相へ払ふ処を外して上へ勝つ或は其儘随て冠り面へ打込み勝も有り

*打太刀上段或は八相に構え待つ、遣方青眼に構え切先を打太刀の面へ突きつけてするすると間境を越して打太刀の面に突きこんで行く、打太刀思わず八相に払う処、遣方左手を上げて切っ先を下げ、これを外し左足を左前に踏み込み右から上段に振り冠って右足を踏み込み打太刀の真向を打つ。
あるいは、払われるに随って、左足を左前に踏み込み巻き落とすように上段に振り冠り右足を踏み込み打太刀の真向を打つ。

曽田先生の業附口伝による水月刀
仕太刀中段、打太刀八相、是も相懸りにても敵待ちかけても不苦、敵の眉間へ我太刀の切尖を指し付けスカスカと行也敵我太刀を八相にかけてなぐる也其時我すぐにかむりて後を勝也

*この業附口伝は谷村先生、五藤先生から伝わったもので、曽田先生と竹村静夫先生が昭和11年1936年に陸軍戸山学校で演じたものだそうです。神傳流秘書から200年位後のもの事です。
これは大江先生の英信流居合之型では消されてしまいました。切っ先を相手の喉元に付けてスカスカと間境を越す、相手は何をするのかと構え待つ、ハッと思った時喉元に切っ先が迫っている。
良い業だと思いますが打太刀が耐えられずに払うのに応ずるなどは中学生には形だけになって難しかったのでしょうか。
それとも、あり得ない業としてみたのでしょうか。
太刀打之事三本目の請流と似ていますので捨てたとも取れます。
繰り返し稽古する事で三本目請流と六本目水月刀の違いを理解して見る事も必要でしょう。
次の七本目独妙剣は大江先生は是も捨てています。五本目月影と似た所もあるのですが全くその業のポイントは異なります。

太刀打之事は初心者が居合よりも先に学ぶべきもので、間と間合い、手の内、十文字、輪之内等を学ぶもので、決して申し合わせの演武用の遊戯では無いでしょう。

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2014年10月20日 (月)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事五本目月影

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5.太刀打之事

 五本目月影

 打太刀冠り待所へ遣方右の脇に切先を下けて構へ行て打太刀八相に打を切先上て真甲へ上て突付て留め互に押相て別れ両方共車に取り相手打をはつす上へ冠り打込み勝

*此の業は大江先生の鍔留の基になったものでしょう。
この手附に従って打つのは間と間合いの在り様を心得る必要があります。
遣方は前回の請入で中央から青眼の構えで五歩退き元の位置に右足前で立つ。
打太刀は其の儘青眼に構え、遣方が元の位置に立つや、右足を引いて八相に構える。
遣方は、右足前の儘、下段に切先を下げ、切先を右に右下段に構える。
右下段の切っ先は相手左膝に付ける心持でしょう。
遣方スカスカと間合いに踏込むや打太刀八相に遣方の左面を打って来る、遣方切先を上げ、打太刀の真向へ付き付ける様に突き込んで打太刀の打ち込みを留め、互に拳を合わせ押し合い後方に別れ双方とも脇構えに取る。
この脇構は幾つかの形が有りますが、特に指定されていません。しっかり相手に刃を見せて構え瞬時に斬り込める体勢を作るのを学んで見たい所です。
打太刀が遣方の出足を車から斬って来るのを左足を引いて外し上段に振り冠って、打太刀の真向に打込み勝。ここは上段に振り冠らず八相に打つもいいかも知れません。

曽田先生の谷村、五藤先生の業附口伝の月影
「是も同じく抜て居る也相懸りにても敵待ちかけても不苦敵八相にかたきて待ちかくる也敵八相に打処を出合て互に押合又互に開き敵打込む処を我左足を引き立直りて打込み勝也」

大江先生は此の月影を鍔留の名称に変更し、打太刀青眼からの真向打ちを、遣方は下段から上段に振り冠って物打で真向相打ち、拳で押合い脇構えに取り、打太刀の出足への打ち込みを遣方は出足を引いて外して真向に打込みます。

脇構えから、打太刀は一旦上段に振り冠って遣方の出足を身を低め斜めに斬り付けます。
遣方も車から上段に振り冠って真向に打込みます。

大江先生の鍔留は、古伝の遣方下段の構えを残して、双方上段からの真向打ちの相打ちとしています。
古伝は明らかに打太刀の八相で左面もしくは左肩への打ち込みを右下段から遣方は打太刀の喉を突く様にして摺り上げて留めています。打太刀の打込みが厳しい場合は、摺り落ちて鍔によって請け止める事も有ろうかと思います。
大江先生の名のみの鍔留に反応している処ではないでしょう。

即座に双方踏み込んで、拳を合わせ押し合う拮抗した状況を打太刀の押して引くに応じて、双方脇構えになり、打太刀は即座に踏み込んで遣方を攻め、遣方はそれを外して討ち込むすさまじい業です。
大江先生が双方真向打に替えたのは中学生に古伝は危険と判断されたとも思われます。

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2014年10月19日 (日)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事四本目請入

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5.太刀打之事

4本目請入

前の如く打合相手八相に打を前の如くに留め又相手より真甲を打を躰を右へ開きひじを切先にて留勝

*「前の如く打合」この神傳流秘書も省略が多くて其の都度前に戻らなければなりません。
秘伝は毛筆に依る手写し書きでは「前の如く」で省略したくなります。
この、手附で気が付きましたがここでは打太刀を「相手」と書いています。
気になる処ですが相手と書いたり打太刀と書いたり、我を遣方と書いたり我は当然として「相手八相に打を前の如くに留」と云う様に省略してしまったり、統一性が見られなくてマニュアル育ちには古伝は不向きです。
其の上句読点もないので、切る処を間違えると違う意味になってしまう事も有ります。

前の如くは三本目請流しです。
「遣方も高山相手も高山或は肩へかまへるかの中也待処へ遣方歩行右の足にて出合ふ打込を打太刀請け扨」の文章が省略されて「前の如く打合」となります。

三本目請流を終え、互に中央で刀を合わせ(此処は打太刀三歩進み遣方三歩下る)、打太刀は其の儘、遣方は五歩退き元の位置に戻る。
打太刀、遣方共に高山、または八相に構える。
遣方スカスカと歩み行き間境を左足で越すや右足を踏み込んで打太刀の左面を打つ、打太刀右足を踏み出し八相にこれを受ける。この受太刀は刃で受けるのがこの流では当たり前ですが摺落とすように受けるのも工夫でしょう。
打太刀、逆八相から右足を引くや遣方の右面を打つ。遣方左足を踏み込んで打太刀の打ち込みを受ける。
打太刀左足を引いて上段に構え真向に打ち込まんとする。遣方右足を右斜め前に踏み込み右半身となるや打太刀の打ち下さんとする左肘を切っ先にて斬り左足を右足後方に摺り込む。
打太刀右足を少し引いて青眼に刀を下ろし、遣方左足を正面に戻し右足を追い足にして付け、打太刀右足より三歩出て、遣方左足より三歩退き刀を合わせ、打太刀其の儘、遣方五歩下がり元に戻る。

長くなりましたが足をつけてみました、演武会ではそれらしく足踏みをつけて気位を見せますが、何歩などを思ってやるべきものでは無いと思います。
古伝の短い文章をイメージして打ち合う、そのうち自然に理にかなった足の動きになるようになるはずです。
打つ、受けるも少しも留まることのない自然な動きになるはずです。

曽田先生の五藤先生、谷村先生業附口伝太刀打之位請込
「是も同じく相懸りにても敵待かけても不苦請流の如く八相にかたぎスカスカと行て真向へ打込也敵十文字に請て請流の如く裏より八相に打其処を我も左の足を出し請流の如く止むる也敵其時かむりて表より討たんとする所を其儘左の肘へ太刀をすける也」

*「左の肘へ太刀をすける也」の「すける」は「すく」で削ぎ切る、転じて掬い切るかもしれません。

大江先生の英信流の型の絶妙剣がこの業に近いものです。
「打太刀は其のまゝにて左足を出して体を斜向きに八相となり、仕太刀は青眼より左足を出して八相となる、仕太刀は八相のまゝ右足より五歩交互に進み出て、同体にて右足を踏み出して、右面を切る、打太刀は右足を引きて、前の如く打合せ、打太刀は左足を引きて上段構となりて、斬撃の意を示す。之と同時に仕太刀は右足を出して体を右半身とし、中腰となりて、左甲手を斬る、静に青眼になりつゝ打太刀は、三歩出で、仕太刀は三歩退る」

*「打太刀は右足を引きて、前の如く打合せ」は「左足を引きて」の誤植でしょう。八相は左足前に構えています。右足を踏み込み打ち合わせるか、左足を引いて打ち合わせるのが一般的です。大江先生の教えであれば間違いはない、と云うならば、「打太刀、仕太刀の打ち込みを右足を引き左足を追い足に引き「前の如く打合せ」は一本目の出合の頭上での十文字受けでしょう。
古伝は打太刀もはじめは積極的に攻めています。
「体を半身とし、中腰となりて、左甲手を斬る」ここが「すける」状態でしょうか、師伝によっては仕太刀は中腰になり右から掬い上げるように打太刀の左肘に切り付けています。
古伝は「「相手より真甲を打を躰を右へ開きひじを切先にて留勝」です。打太刀は上段に構えるや打ち込んで来るのを、遣方はすばやく筋を変わって打太刀の左肘を斬るのでしょう。
打太刀が斬られるために上段に構えて待っているようにしているのでは無いのでしょう。

此の業は、三本目までで十分相手に付け入って直線的に間を外さない技を学びました、ここでは相手の動きを察知して、相手が左足を引いて上段に構え打下さんとする瞬前に、我は筋を変わって付け入り、その左肘を切るのでしょう。
打太刀も遣方の打ち込みを受けるのではなく、受ける打つの気がなければならないでしょう。

ある人曰く「申し合わせだから」・・・・。

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2014年10月18日 (土)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事三本目請流

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5.太刀打之事

本目請流

 遣方も高山相手も高山或は肩へ構まへるかの中也待処へ遣方歩行右の足にて出合ふ打込を打太刀請扨打太刀の方より少し引て裏を八相に打を左足にて出合ふて留相手又打たんと冠るを直に其儘面へ突込み相手八相に払ふをしたかって上へ取り右の足にて真甲へ勝

*この業は比較的解りやすく書かれています。
二本目の附入を終わって、双方青眼に構え、打太刀はその場に右足前で留まり、遣方は青眼の構えのまま五歩引いて元の位置に右足前で戻る。
打太刀が、右足に左足を揃え青眼から「高山或は肩へ構へ」は上段または八相に構え右足を引く。
遣方も左足を右足に揃え、青眼から上段または八相に構える。
通常、打太刀の構えに遣方は合わせるのが剣術の常識ですから上段ならば上段、八相ならば八相です。
打太刀構え待つ処に遣方スカスカと歩み行き、左足で間を越し右足を踏み込み打太刀の真向または左面に打ち下ろす。
打太刀その位置で右足を踏み込んでこれを逆八相に受ける。
打太刀右足を引いて逆八相から遣方の右面に打ち込む、遣方左足を踏み込んでこれを受ける。
打太刀左足を引いて上段に冠る処、遣方直ぐに右足を踏み込み切っ先を打太刀の面に付け突き込む。
打太刀これを右足を引きながら八相に払う処、遣方払われるに従って左足をやや左前に踏み込み、刀を右から振り冠り、右足を踏み込んで真向に打ち下ろし勝。

曽田先生の谷村先生、五藤先生業附口伝による請流
「是は敵も我も八相の構にて行真向へ討込也(敵は待て居ても相懸りにても不苦)敵十文字に請て又八相にかけて打込也我れ其時左の足を一足踏み込て裏を止ると敵又引てかむる処を我れ其儘面へ突込也敵其時横に払う也其処を体を開き冠り後を勝也(又最後に首根に討込み勝もあり)

*五藤先生は八相です。我が歩み行き右足を踏み込み真向へ打ち込むと相手は、待っている場合は左足を引いてこれを十文字に受けるのでしょう。
相懸りでは右足を踏み込んで受けるのでしょう。
次に、相手が右足を引いて八相に打ち込んでくるのを我は左足を踏み込んでこれを受け止める、「裏を止める」は左足前にして切っ先を左上に向けて逆八相からの右面への打ち込みを止める事でしょう。
「敵又引てかむる」ですから、敵の打ち込みは右足を引いて打ち込み我に止められ、また左足を引いて撃ち込まんと冠る処、我は相手の面へ右足を踏み込み突き込む。
相手たまらず右足を引いて我が刀を横に払う処、我は払われるを機に左足を左前に踏み込み体を開き右肩より振り冠って勝ちを示す、または相手の首根に打ち込み勝。」

政岡先生は、打太刀が左足を引いて上段に構える処、我は右足を踏み込み相手の正面へ突込む、相手右足を踏み込んで斜めに払う、我は払われて左足を左前にふみ込んで体を開きつつ左手を上げて受け流し面。

*此の業は請流が業名です。受け止めて摺り落とすのではありません。

大江先生の英信流居合の型請流
「刀を腰に差したるまま、静に出で打太刀は刀を抜きつゝ左、右足と踏み出し上段より正面を斬り、体を前に流す。仕太刀は左足を右足の側面に出し、刀を右頭上に上げ受け流し左足を踏み変え右足を左足に揃へて体を左に向け打太刀の首を斬る、仕太刀は左足より左斜へ踏み、打太刀は左足より後へ踏み、退きて青眼となり次の本目に移る」

*これは奥居合立業の受流です。

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2014年10月17日 (金)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事二本目附入

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5.太刀打之事

 二本目附入(附込とも云う 曽田メモ)

 前の通り抜合せ相手後へ引かむとするを附入左の手にて拳を取る右の足なれ共拳を取る時は左の足也

*これは大江先生の英信流居合之型では拳取の名称で残っています。然しこの古伝の業名は「附入」です。附け入るとはどういうことか、流によってさまざまな考え方があろうかと思いますが、附け入るとは、機会に乗じる、敵が退くのに乗じて攻勢に出る、でしょう。
相手は間を外し、我が隙を狙おうとする、我はその一瞬の隙に付け込んで行く、この攻防をさしているはずです。

「前の通り」ですから一本目出合の様に打太刀、遣方とも、元の位置に戻り、横に開いて納刀し構えを解く。
再び、打太刀より刀に手を懸けスカスカと間境に至り、打太刀右足を踏み込んで遣方の膝に抜付ける、遣方刀を抜き、右足を踏み出して之を膝前で受ける。
打太刀後へ引こうとする機に乗じて、遣方左足を打太刀の右足側面に踏込み、左手で打太刀の右手を制し、右足を左足後方に摺り込み、体を開いて切先を打太刀の胸に着ける。
この遣方が左手で打太刀の右拳を制する処を拳取と云い之を大江先生は拳取と称したのです。
拳の制し方は色々ある様ですが、打太刀の手首を四指で上から握り拇指を打太刀の拳にあて逆手にとって下に引き制するなど容易でしょう。
拳を取り逆手に制する事ばかりに気を入れて教える処も有る様ですが、先ずしっかりと附入る機を学ぶ事、打ち太刀に密着する事を学ぶ事でしょう。

曽田先生の谷村亀之丞自雄、五藤孫兵衛正亮の業附口伝から附入
「是も出合の如く相懸りにて右の足を先にして場合にてさかさまに抜合せ敵の引かんとする処を我れ左の足を一足付込左の手にて敵の右の手首を取る此の時は左下に引き敵の体制を崩す心持にてなすべし互に刀を合せ五歩退き八相に構え次に移る也」

*この手附には相手の胸に切っ先を付ける動作がありませんが、古伝も拳を取るところまでです。
現在は大江先生の拳取にならっている様です。

大江先生の英信流居合之型拳取
「一本目と同じく、虎走りに出で、膝にて抜き合わせ、仕太刀は、左足を打太刀の右足の側面に踏み込み、左手にて打太刀の右手頸を逆に持ち下へ下げる、打太刀は其のまゝにて上体をやや前に出し、仕太刀は其れと同時に右手の拳を腰部に当て、刀尖を胸に着け、残心を示す、仕太刀は一歩退り、打太刀は一歩出でて青眼構となる(仕太刀は五歩青眼にて退り打太刀は其のまゝにて位置を占む)

*古伝との違いを読み取るだけの稽古を積んで行かなければ、ただの剣舞になってしまいます。古伝は形では無く場に臨んで勝つための稽古でしょう。

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2014年10月16日 (木)

神傳流秘書を読む 5.太刀打之事一本目出合

神傳流秘書を読む

5.太刀打之事(鞘木刀也 立合之事也)

 一本目出合

 相懸りにかゝり相手より下へ抜付けるを抜合せ留て打込相手請る右足也

*神傳流秘書による無双神傳英信流居合兵法には、空間刀法の居合に設対者を設けた仕組(組居合・組太刀・勢法)が組み入れられています。
抜き打ちの一刀で制する事が出来ない場合に応じる、或は先を取られた場合に応じるもので
居合らしいものです。
大江先生は、古伝の太刀打之事を廃して「英信流居合の型」を組み上げられています。
内容は、太刀打之事に添ったものですが、中学生に覚えやすく安全で居合の業と関連させたりしています。
明治40年頃に中学校で居合を指導する機会に組み立てたと思われます。
一本目は大江先生も出合から始まりますが、双方刀を鞘に納め大森流の勢中刀(正座の部月影)の様に虎走りに駆け寄り膝下に抜き打ちして居ます。
古伝太刀打之事は「相懸りにかゝり」で双方間を詰める仕方は、工夫次第の様です。
大江先生は、白兵戦を思い描き「突撃!」の号令で走り行く兵士を想像されたかもしれません。
此の相懸りについては、曽田本に依れば五藤先生、谷村先生業付口伝を基に竹村静夫と実演したというものによると、「出合、是者互に刀を鞘に納めて相懸りにスカスカと行く・・」と歩み足を思わせます。

五藤先生・谷村先生業附口伝より出合(仕打納)
「是は互に刀を鞘に納めて合懸りにてスカスカと行く場合にて右の足を出しさかさまに抜き合せ敵引く処を付け込みて左足にてかむり右足にて討也此の時敵一歩退き頭上にて十文字に請け止むる也互に中段となり我二歩退き敵二歩進みあらためて五歩退く也納刀」

古伝の出合を稽古して見ます。
鞘付木刀を使用するものです。
「相懸り」は、双方ともスカスカと歩み寄り場合に至ると打太刀より右足を踏込み膝下に抜き付けて来る。
遣方透かさず右足を踏込み抜き打ちに之を膝下で受け留める。
打太刀、上段に振り冠らんとするを、遣方左足を右足に引き付けるや上段に振り冠り右足を踏み込んで打太刀の真向に斬り下す。
打太刀左足を一歩退き右足を追い足に頭上にて柄を左に刃を上にして十文字に受け留める。
この請け留めは定番になっていますが少々不自然ですから、柄を右にして左手を刀の棟に添えて請ける十文字請けも稽古しておきますと良いかと思います。
互に中段となり遣方二歩退き、打太刀二歩進み改めて五歩退いて血振り納刀す。
古伝の名称では、相手は打太刀・我は遣方です。

出合のポイントは、打太刀から柄に手を掛けるのです。
そして打太刀から間境で仕掛けて来る、遣方はそれを受ける処が先ず最初の出合です。どちらとも云えず双方打込んで申し合わせの膝下に相打ちでは無いのです。
遣方は打太刀が斬り付けんとする瞬間に打込まれる部位を守る運剣が欲しいものです。
次に、遣方が左足を右足に引き付け攻める気を顕わすに応じて打太刀は打込まんと退いて打込まんとするが圧せられて頭上で遣方の打ち込みを受けるのです。
之が初期の稽古で学ぶ処でしょう。
古伝の抜けだらけの手附から様々な先の取り合いが工夫されるように、打太刀は仕掛、遣方が応じて学ぶ処でしょう。

大江先生の出合
打太刀は柄に手を掛ける、仕太刀は打太刀の如く、柄に手を掛け、双方体を前方少しく屈め、虎走りにて五尺の距離に出て、右足を出したるとき、膝の処にて打は請、仕は抜打にて刃を合す、仕太刀は直ちに、右足左足と一歩摺り込みて上段より真面に打込む、打太刀は左足より右足と追足にて退き、刀を左斜にして受ける、仕太刀は二歩退り、打太刀は二歩出て、中段の構えとなり、残心を示す、之れより互に後へ五歩づつ下り元の位置に帰り血拭ひ刀を納む。

*「刀を左斜めにして受ける」は柄を右にして十文字請けする様に思えます、大方は柄を左にして十文字請けしています。
中には刀を斜めに立てて請けている教えもある様です。

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