曽田本その2を読む

2014年4月22日 (火)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方11暇乞

曽田本その2を読む

 14、11長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

 △立業

 (之は座業にて抜くべきものならん? 曽田メモ)

 19.暇乞(黙礼)(行宗先生の分にはなし 曽田メモ)
正座し両手を膝の上に置き黙礼し、右手柄に掛るや刀を斜に抜き付け上段にて斬る。

20.暇乞(頭を下げ礼をする)
両手を板の間につき頭を板の間に近く下して礼をなし、両手を鞘と柄とに同時にかけ、直ちに抜き上段となり前面を斬る。

21.暇乞(中に頭を下げ右同様に斬る)
(極意の大事 曽田メモ)
(両手を床につき軽く会釈するならん 曽田メモ)
両手を膝の上に置き黙礼よりやや低く頭を下げて礼をして右手を柄に抜き上段にて斬る。

*下村派細川義昌先生系統と思われる白石元一先生の奥居合「抜打」
「(互に挨拶をして未だ終らざるに抜き打ちに斬る意)正面に対して正座し抜刀の用意をなしたる後、両手をつきて坐礼を行い頭を下げつゝ刀を抜き上体が起き終るまでにすでに敵を抜き打ちに斬りつく。後血振納刀、大森流「抜打」と同じ。
是は、大江先生の21番目の暇乞と同じようです。

曽田本による神傳流秘書抜刀心持之事には「抜打 上中下(暇乞三本)」があるのですが曽田先生が加筆されたものか伝書にあったものか解りません。
「格の低き者に対する黙礼の時、等輩に対する礼の時、目上の者に対する礼の時」と曽田先生の補足があります。

現代居合では「暇乞その1・暇乞その2・暇乞その3」として大江先生の暇乞が少々変化して継承されています。

河野先生の昭和8年の無双直伝英信流居合術全の「暇乞」

11、暇乞
正面に向いて正座し、両手を前につきてわずかに頭を下げて、礼をなす間もなくうつむきたるまま両爪先を立て刀を抜き取り、左肩側に刀を突込む如く双手上段に振り冠り真向に切り込み、(膝を乗り出し)刀を開きて血振り刀を納めつつ両踵の上に臀部を下し納める。
12、暇乞
正面に向いて正座し、両手を前につき頭をやや深く下げて刀を抜き取りて、動作する事前に同じ。
13、暇乞
正面に向いて正座し、両手を前につき頭が座に着かんとする所迄下げて、間も無く刀を抜き取りて動作する事前に同じ。

*河野先生の暇乞3本と大江先生のものとは、幾分違う様です。大江先生はこの暇乞をどこから導き出されたのか不明です。大森流の抜打が存在していたのでそれより考案されたのかも知れません。
曽田先生は「暇乞は座業の処で抜くべきだろう」と揶揄されています。檀崎先生の夢想神伝流では奥居合座業の部の後ろに河野先生の方法の様にして有ります。

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2014年4月21日 (月)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方10受流し

曽田本その2を読む

 14、10長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

△立業

 18.受流し(進行中左足を右足の前に踏み出し身を変して請流す)
(此の受流しは大江先生の独創のものにて伝書にはなし 曽田メモ)
左足を出す時、其足を右斜に踏み出し中腰となり刀の柄元を左膝頭の下として刀を抜き、直に其手を頭上に上げ刀を斜とし、体を左斜前より後へ捻る心持にて受け流し、左足を踏みしめ右足を左足に揃え、右拳を右肩上に頭上へ廻し下し、上体をやや屈めると同時に真直に左斜を斬る、揃えたる足踏みより左足を引き血拭納刀。

*この大江先生の奥居合立業の「受流し」は古伝には存在しないもので、大江先生の独創だろうと曽田先生は云っています。

古伝神傳流秘書抜刀心持之事には「受流し」の業名はありません。「弛抜」と云う業があって是は「前の如く歩み行敵より先に打を体を少し開き弛して抜打ちに切なり」というのがあるのですが、之では、打込まれたので体を右なり左なりに躱して敵刀を外して抜き打ちに切るので大森流の「請流し」の運剣が見られません。

この業は、下村派の細川義昌先生系統と思われる白石元一先生の長谷川流奥居合にも見られませんから大江先生の独創でいいのでしょう。

古伝の太刀打之事には3本目に「請流」がありますが、是は、仕太刀が打太刀の面に突いて行く処を八相に払われるのを請け流しに振り冠って真向に斬るものです。

大江先生の「受流し」は進行中敵前面より打込んで来るのを、左足を右足の前に斜めに踏み出し、中腰となって、柄を左膝の下に下げて刀を抜き、敵打込むや右手を頭上に上げ、刀を斜めに頭と左肩を覆う様にして敵刀を受け、体を左斜め前より後へ捻る様にして受け流し、左足を踏み締め敵方に向わしめ、右足を左足に踏み揃え、受流した刀の柄を持つ右拳を右肩上に頭上を通して持ち来たり、上体を前屈みにするや敵の首又は肩に右肩上から左斜め下に斬り下す。左足を引き血振り納刀。
血振りの際右大腿に刀を乗せるかどうかは不明です。

京都山内派の「受流」に名残が見られる様です。
「歩みつゝ左足の足先を右にして右足の右に出すと同時に下方に抜刀。頭上にて差し表の鎬にて相手の刀を受流し、右足を足先斜め左に向け片手にて斬下すと同時に左足を大きく斜め左に踏み出し次に右足も左足に揃う如く踏出す。斬り下すと左手柄頭を握る。正面に向き左足を引き血振り納刀。」

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2014年4月20日 (日)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方9壁添

曽田本その2を読む

 14、9長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

△立業

17.壁添(人中の事 曽田メモ)(進行中立止り両足を揃え上に抜き、直下に斬下し竪立に刀を納む)
中央に出て体を直立とし、両足を揃え刀を上に抜き、上段となりて趾先を立てゝ真直に刀尖を下とし斬り下し、其の体の儘刀尖を下としたる儘血拭い刀を竪立として納む。

*曽田先生は是は「古伝の人中だよ」と云っています。
然し下村派行宗師匠の「長谷川流奥居合抜方(行宗先生口伝)」では「壁添へ:(人中のこと)四囲狭き所にて切る」(2014年4月3日)でした。

古伝神傳流秘書抜刀心持之事には「壁添」と云う業名はありません。
「人中」がどうやら、大江先生のおっしゃる「壁添」のようです。

人中:足を揃え立って居る身にそえて上へ抜き手をのべて打込む納るも体の中にて納る

*大江先生の壁添も人中の様に両足を揃え刀を体の左側に添って上へ抜き、上段に取って手を伸ばして、直下に斬り下します。切先は下向きで、その切先の位置で血振りは右足の脇より僅かに出る程度で刀を横に振ります。納刀は血振りの切先を体の左に添って上げ、鍔元7~8寸を鯉口に寄せ柄頭を上に引き上げ一気に体の左側で納刀します。

あたかも、人の中で、敵と向かい合い、左右に大きく刀を振るう事の出来ない場面を想定させます。そのまま両脇が狭い壁などに囲まれた動作にイメージされます。

古伝英信流居合目録秘訣の上意之大事に「壁添」の教えが在ります。
上意打ちを命じられた場合の心得で決して仕損じる事は許されません。

壁添:壁に限らず惣じて壁に添たる如の不自由の所にて抜くには猶以て腰を開きひねりて体の内にて抜突くべし切らんとする故毎度壁に切あてかもいに切あてゝ仕損ずる也突くに越したる事なし就中身の振廻し不自由の所にては突事肝要也

古伝は壁などの左右が不自由な所では抜いて斬れでは無く、抜いて突けと云っています。
突く場合の抜刀は「向詰」の「抜て諸手を懸け向を突き打込む」の突きでしょう。
上に抜上げて真向に斬り下すのは人中の業で、この場合は左右の人も害せずに、敵との間に人が邪魔しない位接近する様な運剣でしょう。

この「壁添」の心得を「人中」の技に変えて作られたのが大江先生の「壁添」でしょう。

現代居合では、場の想定をいろいろ模索され、河野先生は「我が前面に敵を受け、左又は右に壁ありて抜刀自由ならざる場合い刀を上方に抜取り・・」でした。その後21代では「正面に敵を受け、左に壁ありて普通の如く抜刀し得ざる場合、左上方に刀を抜き取り・・」と変わっています。

場の想定が狭い十字路で、左右何方からか敵が現れるのを斬るとか、四方が狭いとかいろいろ聞きますが此の運剣は古伝の「人中」の方法がぴったりです。

場の想定に気を取られるよりも、身の内で両足を揃えた運剣操作の不安定さを如何に補う事が出来るかの方が重要でしょう。

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2014年4月19日 (土)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方8門入

曽田本その2を読む

 14、8長谷川流奥居合抜付(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

 △立業

 16.門入(進行中片手にて前を突き、後を斬り前を斬る)
右足の出たる時、刀を抜き、左足を出して刀の柄の握りを腰にあて、刀峯を胸に当て右足を出して右手を上に返し刀刃(? 曽田メモ)を左外方に向て敵の胸部を突き、其足踏みの儘体を左へ振り向け後へ向き上段にて斬り、直に右へ廻り前面に向き上段にて斬る。

*この手附も良くわからないのですが、やってみましょう。
右足の出た時、刀を抜き出し右半身となる、左足を踏み出し右半身から左入身となり刀の柄を持つ握り拳を腰に当て、切先を正面に刀の峯を胸に当て、切先やや上向きとして、右足を踏込み、右柄手を上に返して刀刃を左に向けるや敵の胸部を突く。
(この刀刃を左に向ける理由がわからないと曽田先生は?を付けています、切先上がりの突きで敵の胸を突くわけで、拳が下向きで刀刃は右外、右肘の脇に柄を密着して突いた方が安定するはずです)。
その足踏みの儘上段に振り冠りつつ左廻りに振り向き諸手上段から後敵を斬り下し、直に右より廻り上段にて前方の敵を斬る。

*前敵を右足を踏み込んで突いた其の足の儘回転する足の捌きです。足の踏み替えはありません。
この「門入」に相当する業は古伝神傳流秘書抜刀心持之事には見当たりません。無双直伝英信流居合目録には上意之大事に「門入」の業名が存在します。内容は不明です。英信流居合目録秘訣には上意之大事に「門入」があるのですが、門内に入る心得です。
「戸口を出入するの心得也戸口の内に刀をふり上て待つを計知ときは刀の下緒のはしを左の手に取り刀を背てうつむきとどこをり無く走り込むべし我が胴中に切りかくるや否や脇差を以抜つけ足をなぐべし」

奥居合立業の「門入」は大江先生の独創なのでしょう。

昭和8年の河野先生の無双直伝英信流居合術全では門入は「・・右手を柄に掛け右足を出し前に抜き、左足を踏出して右拳を後方に引き(刀身は水平にして刀尖は鯉口の近くに)右足を踏み出し、同時に右拳を前方に突込み左足を中心として左に廻りつつ諸手上段に冠りて右足を大きく後方に踏み込みて切り下し、更に左廻りに(左足を中心として)にて正面に右足を踏込みて切下し・・・」

*大江先生の独創の門入が変化しています。正面の敵に切先鯉口から突きに行っています。右足は左足を軸に踏み替えられています。
更に(頭上に鴨居又は門等ありて、刀尖が閊える場合に行う業)と場の状況も負荷されます。

足踏みについては、前敵を突く時右足を踏み出し、左廻りに後へ廻り、右足を踏み込んで後敵を斬り、その足踏みで振り返り前敵を斬る、のもあります。(野村凱風先生)

現代居合では河野先生の手附に従い右足の踏み替えと、鴨居に閊え無い様に刀の運びを鴨居下では水平に上段に取り柄が己が顔前頭上に出る位に取り腰を低めたまま振り冠り、鴨居を出てから斬り下す様にします。

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2014年4月18日 (金)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方7袖摺返

曽田本その2を読む

14、7長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

立業

15.袖摺返し(伝書にはなし 曽田メモ)
(進行中抜き放ち刀を身(左の身)に添え群衆を押し開き進みつゝ斬る)右足の出たる時刀を静かに抜き、直ちに右手は上へ左手は下へ胸の処にて組み合わせ、足は左右と交叉的に数歩出しつゝ両手肘に力を入れて多数の人を押し分ける如くして左右に開き、直に上段に取りて中腰にて右足の出たる時前面を斬る(右手を開く時は両手を伸ばす、肘の処を開くこと)」

*この「袖摺返し」は古伝神傳流秘書抜刀心持之事には業として存在しません。大江先生の創作かも知れませんが、なぜか下村派の行宗先生の口伝には(2014年4月2日)には奥居合の立業として掲載されています、「袖摺返し:(伝書にはなし 曽田メモ)人をおしわけて切る(左足にてかむり、右足にて切る)」これでは大江先生の「袖摺返し」其の儘です。

「袖摺返し」と云う業名は、古伝神傳流秘書の「大小立詰」の一本目に「袖摺返」として存在します。(2013年2月9日)
「我が立て居る処へ相手右脇より来り我が刀の柄と鐺を取り抜かせじとする時其儘踏みしさり柄を相手の左の足のかゞみに懸け中へ入り又我右より来り組付をひじを張り体を下り中に入る」

大江先生の袖摺返しは、古伝神傳流秘書の抜刀心持之事「行違」の業の替え業だったかも知れませんし、その業から思いついたものかも知れません。

古伝「行違」「行違に左の脇に添えて払い捨て冠って打込也」(2013年3月8日)

*歩み行くうち、前方から来る敵の害意を察し、間境で右足を踏み出し前方に刀を抜き放ち、右足を左足に退き揃え同時に左肩下に刃を外にして左腕に付け腕を組み、敵とすれ違う瞬前に左足を敵に付けこむ様に踏み出し敵の胴を払う。右足を前方に大きく踏み込み払い捨てた敵に左足を軸に左廻りに振り向き上段から切り下ろして勝つ。
この払い捨ては、敵の胴を払うのでしょう。
双方歩みよるのですから、間の取り方がポイントでしょう、足捌きが重要です。敵とすれ違う寸前に我が刀は左腕に添わされ刃は外を向き敵に触れる寸前である事でしょう。

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2014年4月17日 (木)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方6行違

曽田本その2を読む

14、6長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

△立業

14.行違(進行中正面を柄頭にて打ち后を斬り又前を斬る)
右足の出たる時(敵の顔面を柄頭にて)左手は鞘と鍔を拇指にて押へ、右手は柄を握りたるまゝ前方に伸ばし柄当てをなし、其足踏みの儘体を左へ廻して後方に向いつゝ抜き付、右手(? 曽田メモ)にて斬り、直に前方の右へ振り向き上段にて切る。

*この業は古伝神傳流秘書の抜刀心持之事では「連達」でしょう。
「歩み行内前を右之拳にて突き其儘に左廻りに振返り後を切り又前へ振向て打込也」

古伝の「行違」は「行違に左の脇に添えて払い捨て冠って打込也」というもので、前進中前方から歩み来る敵が左脇を通過する寸前に、刀を抜き左肘の上に乗せ左脇に添えて右足を踏み込んで敵の左胴を払い捨てに斬り付け左に反転して上段から斬り下す、と云うものです。袖摺返の様な運剣が含まれるものです。
大江先生によって改変の際捨て去られた大業です。

古伝の連達は前方から二人の敵が歩いて来て、先頭の敵を遣り過ごすや後方の敵に右拳で打込み怯む隙に後方へ振り向き、異変に気付いて振り向く敵に斬り下し前に振り返って真向から斬り下すものです。

曽田先生は大江先生の後の敵を斬る際「ここで右片手抜き打ちかい?」というのでしょう。

下村派の行宗先生の「行違」「柄頭にて前をつきふり返りて切る」だけです。

下村派細川義昌先生の系統と思われる白石元一先生の場合は、「摺違(歩行中擦違う際敵を斬る意):歩行中敵と擦違う一歩手前に於いて右足を踏み出し刀を抜き、左足を出すと同時に刀を左側に取る。此の時右手は左肘の外に位置し、左手は鯉口を持ちたる儘右脇腹に取り左右の腕は交叉す。
続いて右足を踏み出し擦れ違いざまに敵の胴を横に払い、直ちに振り返り右足を踏み出すと同時に、再び上段より斬り下す」古伝の「行違」です。

古伝では大江先生の技は「行連」なのでしょう。「行連」の業名は既に奥居合立業の部一本目に使ってしまいました。
大江先生は「行連」は同一方向に歩み行もの、「行違」は前方から歩み来て擦違うものとされたのでしょう。

このように、古伝の業名と業技法をいじらなければならなかった理由が伝わってこないのはどうしてでしょう。
土佐の居合に大森流を入れたりしてもその理由が述べられていたし、重信流を英信流と呼びならわす理由も古伝は伝えて来ています。
運剣の所作が刀の形状や帯刀の違い、そして人の力量と共に変化するのは当然ですが、大江先生の改変は釈然としません。
明治維新の大改革の中で何か大きな空白を感じています。

古伝神傳流秘書抜刀心持の業名と大江先生の無双直伝英信流の奥居合の業名とを対比しておきます。

古伝:大江先生
向拂:霞、柄留:脛囲、向詰:両詰、両詰:戸詰・戸脇、三角:なし、四角:四方切(変形)、棚下:棚下(変形)、

人中:壁添、行違:連達、連達:行違、行違:なし(袖摺返変形)、夜之太刀:信夫、追懸切:なし(正座の部追風変形)、五方切:惣捲(変形)、放打:惣留、虎走:虎走、抜打:暇乞(1・2・3)、なし:門入(創作)、

抜打:なし、弛抜:なし(受流変形)、賢之事(不明):なし、クゝリ捨(不明):なし、軍馬之大事(具足の心得):なし

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2014年4月16日 (水)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方5信夫

曽田本その2を読む

14、5長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

△立業

13.信夫(暗打ち)(異名なり 夜の太刀なり 曽田メモ)
左足より右足と左斜方向に廻りつゝ静に刀を抜き、右足の出たる時、右足を右斜めに踏み両足を斜に開き、体をやや右横へ屈め中腰となり其刀尖を板の間につけ左足を左斜に踏み込みて上段より真直ぐに斬る。

*大江先生の名付けられた「信夫」の業名が曽田先生は嫌なようです。「夜の太刀」なりと、是は古伝の業名を云うべきだろうと云うのでしょう。
然し曽田先生の師匠の行宗先生口伝でも「信夫」と云っています(2014年4月1日)から、この頃業名はどうなっていたのでしょう。

この大江先生の信夫の業手附は方向が解りにくいのですが、やってみます。
進行中、左足を左斜めに踏み出し、右足をその左足の左斜めに踏み出し、静かに刀を抜き、左足を正面に踏み出し、右足を出す時右斜めに踏み、両足が右斜めになる様に開き、体を稍右横に屈め中腰となり刀尖を板の間に打ち、左足を右足の方向に踏込んで上段となり右足を踏み込んで真直ぐに斬る。左へ「く」の字を描く様に足を運ぶのでしょう。何をするための動作なのかこれだけでは解りません。

古伝神傳流秘書抜刀心持之事「夜之太刀」
「歩み行抜て体を下り刀を右脇へ出し地をパタと打って打込む闇夜の仕合也」

河野先生の昭和8年の無双直伝英信流居合術全の「信夫」
「正面に向いて進みつつ例に依りて鯉口を切り体を沈めて向うを透かし見て左に左足右足と二歩披き、正面を見つつ体を右に十分及ばして刀を右前に突き出し、及びたる体を引きお越し空を切らせ、直ちに刀を右より双手上段に振り冠り左足右足と踏込みて切り下し納め終る事前に同じ。詳細は口伝の事。」

*この「信夫」は、「体を右に十分及ばして刀を右前に突き出し」てはいますが、刀で地を打って敵を引き付ける様な事にはなっていない様です。詳細は口伝だそうです。

昭和13年の無双直伝英信流居合道の「信夫」
「・・・体を十分右に及ばして右腕を十分延ばし、刀を右前方に刃を前に向けて突き出し、刀先の裏を軽く床につけ(刀先は最初前進したる直線上にある事)敵その所に斬り込み来るを直ちに右斜め前方に向き直り乍ら刀を・・・」

*詳細は口伝の部分が見えてきました。
意義:暗夜、前方に幽かに敵を認め、吾れ左側に体をかわし、敵の進み来る真正面の地面に吾が剣先を着けて敵を引き寄せ、敵其の所に斬り込み来るを上段より斬り付けて勝つの意なり」

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2014年4月15日 (火)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方4総留

曽田本その2を読む

 14、4長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

 △立業

 12.総留め(進行中三四遍斬て納む)(放し討 曽田メモ)
右足を出して刀を右斜に抜き付け左足を出して抜付けたる刀を納む、以上の如く四、五回進みつゝ行く也、最後の時は其の儘にて刀を納む。

*どうもこの大江先生の手附では、「総留め」がよく見えません。右足を踏み込んで刀を右斜めの敵に抜き付けるのか、現代居合の風では、右足の踏み出しは「出して」だけですから正面に踏み出すのでしょう。
そうであれば「刀を右斜めに抜き付け」は正面の敵に右袈裟懸けでしょか、それとも文面通り右斜め前の敵に抜き付けるのでしょうか、解りません。
何れにしても左足を右足の前に踏み出して納刀する。以上の動作を四、五回行い進み最後は抜き付けて血拭いして納刀でしょう。

この業は「放し討」だと曽田先生はメモしています。古伝は「放打」です。
古伝神傳流秘書抜刀心持之事「「放打」
「行内片手打に切納ては又切数きわまりなし」

下村派細川義昌先生系統と思われる白石元一先生の「放打」
「正面に対し立姿二、三歩前進し、左足を踏出す時抜刀用意、右足を出すと同時に右斜前の敵に対し抜き打ちに右片手にて斬り付け(やや半身となる)直ちに納刀と同時に左足を右足に揃え一足となり、更に第二に現れたる敵に対し前と同様斬り付けたる後納刀。又前同様第三の敵に対して斬り付け納刀(同時に足も一足となる)」

*白石居合では右足を正面に踏込んで、右斜め前の敵をやや半身で右片手で抜付けています。右片手袈裟でいいのだろうと思います。

河野先生も昭和8年の無双直伝英信流居合術全の「惣留」では「・・右手を柄に掛けると同時に右足を踏み出して腰を十分左に「ひねり」て右斜前に抜付け、左足を右足先まで引寄せ乍ら刀を納め・・・」と右斜め前への抜付けです。

河野先生の昭和13年の無双直伝英信流居合道の「惣留」では「・・腰を十分左に「ひねり」て半身となりて抜打に右斜めに斬り付け、左足を右足先迄引き寄せ・・」となって、「右斜め前に抜付け」が「右斜めに斬り付け」と変わっています。更に意義として「吾れ狭き板橋又は堤、或は階段等の、両側にかわせぬ様な場所を通行の時、前面より敵仕掛来るを、その胸部に斬り付け、一人宛をたおして勝の意也」と想定を明らかにされています。

古伝は河野先生の通りであったかは不明です。敵が正面から来ようと右斜めであろうと、両側に躱せぬ場合は、片手袈裟に右袈裟に抜き打つとして稽古すればよいのでしょう。

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2014年4月14日 (月)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方3惣捲り

曽田本その2を読む

 14、3長谷川流奥居合抜方(大江正路先生、堀田捨次郎先生著)

 △立業

 11.惣捲り(進行中面、肩、胸、腰を斬る)
右足を少し出して刀を抜き、其の足を左足に引き寄せ右手を頭上へ廻し右肩上に取り左手をかけ、やや中腰にて(右足より左足と追足にて)敵の左面を斬り、直に左肩上に刀を取り追足にて敵の右肩を斬り、再び右肩上段となり敵の左胴を斬り、再び左肩上段より右足を踏み開き敵の右腰を目懸け刀を大きく廻し体を中腰となして敵の右腰を斬り中腰の儘上段より正面を斬る。

*敵前方より斬り懸って来る、右足を少し出して刀を抜き、その足を左足に引き寄せ、右手を頭上に上げて刀を抜き取り、「右肩上に刀を取り」は、八相の構えでしょうか。
右足を踏み込み左足を追い足に敵の左面を斬る。
八相から上段に構え直し、上段から左面を斜めに斬るのは竹刀剣道の高野先生の「剣道」ですから、ここは八相から左面にダイレクトに斜めに斬り込んでいるのでしょう。
直ぐに刀を「左肩上」にですから逆八相に取り右足を踏み込み追い足で敵の右肩を斜めに斬り、再び「右肩上段」は八相から敵の左腰を斬り、再び「左肩上段」は「逆八相」より「右足を踏み開き」ですから、右に開いて中腰となり、車に取ってでしょう、刀を敵の右腰目掛けて左から右へ大きく廻し斬りして敵の右腰を斬り、中腰の儘上段に振り冠って右足を踏み込み上段より真向に斬り下す。

古伝の運剣法なのか、現代居合の動作とは、だいぶ異なるようです。

現代居合は河野先生の大日本居合道図譜の惣捲
「・・前進し乍ら右足の出たる時刀を水平に抜きかける。
敵刀を受流し乍ら右足を左足に退き付け上段となり、敵の退くに乗じてすかさず右足を踏込み敵の左面に斬り付ける。
次に左面に斬り込みたる刀の途より上段に冠りながら右足を踏込むや(左足も連れて)敵の右肩より袈裟に斜めに斬り込む。
次に同要領にて上段となり右足を踏込みて(左足も連れて)敵の左胴に斜に斬り込む。
次に同要領にて上段より刀先を左方に廻し刃を前に水平に構えるや右足を深く踏込み(左足は其位置に)乍ら体を沈めて腰部に斬り込む。
上段となるや直に右足より少し踏込む心持にて敵の真向に斬り下す。

*河野先生の運剣は竹刀剣道の運剣です。「左面を斬り込みたる刀の途より上段に冠り」は「まくり斬り」する古伝の教えを考えると、切り払って、後ろから頭上で剣尖を廻す、廻し斬りの方法もありうるものでしょう。

下村派の行宗先生は「総捲り 五方切」
「総まくり、五方切りとも云う」

古伝神傳流秘書抜刀心持之事「五方切」
「歩み行内抜て右の肩へ取り切又左より切又右より切段々切下げ其儘上へ冠り打込也」

英信流居合目録秘訣外之物の大事「惣捲形十」
「竪横無尽に打振りて敵をまくり切る也故に形十と有也常に稽古の格くは抜打に切り夫より首肩腰脛と段々切り下げ又冠り打込也」

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2014年4月13日 (日)

曽田本その2を読む14長谷川流奥居合抜方2連達

曽田本その2を読む

14、2長谷川流奥居合抜方(大江正路先生・堀田捨次郎先生著)

△立業

10.連達(進行中左を突き右を斬る)
右横へ右足を踏み体を右に避け、刀を斜に抜き左横を顧みながら刀を水平として左を突き、右へ体を変じて上段にて斬る。

*この連達は左右に敵を請け、並んで歩行中、我は右足を右横に踏み体を右に寄せています。
一歩歩行を盗んでいるはずです。右敵は即座に立ち止まっても、左敵は一歩前に出ているでしょう。或は敏感に左右の敵も立ち止まったかもしれません。或は右敵が一歩先に出て左敵が遅れるかもしれません。

*古伝神傳流秘書抜刀心持之事では「行連」は「立って歩み行内に抜て左を突き右を切る両詰に同じ」でした。これは大江先生の「連達」でしょう。
古伝の「連達」は「歩み行内前を右の拳にて突き其儘に左廻りに振返り後を切り又前へ振向て打込也」です。これは大江先生の柄にて前の敵を打つ違いはあっても「行違」でしょう。

下村派の行宗先生は行連は「右へぬきつけ左を切る」。連達は「左をつきて右を切る」で大江先生と似たような業です。

大江先生の改変は下村派行宗先生にも影響したのか何度も云いますが不思議です。

下村派の細川義昌先生の系統と思われる白石先生の「行違」は「(左右に並んで歩行中の敵に対して行う)右方の敵を抜打ちに右片手にて斬りつけ、直ちに刀を返して右方より振り冠り(左手を添え)右足を踏出して左方の敵を斬る」とあります。
「連達」は「(前後に重なりて歩行中の敵に対して行う)右足を踏出すと同時に前方の敵を抜打ちに右片手にて斬りつけ、返す刀にて後方の敵を斬る(両手にて)」となります。行連も連達も敵の位置関係の違いだけで突き技は無いものです。

現代居合では河野先生の大日本居合道図譜奥居合立業の部「連達」では「敵が我を中にして雁行の場合、又は前述の左敵一歩遅れたる場合、左敵を刺突して右敵の振向く所に斬下して勝つの意也」となって、場の状況を俯瞰して演じています。

文中の「前術の」は「行連」に在る様に「左右の敵と歩行する場合、敵の機先を制し一歩やり過ごし乍ら右の敵を抜打ち、左敵の振り向く所を斬り下して勝つ」の左敵が前に出ず、一歩遅れた場合を云っています。

古伝は「おおらか」です。
場の状況や敵との状況をどのように想定するかは、演じる者に任せているのでしょう。
マニュアルが無いと何も出来ない様では実戦には応じられそうもないのですが、かといって好き勝手では極める事はむずかしいでしょう。

「有形に依って無形を悟る」形を作るものの根元を探求する・・。どこかにこんなセリフが在った様な気がします。

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