神傳流秘書14-1序

2014年9月 4日 (木)

神傳流秘書を読む 目次

神傳流秘書を読む 目次

1.抜刀心持引歌
2.居合兵法伝来
3.大森流居合之事
4.英信流居合之事
5.太刀打之事
6.棒合
7.太刀合之棒
8.詰合
9.大小詰
10.大小立詰
11.大剣取
12.抜刀心持之事
13.夏原流和之事 
13-1.捕手和之事
13-2.立合
13-3.小具足
13-4.後立合
13-5.小具足割
13-6.本手之移
14.小太刀之位

*この様な順序で進めていきます。
14.小太刀之位は神傳流秘書には無いものですが、ここに附け加えておきます。小太刀之位は谷村亀之丞自雄先生の直筆による英信流目録(2巻)に収蔵されているもので欠落部分があって居合は大森流だけしかなく、長谷川流は欠落、棒太刀合之棒、居合心持引歌などが残されています。その中の小太刀之位です。
この伝書は安永5年1776年に第12代林益之丞政誠によって書かれたもので嘉永5年1852年に谷村亀之丞自雄が書写されたものになります。
この目録は昭和23年6月頃に大阪の河野稔氏へ伝授した、と曽田先生の添え書きが有ります。

この神傳流秘書の業が土佐の居合の全てだろうと思われます。

河野先生は曽田先生の集められた伝書を読み無双直伝英信流居合兵法叢書を出されていますがその自序に次の様に書かれています。

「享保の頃より土佐の国を中心に伝承された無双直伝英信流居合に、30余年の間精進して来た私は、斯道の文献を蒐集しようとして土佐の同士曽田虎彦氏(昭和25年1月9日逝去)の深甚の厚意に依って、苦心の結果漸く其の殆ど全部の土佐居合兵法の文献を集録する事が出来た様に思う。
現代の世相に於いては之を無用の閑事と考えらるゝ向きもあるかも知れぬが、然し斯道に志す人達に取ては必ずしも無用の長物では無いと信ずる。」

この無双直伝英信流居合兵法叢書は昭和29年1954年の発行です。
河野先生は明治31年1898年生まれですから此の年56歳です。まだまだ古伝に向き合うに十分な御歳でした。
第20代宗家と云う立場上古伝に没頭する事は出来なかったでしょう、その後21年77歳という短い御生涯でした。

其の後、古伝神傳流秘書を研究されそれを基に無双直伝英信流を解きほぐされたのは、政岡先生でしょう。
先生の昭和49年発行の無双直伝英信流居合兵法地之巻には随所に神傳流秘書の業手附がちりばめられています。

北海道の坂田敏雄先生の著書昭和48年発行無双直伝英信流居合道入門にも要所に神傳流秘書の文言が見られます。

河野先生は自序の終りに、「英信流を学ぶ筆者は、自然享保以来伝承された土佐を中心とする地の文献だけしか蒐集する事が出来なかったが、洩れたる土佐の文献は元より日本全国の斯道の文献を追加且つ私の足らざる所を補足して呉れる様な熱意のある研究家を待つ次第である。」とくゝられています。

余談ですが、ある10段ともあろう方が、「そんなことをしているから形が乱れてしまう、居合は現宗家を基にそれだけに精進するものだ」と私を批判されます。
河野先生の思いは、引き継がれていないのでしょうか、それとも不心得者が許される時代になってしまったのでしょうか。

更に余談ですが、近年、南山大学の榎本鐘司教授による「北信濃における無双直伝流の伝承について」の研究が進んで、土佐と北信濃(松代藩)、奥州との繋がりが細い線で切れ々に見えてくる様に感じています。

林崎甚助重信公の居合を、流派を超えて語り合える日は、いつか訪れると信じています。

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2014年9月 3日 (水)

神傳流秘書を読む 表紙

神傳流秘書を読む 表紙

神傳流秘書は細川家秘蔵のものは、木村栄寿先生の著書によると和綴じ本となっている様です。
曽田先生の書き写された原本は、誰が所持して居たものか何も書かれていませんので解りません。

表紙は、ご自分で作られたのか厚紙に和紙を張り、ペン書きで以下の様に書かれています。

下村派
   第十六代宗家 曽田虎彦 印
                    筆山

 夢想神傳英信流抜刀術

 無双直伝英信流居合術

 英信流居合秘書

 土佐居合兵法叢書

 此の書は他に見る事を得ざる
山川幸雅先生の口伝秘書を写し得たり

(以下 汚損に依り不明)

*これで見ますと曽田先生はこの伝書の表紙に土佐の居合の流名を如何にすべきか迷っておられるように感じます。

表紙をめくりますと以下の様に書かれています。

土佐居合兵法秘書写
            山川幸雅先生

 谷村亀之丞先生

                               抜刀心持引歌
              居合
              居合組
              棒合
              棒太刀合

*ここでは土佐居合兵法秘書写と名付けています。是は山川幸雅の写しだと記しています。

次の「谷村亀之丞先生」は、別に写したものがあって、第15代谷村亀之丞先生のものと云う事です。
「英信流目録2巻」で、書かれている内容が、抜刀心持引歌・居合・居合組・棒合・棒太刀合に就いてと云うことでしょう。
居合組とは今でいう「組太刀」「居合形」で土佐では「仕組」と云って居た様です。
棒合は棒と棒、次は棒と太刀との形でしょう。

次のページが、今回の神傳流秘書をあらわす題のページです。

山川幸雅先生相伝
神傳流秘書写

 文政二年己夘之歳十一月吉祥日 山川幸雅述

 本書は他に見えざる秘書にて、原本は戦災にて焼失せるか大事々々

*山川幸雅相伝の神傳流秘書の写しである、と明記して居ます。
と、いう事はこの神傳流秘書は山川幸雅先生が書き写したもので、筆者は山川先生より古い方であり、其の方の書いたものを或は写し書きしたものを、又書きしたという事です。

其の書き写した時が文政二年1819年己夘(己卯・きぼう・つちのとう)の歳十一月吉祥の日に山川幸雅が述べるとしています・

原本は誰の所持品であったか、昭和二十年七月高知市へB29が飛来し、火の海となって燃えてしまっただろうと書き付けています。
幸い細川家に残って、木村栄寿先生の「林崎抜刀術兵法無想神傳重信流」として昭和57年1982年に発行されています。

昭和20年1945年7月3日午後4時23分マリアナ諸島から、姫路高松徳島、そして高知への爆撃のため501機のB-29爆撃機が出撃した。
翌日未明、120機のB-29が高知市上空に飛来。
死者401人、罹災家屋約12000戸。
その前にも後にも高知は空襲を受けています。
多くの貴重な資料が失われた事がうかがえます。

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2014年9月 2日 (火)

神傳流秘書を読む はじめに

神傳流秘書を読む はじめに

現代居合の無双直伝英信流は、明治維新以降、多くの武道流派と同じように消えて行く運命にあったかも知れません。
その辺の所は、曽田先生がスクラップとして保存されていた居合術教士、剣道錬士中西岩樹先生の英信流居合と板垣伯に詳しく語られています。
「明治25、6年と言えば大日本武徳会創設前で地方の一般武道は未だ萎微沈滞の域に立った時分である。
殊に帯刀禁止令発布後十数年を経過している事ではあり、真剣を打振う居合の如きが文明改化を追うに急なる国民に顧られそうな筈は無く、五藤正亮、谷村樵夫、細川義昌等の達人が伝統を受継いで現存して居り乍ら、殆ど之を執心修行せんとする者無く、又之等の先生も単なる余技として死蔵せるに止まり或は神職として或は政界の人として時勢に従っていたのである。
其の内に段々居合を知る人も物故し、之等の先生と雖も何時までも在るものではなく、今にして後継者を造らざれば高知藩門外不出の此の武伎もついには世に之を伝える者が無くなるであろうと非常に痛惜慨嘆されて極力其の復活振興の労を執られたのが板垣伯である。

明治26年板垣伯のご尽力に依って高知市新堀竹村与左衛門氏邸内に道場武学館が建てられ、五藤正亮先生が居合の師として聘せられ一般教授の任に当たられたのである。
それが因となり五藤先生は当時の第一中学校(現在の城東中学校)の校長にして居合を好む渋谷寛という人に委嘱されて後同校の居合教師となり、尚中学校にも招聘せらるゝことゝなった。

明治31年其の没せらるゝや谷村樵夫先生が之に代り同36年谷村先生の没後大江先生が之に代ることゝなったのである。

斯くして高知県に於いては五藤、谷村、大江の三先生に依り居合の命脈を継いで来られ殆ど伝授者も中学卒業者に限られていた如く換言すれば中学生によって居合が保持されて来たかの観がある」

土佐に於いて山内家の料理人として仕えた第9代林六太夫(~享保17年1732年歿)が、江戸勤番の頃に第8代荒井勢哲に師事して土佐にもたらした無双直伝傳流のち無双神傳英信流は明治維新によって第16代の五藤正亮先生の頃には絶えようとしていたのです。

第17代大江先生は中学生に習いやすい様に業を整理し業名も新たに付け直したりしていると言われています。明治36年1903年と言えば当時の大江先生は50歳の頃でしょう。カナダに渡った娘さんをもうけた頃です。
現在の無双直伝英信流の業名と手附はこの頃整理されたのでしょう。

土佐から門外不出の此の居合も東京の中山博道先生に伝わり、大阪の河野百錬先生によって八重垣会2千名余りの会員によって全国に広まったのでしょう。
そして太平洋戦争で無条件降伏した日本から再び消え去ろうとする運命にされされたのです。
其の時、第19代福井春政先生より、第20代宗家が大阪の河野先生に託され道統が土佐の門外へ出たのです。

河野先生は、無双直伝英信流を習い始めた頃(昭和2年1927年29歳)土佐の居合の掟を守った居合をされておられたようですが、その後(昭和17年1942年44歳頃)の大日本居合道図譜を読む限り掟の動作を竹刀剣道風にアレンジされていったように思えてなりません。

この神傳流秘書は、第9代林六太夫守政が江戸で身に着けた長谷川英信-荒井勢哲の無双直伝流に大森六郎左衛門の大森流を加え伝承したものを、林六太夫守政の養子で第10代林安太夫政詡が明和元年1764年頃に整理し書き残したものが原本でしょう。
原本はすでに現存せず、文政2年1819年に土佐の山川久蔵幸雅(下村派第13代)によって書写されたものが今では原本でしょう。
曽田本と云うのはこの山川久蔵幸雅によって書写された神傳流秘書でそれを曽田先生が昭和10年以降に書き写されたものです。

江戸時代中期に林六太夫守政によって土佐にもたらされた居合、現代の無双直伝英信流居合及び夢想神傳流の唯一のルーツを示すものだろうと思っています。
現代居合の業技法の末節の取沙汰を議論するのも良いのですが、古伝に戻って見直す事も必要でしょう。

稽古とは、昔の物事を考える事、古書を読んで昔の物事を参考にして理義を明らかにすること、でもあったのです。
温故知新とは、古い物事を究めて、新しい知識や見解を得る事です。

今では、稽古とは、師匠に手取り足取り学んだ事を繰り返し練習する事位に思っておられる方が殆どでしょう。

古伝には、詳細なマニュアルや動画は有りません。
古伝は、明瞭ですが大らかです、柔軟な思考でお読みいただきミツヒラ論を否定していただければ、最高の喜びです。

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2014年9月 1日 (月)

神傳流秘書を読む序の2

神傳流秘書を読む序の2

新陰流の流祖上泉伊勢守信綱は介者剣術を革新して新陰流を編み出し、柳生石舟斎に「兵法は時代によって、恒に新たなるべし。然らざれば、戦場戦士の当用に役立たず。また忠孝節義の道を践み行うことはできない」と遺訓を述べています。

形ばかりに拘って身に付かずにいた先輩達が前出の宗家訓に強く思いを馳せてしまったのでしょう。

そんな事を思いながら、平成23年2011年に第17代宗家大江正路先生の居合をどの様に変えて現在あるのかを辿って居ました。
そんな、私のブログを読まれた方の中から「曽田虎彦先生の直筆メモを解読しないか」との話が出ました。
平成23年の暮れも押し詰まった12月18日曽田本をお預かりいたしました。

曽田本は、曽田先生の息子さんが東京に居られ、ある方と会社が一緒という事も有り「私は居合をやらないからあなたが持っていてほしい」と譲り受けられたものです。
巡り巡って私の手元に託されました。原本は貴重な宝ですからコピーをいただき読み始めました。

細いペンで書かれた曽田先生の直筆は、私の様に戦後の国語教育によって読めなくなってしまった行草連綿が随所に有り、癖のある崩しなどもあって、紙の経年変化と相まって、難物でした。
江戸時代の文章ですから読めれば意味は通じて来ます。

幸い、翌年早々には、入院する予定がありましたので、文字辞典と曽田本を携えて手術後のベッドの上で、ひたすら読み耽り退院の日には大方読み終わって居ました。
そこで、平成24年2012年2月13日から4月9日までに曽田本の読み下しをブログに掲載しました。
其の後、平成24年2012年10月30日から平成25年2013年12月31日までかかって曽田本その1の解説付きをブログに掲載しました。
曽田本その2はこの平成26年8月30日に解説付きで大方掲載しました。

曽田本に書かれている古伝は、曽田先生が原本を書写していずれ出版の意図もおありだったようですが、太平洋戦争によってままならず、写された原本も高知空襲によって焼失してしまっています。
曽田先生も昭和25年1950年に60歳でお亡くなりになっていてご自分では出版できなかったのは残念だったでしょう。
しかし、曽田先生の書写された土佐の居合の古伝は、次の先生方によって世に出ています。

河野百錬先生の「無双直伝英信流居合兵法叢書」昭和29年発行
坂田敏雄先生の「無双直伝英信流居合道入門」昭和48年発行
政岡壹實先生の「無双直伝英信流居合兵法地之巻」昭和49年発行
木村栄寿先生の「林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流伝書集及び業手付解説」昭和57年発行
岩田憲一先生の「土佐の英信流旦慕芥考」平成元年発行

こんな処でしょうか。すべて絶版ですから殆ど手にする事は現在では困難です。
河野先生は昭和23年頃曽田先生から曽田本の写しを送られその大部分を出版されています。

政岡先生も曽田先生のものかとは思われますが、地之巻の中に部分的に古伝はとか秘伝書と云う言い回しで挿入されています。

木村先生は下村派の細川義昌家からの借用本によるものでこれが出所がはっきりしたものです。
対比しても、文字の判読の違い程度で曽田本と殆ど変りません。

岩田先生は、曽田本のコピーを関東のある方から送られています。旦慕芥考に曽田本その2の一部が記載されています。

坂田先生はおそらく河野先生の著書に依ったのだろうと推察します。

曽田本の原本とその解説付きでミツヒラブログを読まれた方は、無双直伝英信流の大江正路先生以前の古伝を目にする事が出来たと思っています。
一部の限られた方しか見る事の出来なかった古伝を誰でもが読み、稽古する事が可能になった筈です。
近年は、漢字も限られた文字しか教育されず、武術用語は失念しており、マニュアルと動画では武術の動作は身につかず、先輩諸氏の手取り足取りの指導がなければ動作もままならない時代になってしまいました。その先輩も現代居合ばかりです。古流をこなせる体捌きすら知らない方が殆どでしょう。

それでも、ブログと云う新時代の伝達方法に古伝を載せますと、理解できる方も多くあると気が付きました。
ブログを見る事の出来るのは新人類ばかりで、時代に取り残された諸先輩は相変わらず古伝の蚊帳の外でしょう。
それも時代でしょう。

再び土佐の居合の原点であった「神傳流秘書」に限り読み直してみます。
「曽田本を読む」の重複ともなりますが、少しは知識も増えた様で、前のものに拘らず新たに読み込み、書き込んで行こうと思います。

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2014年8月31日 (日)

神傳流秘書を読む序の1

神傳流秘書を読む序の1

平成23年2011年の事、第17代大江正路先生から第22代までの無双直伝英信流居合の業技法の変遷を業毎に比較して居ました。

それは何が発端かと云いますと、宗家訓に思いを寄せたからなのです。

宗家訓
「当流の居合を学ばんとする者は、古来より伝承せられ以って今日に及ぶ当流の形に聊かも私見を加うることなく、先師の遺された形を毫末も改変することなく、正しく後人に伝うるの強き信念を以って錬磨せられん事を切望する。
剣は心なり。心正しければ剣又正し。心正しからざれば剣又正しからず。
剣を学ばんとする者は技の末を追わずその根元を糺し、技により己が心を治め以って心の円成を期すべきである。
居合道は終生不退、全霊傾注の心術たるを心せよ。」
(無双直伝英信流正統第21代宗家福井虎雄聖山先生著昭和58年1983年発行 無双直伝英信流居合道第2巻による宗家訓)

古来とは、何時の事なのか、何が元になっているのか、当流の形の掟とは何なのか、先師とは誰の事なのか、私見とは何なのか・・・。
その意味する処は「宗家の考え実施している形を掟とせよ」と仰っているのか・・・。

このように訓じられた先代の教えを受けられ、当代は次のように、述べられています。
「恩師正統第21代宗家福井虎雄聖山先生より戴きし口伝口授を基に当流の「掟・業前」を恩師のお教えの通りに具現致す為には斯くの如くに修練致さざれば全う出来ないであろうと言う信念の下に、私が全国各地に於ける当流の講習会等に申し上げた事を中心に出来るだけご理解戴き易き様に解説申しました。
・・・居合道究極の目的たる内面精神面の探求については、当流の掟に精通の上、各自が其の技に息吹を与えられて、品位、気位の高き格調高き技の創造に励まれ、自己の心の位を得る事に努め、以て居合道真髄に到達されん事を祈るのみであります。
居合道真髄探求は生涯かけての道であると説かれた正統20代、21代両ご宗家の御訓を深く銘する処であります。」
(正統第22代宗家池田隆聖昂先生著平成17年2005年発行 無双直伝英信流居合道解説第2巻 稿を終えるに当たり より)

それでは第20代宗家河野百錬先生は如何であったろうか、もっと前の第17代宗家大江正路先生は如何であったろうかと調べ始めました。

まず、河野先生の「居合修養の心得」を読んでみました。
「居合を学ぶには元より其の流儀の形を重んじ、苟も之を変改するが如き事無く錬磨すべきは勿論なるも、其の習熟するに於ては、何等形の末節に拘泥する事無く、各流を一貫する居合本来の精神を悟りて、日夜錬磨の巧を積み、心の円成に努め、不浄神武不殺の活人剣之位に至るを以て至極となす。
古人は「術に終期なし死を以て終りとす」と曰へり、詢に斯の道は、終生全霊傾注の心術なれば、同好の士は毫も怠慢する事無く生涯不退の意気に燃え精進すべきものなり。」
(河野百錬先生昭和13年1938年発行 無双直伝英信流居合道 居合修養の心得より)

更に河野先生は昭和17年1942年の大日本居合道図譜の初心者心得33則の33で次の様に仰っています。
「先哲の言に「業形より入り業形を脱す」又「守・破・離」の教えあり、彼の孫子も今を去る2400年の昔「兵を形すは其の極みは無形に至る」と喝破せり。之等はともに形に捉われる勿れ定石を破れとの意に他かならず。
我が居合に於ても此の心得肝要也即ち対敵を忘れしかも教えられし形のみに捉われたる気魄無き形にのみの居合は如何に外形の技、美なりと雖も所詮は単なる剣の舞に過ぎざる死物也。
されば宜しく業の理を解し敵に対する真剣の動作たるを要し制敵の気魄満々たる生気横溢する業で無ければならぬ。」

20代河野先生は其の著書で読む限り、昭和8年の無双直伝英信流居合術全・昭和13年の無双直伝英信流居合道(此の年大日本武徳会錬士)・昭和17年の大日本居合道図譜(昭和15年に大日本武徳会達士)の著書では形が変わっています。
大日本居合道図譜が河野先生の集大成かも知れません。
然し、そこでは当時の学校教育による竹刀剣道の統一志向の「かたち」を取り入れざるを得なかった様な気もします。

後世に残る物は書き付けられたテキストと、現代では映像でしょう。
映像とテキストの表現は異なる場合が多々あるものです。
私は有るべき姿の表現は書き付けられた解説の中に有ると思っています。
思う様に演じられる事の難しさは、どの稽古事でも同じ事でしょう。目指す形は現実の形よりもはるか先に有るものです。
「DVDは業運用の流れの中での態であり、解説編はそれを実現する為の心構え・気構えを表したものとしてご覧いただきたい、即ち解説書の場面とは形・捌きのタイミングなどで必ずしも一致しない面が出てくる・・。」と当代は仰います。

次回へつづく

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