神傳流秘書14-5詰合

2014年11月16日 (日)

神傳流秘書を読む 8.詰合十本目霞剣

神傳流秘書を読む

.詰合

 十本目霞剣

 眼関落の如く打合せたる時相手引かんとするを裏よりはり込み真甲へ打込み勝亦打込まずして冠りて跡を勝も有り

*眼関落とは古伝神傳流秘書のここまでの業に出て来ていない業名です。
従ってこのままでは業の初動を特定できません。
八本目から双方高山に構えて場合にて真向に打ち合っていますから上段に構え場合にて真向に打ち合い相打ちとするのでしょう。
演武では双方の間合いの中央で物打辺りの鎬で合わせていますが、相手より早く打込相手が「切り落」なり「合っし打」なりを心得る者ならば頭を割られています。

詰合の八本目柄砕の打ち合いが、太刀打之事六本目独妙剣と同じ打ち合いで、之も同様であれば「相懸也打太刀高山遣方切先を下げ前に構え行場合にて上へ冠り互に打合尤も太刀をつく心持有・・」ですから、相手は上段、我は下段に構え歩み寄り、間に至るや我は切先を相手の喉を突き上げる様に振り冠って上段となり、相手真向に打込むを我も真向に打ち込み太刀を合せる、でしょう。

真向に中央で打ち合わせ、双方切先を正眼に取りつつ退く処、我は刀を相手の刀の裏に張り込みその拍子に踏み込んで真向に打ち込み勝。
打込まずに上段に冠って勝ちを示すも有。
「裏よりはり込み真甲へ打込み」は、どのようにするのか失伝しています。
相手の刀が我が刀の左、我が刀は相手の刀の右で互いに切っ先を喉元に付けています。
相手引かんとする其の機に、我が刀を僅かに下げ相手刀の裏に添えるや、刀を右に返すように張り込みその拍子に上段に振り冠る・・。

この業も、曽田先生による五藤先生の業附口伝から霞剣を研究してみます。
「是も互に立合也敵待かけても不苦互に青眼の儘スカスカと行場合にて互に拝み打に討也互に太刀の物打ちのあたり合たる所を中段に直る我其儘左の足を踏み込み裏より払いかむり勝也五歩退り相中段に次に移る也」

ここで、神傳流秘書の詰合は終わっています。以上十本です。
五藤先生の詰合之位はあと一本「討込」が残っています。
「双方真向に打ち込み物打を合はす也」

*十一本目は「討込」ですがすでに霞剣で此の真向打ち合いは終わっていますから業としてはそう意味のある動作を要求していません。
五藤先生の時代江戸末期から明治維新の頃は仕組の太刀は竹刀による試合剣法に取って変わられて仕組剣法は影を潜めていた時代です。
「申し合わせの形」しか稽古していないのでは、竹刀による打ち合いによる試合勢法に勝てる分けは無かったのでしょう。
この「討込」は伝書には無いが「留めの打ちなり」として演武の締め業として演じられたのでしょう。

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2014年11月15日 (土)

神傳流秘書を読む 8.詰合九本目水月

神傳流秘書を読む

8.詰合

九本目水月

相手高山にかまへ待所へ我も高山にかまえ行て相手の面に突付る相手払ふを躰を替し打込み勝

*相手上段に構え待つ所へ我も上段に構えスカスカと歩み行く、歩みつつ間境で切先を下し右足を踏み込み相手の面に突き付ける、相手之を右足を退き上段から我が右に八相に払って来る、払われるに随い左足を左斜めに踏み込み体を躱し右足を踏み替え相手の面に打込み勝。

相手の面へ切先を突き付け相手我慢が出来ずに払って来る機をとらえて体を躱して打ち込む。
或は我が刀を払う当たり拍子に体を替って打込む。
この時相手は、踏み込んで払ってくる事も、退って払うも有りでしょう。我が気勢によるものでしょう。
古伝は、如何様にも変化しても「それは違う」などと言うことなどなさそうです。
師伝の異なる方と、太刀打之事や詰合を稽古しますとその事が理解出来申し合わせの「剣舞」とは違う事が認識できます。

此の業は神傳流秘書の太刀打之事六本目水月刀と同じ様な業でしょう。
「相手高山或は肩遣方切先を相手の面へ突付て行を打太刀八相へ払ふ処を外して上へ勝つ或は其儘随て冠り面へ打ち込み勝も有り」

曽田先生の五藤先生による業附口伝詰合之位九本目「水月刀」
「是も同じく立合て真向へかむり相掛りにても敵待かけても不苦我真向へかむりてスカスカと行場合にて太刀の切先を敵の眉間に突き込む様に突く也其の時敵すぐに八相に払う其時我すぐにかむり敵の面へ切込み勝也互に五歩退り血振納刀以下同じ」

*此の業は相手に払われるに随い体を変わって打ち込むのですが、相手に我が太刀を払わせる誘い、払わずにいられない状況に追い込むことがより高いポイントでしょう。

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2014年11月14日 (金)

神傳流秘書を読む 8.詰合八本目柄砕

神傳流秘書を読む

8.詰合

八本目柄砕

両方高山後は弛し木刀に同じ

「弛(はずし)木刀」(太刀打之位独妙剣の事ならむ 曽田メモ)

*双方上段に構え、後の動作は弛し木刀に同じだと省略されてしまいました。
曽田先生は、之を太刀打之位(神傳流秘書では「太刀打之事」の独妙剣の事だろうと言うのですが、太刀打之事独妙剣は「相懸也打太刀高山遣方切先を下げ前に構え行場合にて上へ冠り互に打合尤打太刀をつく心持有柄を面へかえし突込み勝」というものです。
「弛し木刀」なる業名がない限り断定する事はできません。

曽田先生の業附口伝によれば詰合之位「眼関落」が七本目燕返の次なる業になります。
「是も互に立ち敵も我も真向へかむり相掛りにてスカスカと行き場合にて互に拝み打に討也その時敵の拳と我拳と行合也其時我すぐに柄頭を敵の手元下より顔へはね込み勝也(右足をドンとふみ急に左足を踏み込む也)
互に五歩退り納刀以下同じ

曽田先生は五藤先生の業附口伝を元にして考察されたと思われます。
神傳流秘書の詰合と五藤先生の業附口伝以外に詰合を書き表した伝書が見当たらない限り当面はこのような業で稽古する以外にありません。

木村栄寿先生の林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流傳書集及び業手付解説の神傳流業手付では詰合八本目は柄砕「両方高山跡は地の木刀に同じ」とあって「弛と地」の読み違いでしょうがどちらも証明不能です。
「眼関落」が同じ業である様な「詰合業手付及び口伝」にありますが引き当てるべきものが見当たりません。

政岡先生の無双直伝英信流居合兵法地之巻にある無双直伝英信流居合兵法之形は文政二年山川幸雄述坪内長順記神伝流秘書による、と書かれています。幸雄は幸雅と思われますが正誤表に記載されていませんので坪内長順が書写した際の誤記かもしれません。
そこでの詰合は詰合之位とされ八本目は眼関落の業名を採用しています。

眼関落「(相上段から互に切り結び鍔押となる処をはね上げて顔に当てる 政岡先生述)両方高山にかまえ行打合尤も打太刀をさく心持あり柄をかえして突込勝」とされています。この部分は神傳流秘書の太刀打之事七本目「独妙剣」の文言に類似です。この政岡先生の神伝流秘書の出所は不明です。

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2014年11月13日 (木)

神傳流秘書を読む 8.詰合七本目燕返

神傳流秘書を読む

8.詰合

 七本目燕返

 相手高山我は抜かずして立合たる時相手より打込むを我抜受に請る相手引を付込み打込相手右より払ふを随って上へ又打込払ふを上へ取り打込扨切先を下げて前へかまへ場合を取り切居処へ相手打込を受流し体を替し打込勝又打込まず冠りて跡を勝もあり

*詰合の仕組の中での大業は先に出た四本目八重垣とこの燕返だろうと思います。
相手は上段に構え、我は刀を鞘に納めたまま立ち合う、双方すかすかと歩み行き場合に至れば、相手より右足を踏み込み真向に打ち込んで来る、我は顔前頭上に右足を踏み込み抜受けに受ける。
相手右足を引き上段に取らんとする処を、我は左足を踏み込んで付け入って諸手にて上段から打ち込む。
相手これを右より八相に払って来る、払われた当たり拍子に上段に振り冠って右足を踏み込んで真向に打ち込む。
相手左足を引いてこれを又払って来るのを同様に当たり拍子に上段に振り冠って左足を踏み込み真向に打ち込む。
相手これを一歩引いて外す。我は外されたまま切っ先を下げて下段に構える処、相手真向に打ち込んで来る、我は切先を上げて突き上げる様に受け流し右足を右前に踏み込んで体を替って相手の首に打ち込む。
又打ち込まずに上段に構え勝ちを取るもあり。
受け流しの方法は、左足を後方に引きながらも出来るでしょう。ここは受け、流すに拘ってみました。

相手は高山ですから上段です。我の打ち込みも「相手引を付込み打込」ですから真向打にしました。
ここは八相でも良いかもしれませんが文章に忠実に従いました。
打ち込むや相手は八相に払ってくる、または横に払ってくる様ですから当たり拍子に上段に取って打ち込む廻し打ちを思い描いてみました。
恐らく、林六太夫守政の剣術の先生大森六郎左衛門は真陰流(新陰流?)であれば廻し打ちはお手の物だったでしょう。

曽田先生の業附口伝から五藤先生の詰合之位七本目燕返
「是は敵も我も立つ也敵は刀を抜てかむる我は鞘に納めて相掛りにて行く也場合にて敵我が面へ打込む也我其時右片手にて抜き頭上にて請けすぐに左手を柄に添え打ち込む也
敵又裏より八相に払う也我又すぐにかむりて打込む也敵又すぐに裏より八相に払う也
我又すぐにかむりて敵の面へ打込也(左足を一足踏み込)其時敵後へ引我空を打つ也
其時我切尖を下げ待也敵踏み込みて我真向へ打込也我其時左足より一足退り空を打たせ同時にかむりて一足踏込み敵の面へ勝也互に五歩退り納刀後再び刀を抜き相上段にて次に移る」

*この業附口伝の動作が現在行われている様です。「裏より八相に払う也我又すぐにかむりて打込む也」の運剣動作は大いに研究すべき処でしょう。
最後のところで「敵に空を打たせ・・」は古伝を変える必要があったとは思えません。
時代が進むと、どんどん安易な方法に変化してゆくのは、進歩と取るか退歩と取るかですが、白刃の下を掻い潜って身に着けた時代と平和ボケの時代の違いの様な気もしています。

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2014年11月12日 (水)

神傳流秘書を読む 8.詰合六本目位弛

神傳流秘書を読む

8.詰合

六本目位弛

我居合膝に坐したる所へ敵歩み来りて打込むを立ざまに外し抜き打に切る或は前の如く抜合たる時相手より打を我も太刀を上へはづし真向へ打込み勝

*我居合膝に座して居る処へ相手上段に振り冠って歩み来たり、真向に打込んで来るのを、立ち上がり右足を引き刀を上に抜き上げ拳を返して真向に打込む。

或は双方居合膝に坐し、左足を引いて膝に抜合う、相手より上段に振り冠り打込んで来るを、我は右足を左足に引き付け刀を上に突き上げる様に相手刀を摺り上げ上段に振り冠り踏み込んで真向に打込み勝。

位弛の業では「或は・・」以下の業は殆ど見る事の無い動作です。
別の業とも思えるのですが、心持ちは同じと言えます。
刀を体すれすれに引き上げる様に切先下りに抜き上げて相手の打ち込みを右足を引いて間を外すや打込む、相手が深く討ち込んで来た場合は上に抜き上げた表鎬で摺り落してしまうわけです。
大森流(正座の部)逆刀(附込)の「向より切て懸るを先々に廻り抜打に切・・」の動作の仕組みとなります。

或は以下は、双方抜き合せた所よりの変化です。「太刀を上へはずし」をどのようにするかがこの間合いでの応じ方でしょう。
「位弛(くらいゆるみ)」弛は、はずす事ですから、我が体を打ち間から外す事が大切です。太刀にて相手の切り込みを請けるのは目的では無さそうです。

曽田先生による五藤孫兵衛正亮の業附口伝詰合之位六本目位弛を読んでみます。
「是は敵は立ち我は坐する也敵は太刀を抜てかむる我は鞘に納めて右片膝立て座する也敵すかすかと来て拝み打に討つ也我其時あたる位にてすっかりと立ち其儘左足を一足引きて抜き敵に空を打たせ同時に右足を一足踏み込み面へ切り込み勝也
仕太刀は此の時刀を合わせ五歩退きて血振い納刀
打太刀は其位置にても五歩退りても不苦

*五藤先生の業附口伝では神傳流秘書の「或は・・」の業は消えています。
相手の打ち込みを立つなり左足右足と追い足に退きつつ刀を抜き上げて相手に空を切らせ相手が退かんとする前に真向に打ち下すのです。
刀の抜き上げは体に接する様に抜上げるもので、前に抜出す様に抜上げるべきでは無いでしょう。

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2014年11月11日 (火)

神傳流秘書を読む 8.詰合五本目鱗形

神傳流秘書を読む

8.詰合

 五本目鱗形

 如前抜合せ相手打込むを八重垣の如く先に左手を添え請留直に敵の太刀を摺落し胸をさす也

*前の如く抜き合せ、ですから是も居合膝に相対し、相手より左足を引いて右足に抜き付けて来るのを請け止め、上段に振り被らんとする処、相手左足を右足に引き付け右足を踏み込んで真向に打込んで来る。
我顔前頭上にて切先を左にして左手を添えて十文字に刃で請ける。
十文字請けした交点を軸にして、左手を相手の顔面に摺り込む様に、右手も引きつつ相手太刀を右下に摺り落とし左足を踏み込んで相手の胸に詰める。

詰合の一本目発早の場合は、双方膝前で抜き合せ、我が先んじて上段から真向に打ち込んで勝ちを制しました。
今度は相手が我が真向に打ち込んで来るのです。一本目で勝ち口を理解しないまま、此の五本目鱗形にしてようやく仕組みが申し合わせの棒振りではならない事を気付かせてくれる良い業です。

是も曽田先生による五藤孫兵衛正亮の業附き口伝詰合之位「五本目鱗形」を参考にして見ます。
「座り方同前左足を一足引きて抜合す也其時敵すぐに我面へ上より打つ也我もすぐに太刀の切尖へ左の手を添えて十文字に請て左の足を踏み込み摺り込み勝也刀を合せ血振い納刀」

十文字請けの方法をどの様にするかは、簡単に「切尖へ左の手を添えて」しか表現されていません。
切尖は切先ですが、物打ち辺りに拇指と食指の股に刀の棟を当て四指を外向けにして添える様に指導される様ですが、是で良いのでしょうか。
拇指と食指の股から小指の下の膨らみへ斜めに刀棟が乗る様に添える事も研究すべきでしょう。
強い打ち込みを想定すれば左手の添え方は充分考慮すべきものです。
又十文字請けと云いますと、顔前頭上に水平に請けるのが如何にもですが、是も左手をやや右手より高く上げ柄頭は真横では無く稍相手を攻める程の気を持った十文字請けも研究しておきたいものです。

或は柄手を先手より稍高く取り十文字請けするも有でしょう。
古伝神傳流秘書は踏み込む足も左右何れも指定して居ません。

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2014年11月10日 (月)

神傳流秘書を読む 8.詰合四本目八重垣

神傳流秘書を読む

8.詰合

 四本目八重垣

 如前抜合たる時相手打込を我切先に手を懸けて請又敵左より八相に打を切先を上にして留又上より打を請け相手打むと冠るを直に切先を敵の面へ突詰める(我切先に手を懸けて請け敵右より八相に打を切先を下げて留又敵左より八相に打を切先を上にして留め又上より打を頭上にて十文字に請け次に冠るを従て突込むもあり 曽田メモ)

*大江先生の正座の部五本目八重垣の業名はこの詰合から取ったものでしょう。元の大森流陰陽進退あるいは陽進陰退の方が業名らしいのですがかえらざる望みでしょう。
「嫌なら夢想神伝流に変わったら」です。

双方居合膝に座し、相手左足を引いて下に抜きつけるを我も左足を引いてこれを下に請ける。
相手即座に右足を左足に引付右足を踏み込んで真向に打ち込んでくるを、我左足、右足と引いて、切先に左手を添え顔面頭上にこれを十文字に請ける。
相手再び上段に振り冠って左足を踏み込んで我が右胴に八相に打ち込んでくる。我右足を引いて切先を上にし柄を下にして右脇にこれを刃で請ける。
相手再び上段に振り冠って撃ち込んで来るを、左手を切先に添えたまま顔前頭上に受ける。相手再び撃ち込まんと上段に振り冠る処、我すぐに右足を踏み込み切先を相手の面に突き詰める。

神傳流秘書は、下で合わせ、十文字に上で請け、右脇で請け、再び頭上に十文字受け、直ぐに突き詰めるのですが、曽田先生のメモは、下で合わせ、十文字に上で請け、右脇で請け、左脇で請け、又十文字に上で請け、直ぐに突き詰める。と云うのも有り括弧書きで挿入されています。

何度でも撃ち込まれて稽古するのも良いのですが機を捉えて反撃する事も学ぶ例でしょう。

曽田先生の五藤先生による業附口伝による詰合之位四本目八重垣
「是も同じく詰合て坐し前の如く左足一足引てさかさまに抜合也敵其儘我面を打ってくるを我又太刀の切尖へ左手を添えて面を請くる也
それより立て敵すぐに我右脇を打つを我其儘刀を右脇にさかさまに取りて此の時右足を一足引き請け留る也
敵又立ちて左の脇を打ち来るを我又左足を一足引て左脇を刀を直にして請け止むる也
敵又上段より面へ打ち来るを我又右足を引きて上を請て敵かむる処を我右足より附込み勝也
刀を合せ原位置に帰り血振納刀」

*江戸時代末期にはこの八重垣もいつの間にか我が右脇で受ける切先の位置が神傳流秘書では上であったものが下になり、左脇への相手の打ち込みも加わっています。
右も左も稽古することと云う事でしょう。
古伝の稽古では、下で合わせ、十文字受けして、次は相手次第で右か左に受けるのもありでしょう。仕組みは演武会用の見世物ではなく、申し合わせに終わるものならばそれだけのものです。

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2014年11月 9日 (日)

神傳流秘書を読む 8.詰合三本目岩浪

神傳流秘書を読む

8.詰合

三本目岩波

拳取りの通り相手より拳を取りたる時我よりも前の如く取り我が太刀を放し右の手にて敵のひじのかがみを取り左脇へ引たおす

*双方下に抜きつける処、今度は相手が先に我が拳を制してくる。
引き落とされる前に我も即座に相手の拳を取り、拳を取られた右手の太刀を放すと同時に右手を後ろに引くや相手の手を外し、相手の右手の肘のかがみに右手を付け左脇へ引き倒す。
後はどの様に制するかは指定がありません。顔面を、水月を、金的を拳で打つもあり、脇差を抜いて突くもありでしょう。

これも曽田先生による五藤孫兵衛正亮による業附口伝詰合之位「岩波」を見てみます。
「詰合て坐する也前の如く左の足一足引てさかさまに抜合せ敵よりすぐに我右手首を左の手にてとる也我其儘敵の右の手首を左の手にて取り右手を添えて我左脇へ引倒す也刀を合わせ血振い納刀
(遣方右手を添える時刀を放し直に相手のひじを取るなり 曽田メモ)

此の業を演ずるのを見ていますと、打太刀が遣方の右手首を先に取っているだけで、遣方が右手を取りに来るのを待っているような仕方がまま見られます。
ゆっくり順番通り稽古するのは当然ですが、打太刀が二本目の拳取の如く拳を取るや下に制されると、遣方は手も足も出ません。
遣方はどのタイミングで応じるのか、二本目の稽古を生かす事はできるのかなど課題を持ちませんと意味のない踊りです。
知ったかぶりで、「申し合わせだから」ではすまされ無いとても難しい業です。

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2014年11月 8日 (土)

神傳流秘書を読む 8.詰合二本目拳取

神傳流秘書を読む

8.詰合

 二本目拳取

 如前楽々足を引抜合我左の手にて相手の右の拳を取り刺す也

*前の如くですから、一本目発早の如く「楽々居合膝に坐したる時相手左の足を引下へ抜付るを我も左の足を引て虎の一足の如く抜て留め我左の手にて相手の右の拳を取り刺す也」でしょう。

「楽々」の文言が気になります。楽に座すのは解りますが、「楽々足を引抜合」は、奥の業ですから当然とは云え強いばかりが信条の人には難しいものです。
相手我が右膝下に抜き付けて来るのを、虎一足の如く刀を逆にして右足の少し斜め前で刃で請け、相手引かんとする処左足を相手の右足側面に踏込み、左手で相手の右拳を制し、相手を右斜め下に崩し、右足を左足後方に摺り込み相手の胸部を刺突する。

相手の足への抜き付けを、我も同様に相手の足に抜き付け双方の中央で相打ちの如くやる、見えるのは古伝の「相手左の足を引下へ抜付るを我も左の足を引て虎の一足の如く抜て留め・・」とは違うでしょう。

相手の右足側面に踏込むのは、手を伸ばして相手の拳を取るのではなく、体で相手に接する瞬間に拳を取って引き下ろすのです。

拳の取り様は種々有るでしょうが、最も容易な方法が正しいと言えるでしょう。拳を制するのが目的では無く、拳を取って相手の体を崩し反撃できないように制して胸部を刺突するとするのが目的です。
単純なのは、相手の右手首に我が左手を乗せ其の儘下へ押し下げるなども有効です。
最も悪いのは、相手の拳を制しようと不器用な左手で複雑な術を弄することでしょう。

此の業も曽田先生の実兄による五藤孫兵衛正亮の業附口伝で江戸後期の詰合之位を見てみます。
詰合之位 拳取
「是も同じく詰合て坐しさかしまに抜合すこと前同然也我其儘左の足を踏み込み敵の右手首(拳ならん 曽田メモ)を左手にて押える也後同断」

この業附口伝では「左手にて押える也後同断」です。相手の手を左手で押えるのはわかりますが「後同断」では全然わかりません。一本目と同断でもこの場合は相手の真向に「発早」の如く打ち込めないでしょう。
打ち込めたとしても何のために相手の右手首を押えるのかわかりません。
ここでの同断は、太刀打之位の二本目「附込」かもしれません。立ち技ですが参考にしてみます。
「是も出合の如く相懸りにて右の足を先にして場合にてさかさまに抜合せ敵の引かんとする処を我左の足を一足付込左の手にて敵の右の手首を取る此の時は左下に引きて敵の体勢を崩す心持にてなすべし互に刀を合せ五歩退き八相に構え次に移る也」
此処では相手の体勢を崩す処で終わっています。
体勢を崩しても気を抜けば反撃されます「拳を取り刺す」でしょう。

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2014年11月 7日 (金)

神傳流秘書を読む 8.詰合一本目発早

神傳流秘書を読む

8.詰合(重信流也従是奥之事 極意たるに依而格日に稽古する也)

*詰合(重信流である、これより奥の事、極意なので確実に稽古するものである)
この詰合以降の業は極意業と言っています。
古伝を置き捨ててしまった明治の土佐の居合は奥の稽古が不十分です。
その分、業の技法の末節に拘り過ぎているようです。
場の想定を特定してしまい、物差しで測るような運剣動作のありように、先師は嘆いているでしょう。
古伝の教えを知らなかった為に、他の武術を取り込みおかしな動作を得々として指導したりしています。
中には、大江先生が残した業以外は無双直伝英信流に非ずと息巻く次第です。
大江先生も中学生向けにやむなく古伝を置いてきただけかも知れません。
詰合もそんな憂き目にあっている仕組の太刀打です。おおいに稽古し、独りよがりの空間刀法から抜け出るきっかけを作りたいものです。
最近は詰合を、演武会の出し物の様にされている処も有る様ですが、あくまで稽古業であるはずです。
形から抜け出せなければただの申し合わせの踊りでしょう。

一本目発早

楽々居合膝に座したる時相手左の足を引下へ抜付るを我も左の足を引て虎の一足の如く抜て留め打太刀請る上へ取り打込み勝也

*「楽々居合膝に座したる時」ですが居合膝の座し方が解りません。相対して座す時の武士の座し方は時代考証ではどうだったのでしょう。
戦国末期では正座は一般的でなかったと云う事を信じれば、胡坐か片膝を立てた坐り方だったでしょう。
即座に応じられる座り方は片膝を立てもう片方を爪立って床に着いた立膝の構えでしょう。其の儘尻を下ろせば略現代の居合膝です。
この詰合は戦国末期に林崎甚助重信から引き継いで居る業ならば片膝立てた座仕方と云えそうです。
河野先生は甲冑を付けた時の座仕方と云い切っていますが其れも有でしょうが疑問です。寧ろ攻撃態勢を保持した体構えと考えた方が自然です。

此処で、神傳流秘書が「居合膝」と言い切るのは、居合う、互に座して向かい合う時位の意味のもので、座仕方は何時でも応じられる体構え胡坐では無い片膝立の座し方なのでしょう。
正座はこの頃ようやく武士の中に浸透してきた頃でしょう。

互に片膝を立てて座して居る時相手より、腰を上げて左足を引くや我が右足に抜き付けて来る、我も即座に左足を引いて相手の刀を右足斜め前で虎一足の様に(左足を引き刀を逆さに抜て留め)受け留める。

古伝は、相打ちではありません。相手に抜き付けられ請け止めています。
相手請け止められて、上段に冠らんとする処我左足膝を右足に引き付け座すや相手の真向に打ち下す、相手頭上にて十文字に之を請ける処刀諸共斬り下ろして勝。

曽田先生の実兄が指導を受けた第16代五藤孫平衛正亮・谷村樵夫自庸の口伝が曽田先生の業附口伝として残されています。

業附口伝 詰合之位
「一本目八相(口伝に発早とあり)
是は互に鞘に納めて詰合て相向い右膝立て座る也
互に左足を一足引きて倒様に抜合する也(互に右脛へ抜付ける)
其儘ひざを突き仕太刀はかむりて面へ打込也此の時打太刀は十文字に頭上にて請け止むる也
互に合せ血振い足を引き納刀」

*古伝の教えを失って、形ばかりの仕組の手附になってしまった様です。下に互に抜き合せる相打ちです。
古伝は打太刀に抜き付けられ、相手の剣先は我が膝下に付き我が剣は相手の刀を受払う事で後の先を取って勝ちとなっています。
稽古は古伝の心持ちでしょう。

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