曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く7重信流2大小詰

2017年3月14日 (火)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く7重信流2大小詰8山影詰

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
7、重信流
2)大小詰
八本目山影詰
山影詰
 是は後より相手組を刀を抜き懸其手を切ると一拍子二我も共に後へ倒るゝ也
 以上八本
読み
山影詰(やまかげつめ)
 是は後ろより相手組むを 刀を抜き懸け 其の手を切ると一拍子に 我も共に後ろへ倒るゝ也 
 以上八本
読み解く
 大小詰はこの業で終わります。
 我を前にして相手は後ろに座す。
 後ろから相手が抱きついて、我が両腕を絞めて来る時、刀を抜き上げて組み付いている相手の手を切り、その拍子に後ろに相手と一緒に押し倒れる。
 以上八本で大小詰は終了です。

 曽田先生による五藤先生の業附口伝大小詰八本目山影詰
「打は仕の後ろに坐す後より組み付也其時仕は頭を敵の顔面に當て敵ひるむ隙きに我が刀を抜きて打の組みたる手を切る也
(五藤先生は一當して仰向に反りかえると記せり 後ろより組付く頭を一當して仰向にそりかえる)」


 古伝には無かった組付かれたら頭で相手の顔面を打ち怯ませる技が追加されています。
 しっかり羽交い絞めされるとなすすべが無いのですがこの技の追加はあり難いものです。
 組付いた相手の手を切って戦力を奪う事が大切で、羽交い絞めから摺り抜けるなどの技に転化してしまうと古伝の妙が失われます。

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2017年3月12日 (日)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く7重信流2大小詰7左伏

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
7、重信流
2)大小詰
七本目左伏
左伏
是は左の手を取る也 事右伏二同左右の違計也 尤も抜かんと春る手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇つ保へ當り又留められたる手を此方より取り引倒春事も有也
読み
左伏(ひだりふせ)
是は左の手を取る也 事 右伏に同じ左右の違い計り也 尤も抜かんとする手を留められたる時は 柄を放し身を開きて脇坪へ當たり 又 留められたる手を此方より取り 引き倒す事も有る也
参考に六本目右伏
右伏
我右の方二相手並ひ坐し柄を取られたる時直二我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんと春る二相手いやと春くはるを幸に柄を足耳懸て後へ投倒春 又抜かんと春る手を留められたる時も右の通り二取倒春
読み
右伏(みぎふせ)
 我が右の方に相手並び座し 柄を取られたる時 直ぐに我れ右の手を向こうの首筋へ後ろより廻し胸を取り押し伏せんとするに 相手いやとすくばるを幸いに 柄を足に懸けて後ろへ投げ倒す 又 抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取り倒す
読み解く
 前回の右伏の逆で、「是は左の手を取る也 事 右伏に同じ左右の違い計り也」と云っています。
 座し方に指定は無いのですが、今度は我が左側に相手は並び座すとします。
 相手腰を上げ我が左手を取る。我は右手を相手の首筋から廻し胸を取り押し伏せんとする。
 相手押し付けられて嫌と身を起して来るので柄を足に懸けて後ろに投げ倒す。

 尤も我が抜かんとして柄に右手を懸けているならば、其の右手首を相手に取られて抜かさない様に押し付けられて来る。我は此の時右柄手を放し、左足を引いて左に開き、柄頭又は鍔を持つ左手で相手の脇坪に打ち当てる。
 又、柄手を留められた場合、柄手を放し相手の手を取り左手を相手の肘に懸け体を開き引き伏す事も有。

 右伏・左伏も状況に応じて臨機応変に対処する事を教えている様です。

曽田先生による五藤先生の業附口伝大小詰左伏
「右伏の反対業也」
(左脇に坐す右手胸にとり其手を押へ前へ伏)

*随分簡略な反対業の手附です。どの様な方法でも相手を制せられれば正解でしょう。

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2017年3月10日 (金)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く7重信流2大小詰6右伏

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
7、重信流
2)大小詰
六本目右伏
右伏
我右の方二相手並ひ坐し柄を取られたる時直二我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんと春る二相手いやと春くはるを幸に柄を足耳懸て後へ投倒春 又抜かんと春る手を留められたる時も右の通り二取倒春
読み
右伏(みぎふせ)
 我が右の方に相手並び座し 柄を取られたる時 直ぐに我れ右の手を向こうの首筋へ後ろより廻し胸を取り押し伏せんとするに 相手いやとすくばるを幸いに 柄を足に懸けて後ろへ投げ倒す 又 抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取り倒す
読み解く
 我が右側に敵は並んで坐す。相手が腰を上げて、左廻りに向き直り、右手を伸ばして我が柄を取る、我は直ぐに右手を相手の首筋へ後ろから廻し敵の胸を取り、押伏せようとすると、相手は押し伏せられまいと柄を放して力を入れて反り返ってくるを幸い、柄を反り返って浮いた膝下に懸けて後ろへ投げ倒す。
 また、我が抜こうと柄に手を懸けた時に、相手が我が柄手を取り右から押し付けてくる時も、我は柄手を放し相手の首筋に右手を後ろから廻し胸を取り押伏せる、相手は押伏せられまいと後ろに反り返ろうとするのを幸いに、浮いた敵の膝下に柄を懸け後ろに投げ倒す。
相手いやと「すくばる」を「ずくばる」として政岡壱實先生は「力なくはむかふ」意に用いる、とされて居ます。
 
 「又 抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取り倒す」柄手を取られた時に容易に相手の首に右手を懸けられるかどうかは研究課題です。

曽田先生による五藤先生の業附口伝大小詰六本目右伏
「打は仕の右側に並びて坐す打左手にて仕の胸をとる仕はすぐに其の腕を巻き込みて逆手を取り前に伏せる也
(右脇に坐す左手にて胸を取り来る其手を押え前へ伏せる)

*この江戸末期の手附は古伝の業技法とは異なります。
 相手は我が柄では無く左手で我が胸を取る、我は直ぐに其の相手の左腕に右腕を巻き込み左手で相手手首を逆手に取り前に押し倒す。

 古伝は柄を取るのを、右手、左手どちらとも云って居ません。五藤先生のでは左手で胸を取る。首に巻き反り返る処を後ろへ投げるのではなく、取に来た左腕を制して逆手に取って前に押し伏せています。

 古伝神傳流秘書の成立から概ね100年弱経っているのですから、業技法も替え業やより有効な技法が横行して変化するのでしょう。
 古伝は特定の人しか見る機会はなかったとも言えますから、口伝・口授などではどんどん変わってしまうでしょう。
 この業を古伝と江戸末期のものと見比べていますと、谷村派の五藤先生は第九代が江戸から土佐に持ちこんだ居合の神傳流秘書の存在を知らなかったのではと思えてきます。或は知っていてもその当時の業技法を優先させたのでしょう。どれも出来て土佐の居合です。
 

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2017年3月 8日 (水)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く7重信流2大小詰5胸取

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
7、重信流
2)大小詰
五本目胸取
胸取
 詰合たる時相手我胸を取り突倒さんと春る時我右の手尓て其手を取り左の足を後へ引柄頭尓て相手の脇へ當る又引く時は随而抜突く也
読み
胸取(むねとり・むなどり)
 詰合たる時 相手我が胸を取り突き倒さんとする時 我右の手にて其の手を取り左の足を後ろへ引き 柄頭にて相手の脇へ当てる 又 引く時は随って抜き突く也
読み解く
 詰め合って座している時、敵が腰を上げ右足を踏み込んで我が胸を右手で取り、突き倒そうとする。
 我も腰を上げ右手でその手を取るや左足を後方に退き柄頭を以て相手の脇腹に柄当する。又(次に)、敵は脇を柄当てされ、右手を放し後ろへ下がろうとするのに従って我は右手を柄にかけ刀を抜出し、切先を返して抜き突く。
 敵に柄当すれば刀は充分鞘送りされて居ますから鞘引きすれば即座に抜刀可能です。
曽田先生による五藤先生の業附口伝大小詰五本目「胸捕」
 「互に対座、打は仕の胸を捕へて突く仕すぐに右手にて支え左手に持たる柄頭を敵の脇壺に當てる也又胸を捕りて引く時はすぐに刀を抜きて突く也
(向をて居る右手にて胸をとり突く時は其手をおさえ左手にて脇坪へ當る)」
読み解く
 互に対座、打は仕の胸を捕えて押倒そうと突いて来る、仕はすぐに右手を着いて、倒れない様に支え、左手で刀を握り、柄頭で敵の脇坪に柄当てする。相手が胸を取って引き倒そうとするならば直ぐに刀を抜出し、切先を返して相手を突く。
(正面から相手が右手にて胸を取って、突き倒そうとするならば、右手で相手の右手を押え、左手にて相手の脇坪へ当てる)
 「又胸を捕りて引く時はすぐに刀を抜きて突く也」この「又」以下の解釈は、敵と我との間隔など状況次第でしょう。文章に抜けがあるのか研究課題です。

 

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2017年3月 6日 (月)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く7重信流2大小詰4小手留

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
7、重信流
2)大小詰
四本目小手留
小手留
立合の鍔打返二同し故に此処尓てハ不記
読み
小手留(こてとめ)
立ち合いの鍔打返に同じ故に此処にては記せず
読み解く
 立合の鍔打返とは大小立詰の三本目にある鍔打返でしょう。
大小詰は双方「・・始終詰合組居合膝二坐す・・」ですが、大小立詰は立合です。
「鍔打返:相懸りに懸り我刀を抜かむと春る其の手を留られたる時柄を放し手を打もぐ也」
 大小立詰めは立合、立業ですから相懸りに懸り合って、我は柄に手を懸け抜こうとする処、相手に我の右手を取って押さえられる。我は右柄手を離し、相手の手を鍔で打ち付けもぐ。

 右手で柄を握った処を相手に右手で押さえられる、或は両手で押さえられる、そこで柄から右手を離し、左手で持つ鍔で相手の手を打ち据えもぐ、と読んでみました。

 大小詰では相対して座して居るわけですから、相手が身を乗り出して、我が抜かんとする右柄手をとり押さえて抜かさじとする、我は右手を柄から離し、鍔で相手の手を打ちもぐ、でしょう。

曽田先生による五藤先生の大小詰小手留
「打は仕の左側に並びて坐す打の抜かんとする右手を仕向き直りて右手にて捕らへ引き寄せると同時に左手にて柄頭を敵の脇坪に當てる也」
(左脇に座す抜かんとする右手を把る其手をおさえ左手にて脇坪へ柄頭を以て當てる)

*この手附では神傳流秘書の鍔打返(小手留)にはならない様です。
其の上打(相手)と仕(我)は入れ替りになっています。

 これらの、古伝を変えてしまうこの流の習性は伝統的に行われていたのかも知れません。これを称して進化というか、節度がないというか、替え業を正面に据えてしまうのか、それとも居合以外は伝承が不十分でうろ覚えに依るのかなどと思えてきます。
 その一方では、古伝の大らかさを失えば業は固定化され実用に役立たない死にものになります。

 そうであるならば、一つの業から幾様にも想定の変化があり、裏もある事をしっかり伝えてもいい筈です。マニュアルばかりが頼りの現代人には武術は厄介です。

 

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2017年3月 4日 (土)

曽田本その1の1神傳流秘書を詠み解く7重信流2大小詰3柄留

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
7、重信流
2)大小詰
三本目柄留
柄留
 抱詰の通り両の手尓て柄を取り下へ押付られたる時向のわきの辺りへ拳尓て當扨我右の足尓て相手の手を踏み柄をもぐ常の稽古尓は右の足を押膝尓てこぜもぐ
*「抱詰の通り両の手にて柄を取り・・・」
「大小詰一本目抱詰:楽々居合膝に詰合たる時相手両の手にて我刀の柄を留る時・・」
読み
柄留(つかとめ)
 抱詰の通り両の手にて柄を取り下へ押し付けられたる時 向うの脇の辺りへ拳にて当て 扨 我は右の足にて相手の手を踏み柄を捥ぐ 常の稽古には右の足を押し膝にてこぜ捥ぐ
読み解く
 抱詰の様に相手が両手で我が柄を取って下へ押し付けられた時、我は相手の脇の辺りに右拳で打ち突け、相手が怯んだ隙に我が右足を踏み込んで相手の柄を取った手を踏み付け柄を捥ぎ取る。
 常の稽古では、相手の手を足で踏み付けるのは礼を失するので右の膝で手を押し膝でこぜもぐ。
 「こぜもぐ」はよくわかりません。政岡先生は「無理して放す」とされていますがそんな感じでしょう。

 政岡先生の引用された伝書と少し文言が異なるので読ませていただきます。
「抱詰の通り両手にて柄をとり下へおしつけられたる時相手のあぎの辺りへ拳にて当て扨我が右足にて相手の手を踏み柄をもぐ常の稽古には右の足にて押膝にてこぜもぐ」
「あぎ」はあご、「もぐ」ははなす、「こぜる」は無理して動かす。

曽田先生による五藤先生の業附口伝大小詰三本目柄留
「打は仕の右側に並びて坐す、仕の抜かんとする柄を留む、仕は右手を頚に巻き敵を前に倒さんとす、打倒されまじと後に反る、其の時すぐに仕は打の体の反りて前足の浮きたる下より(膝)柄をかけて後へ倒す力を添ふる也」
(左脇に座す抜かんとする右手を把る其手をおさへ左手にて脇坪へ柄頭を以て当てる)

 五藤先生による手附で曽田先生の実兄土居亀江の口伝を書き表したとされていますが古伝神傳流秘書とでは別物です。
 ( )内が五藤先生の御教示との事です。そこでは、古伝の様な拳では無く柄がしらで相手の脇坪に打ち付けるのですが、それ以降が蜻蛉切れの様ですが古伝の様に右足でこぜ捥ぐでしょう。

 江戸中期と末期の間に、この柄留が変わってしまったのか、大小詰の冒頭にある「是は業にあらざる故に前後もなく変化極りなし始終詰合居合膝に坐す気のり如何様ともすべし先大むね此順とする」とありました。
 業の順番だけでなく、如何様にでも応じていいとも取れる文章です。古伝の持つ独特の雰囲気は、形に拘るなと教えてくれている様です。

 但し古伝の簡単な技が、時に随いややこしくなるのか考え物です。簡単な方法で勝つ為の拍子や気が薄れて複雑にすればするほど役に立たないものになってしまいます。

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2017年3月 2日 (木)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く7重信流2大小詰2骨防扱

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
7、重信流
2)大小詰
二本目骨防扱
骨防扱(ホネモギ 曽田ルビ)
 立合骨防返に同し故常二なし
立合骨防返
大小立詰二本目骨防返
 相懸り二懸り相手我刀の柄を留めたる時我右の手尓て柄頭を取り振りもぐ也
読み
骨防扱(ほねもぎ)
 立合の骨防返(ほねもぎかえし)に同じ故に常には無い
立合骨防返(たちあいほねもぎかえし)
大小立詰二本目骨防返(だいしょうたちづめほねもぎかえし)
 相懸かりに懸かり 相手我が刀の柄を留めたる時 我右の手にて柄頭を取り振り捥ぐ也
読み解く
 此の業名の読みは、曽田先生のルビが施されています「骨防扱(ほねもぎ)」さてどうでしょう。骨防扱は「立合骨防返」に同じだから、何時もは稽古しない、と云っています。立合とは「大小立詰」のことでしょう。

 大小立詰めは、打太刀は小太刀を差し、遣方は太刀を差しての立業です。
双方スカスカと歩み寄り、相手が我が刀の柄を両手で取って抜かさない様に押し付けて来る。
 我は透かさず右手で柄頭を取って、柄を上に引上げ相手の手を振りもぐ。相手が柄を取るのが、右手だけ、両手、左手など在りそうですが工夫次第でしょう。

 立業では無い坐したる骨防扱では、体を乗り出して柄を取りに来るなど是も同様に我は柄頭を右手で取り上に引上げ振りもぐ。
 振りもぐや打太刀の顔面に柄当てする、其の儘鞘手を引いて片手真向に斬り下す、など出来そうです。

 この「骨防扱」「骨防返」については政岡先生は「防」は「捥」の誤写かも知れない、と仰っています。
 「防」は防ぐ、ささえる、はらう、そなえる、かためる。
 「捥」はもぎる、もぎ切る、ねじきる、ねじってはなす。

 無双直伝英信流は現在では土佐より伝わると思い、土佐の方言がよぎるのですが、本来奥羽地方のものであり、居合以外の業は、他流などと混在していますので時々意味不明の文言に行き当たり当惑します。
 かえって業名に意味を籠めすぎますとあらぬ方に行ってしまうもので、「浮雲」とか「颪」の様な業名の方が正しく伝わる様にも思います。

 曽田先生による五藤先生の業附口伝大小詰二本目骨防
「互に対座、打は両手にて仕の柄を握る仕は右拳を顔にあて其のひるむ時に乗じ右足を柄越にまたぎ右足内側より右手を柄に添へ右足にて敵の両手を押払うと同時に柄を防ぎ取る也此の時敵は我右脇へ匍ひ倒る也
(向ふて居る両手にて柄を押し付る時直に右手にて面へ当て其儘に乗り右足をふみ込み柄へ手をかけもぐ)」

*神傳流秘書の時代は単純でした、江戸末期にはここまで複雑な動作を要求して居ます。幾らでも変化はありうるでしょうが、業技法は単純なものほど有効だろうと思います。

 

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2017年2月28日 (火)

曽田本その1の1神傳流秘書を読み解く7重信流2大小詰1抱詰

曽田本その1
1.神傳流秘書を読み解く
7、重信流
2)大小詰
一本目抱詰
大小詰(是は業二あらさる故二前後もなく変化極りなし始終詰合組居合膝二坐春 気のり如何様とも春へし 先大むね此順に春る)
 重信流
抱詰
 楽々居合膝二詰合たる時相手両の手尓て我刀の柄を留る時我両の手を相手の両のひぢ二懸希て躰を浮上り引て其儘左の後の方へ投捨る
 読み
 大小詰(だいしょうつめ)(是は業にあらざる故に 前後もなく変化極りなし 始終詰合組み 居合膝に坐す 気乗り如何様ともすべし 先ず概ねこの順にする)
 重信流
抱詰(だきつめ)
 楽々居合膝に詰合たる時 相手両の手にて我が刀の柄を留める時 我両の手を相手の両の肘に懸けて 体を浮き上がり引いて其の儘左の後ろの方に投げ捨てる
読み解く
 大小詰の序文は、これは業では無いので、何本目からでも始めても良い、前後の兼合いを無視しても良い。始終、詰合って居合膝に坐し、気乗り次第にどのようにでも稽古しなさい。概ねこの順序で稽古する。と云っています。
 相手は小太刀を差し、我は太刀を差して向かい合って居合膝に坐す。「楽々居合膝に詰合たる時」の楽々をどのように解釈するのか、失伝した大小詰であり当然のようにその「楽々居合膝に詰め合う」仕方も失念しているのでしょう。

 「楽々」の書き写が間違っていることもあるでしょうが、そのまま曽田先生に敬意を払って、相手をにっくき敵と意識する事無く貴人と接するが如く、さりとていたずらに緊張せずに作法に従って楽々居合膝に互いに接するように座す。
 相手は腰を上げて、爪立つや我が刀の柄を両手で抜かさないように抑えてくる。我は相手の両肘に下から両手を掛け絞り上げるように同時に腰を上げ、相手が浮き上がる処、左足を引き体を左に開いて左後方に投げ捨てる。

 曽田先生による第十六代五藤孫兵衛正亮の業附口伝を参考にしてみます。
大小詰一本目抱詰
「互に対座打は仕の柄を両手にて取らんとす、すぐに仕は両手にて打の二の腕を下より差し上ぐる様に掴み我が左脇に引き倒さんとす也」
(向ふて居る敵我刀の柄を両手にて押付る時敵の両肱へ手をかけうすみ上げ左へ振り倒す(五藤先生教示))

 古伝は「相手両の手にて我が刀の柄を留る時」とあります、我が柄に手を掛け刀を抜こうとするのを留められたと読めます。
 ここでは「打は仕の柄を両手にて取らんとす」と言って打が仕掛けてきた、両手で我が柄を取ろうと手を伸ばしてきたがまだ取っていない様な書きぶりです。
 「我が左脇に引き倒さんとす」も引き倒す心持で終わっています。
 五藤先生の教示は古伝を思わせます。
 「両肘へ手をかけうすみ上げ・・」の「うすみ上げ」はよくわかりません。抱詰ですから抱き込んで下から持ち上げる、押し付けられるに任せて下から肱に両手を掛け腰を上げると同時に浮き上げる。などでしょう。相手の肘を締めあげ浮かせる業も有ろうかと思います。

此の業の手附に政岡先生の地之巻の抱詰
楽に居合膝に詰合たる時相手両の手にて我が刀の柄を留る時我両の手を相手の両ひぢに懸け少し体を浮上り引くに其儘左の後の方へ投捨てる」

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