曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位

2018年2月24日 (土)

曽田本その1の3業附口伝読み解く3大小詰2骨防

曽田本その1
3業付口伝読み解く
3、大小詰
二本目骨防
互二對坐打ハ両手二テ仕ノ柄ヲ握ル仕ハ右拳ヲ顔二アテ其ノヒルムトキ二乗シ右足ヲ柄越二マタギ右足内側ヨリ右手ヲ柄二添へ右足ニテ敵ノ両手ヲ押拂フと同時二柄ヲ防取ル也此ノ時敵ハ我右腋へ匍ヒ倒ル也
((向フテ居ル両手ニテ柄ヲ押シ付ル時直二右手ニテ面へ當テ其儘二乗り右足ヲフミ込ミ柄へ手ヲカケモグ)
読み
二本目骨防(ほねもぎ 曽田メモ神傳流秘書にあり)
 互に対坐 打は両手にて仕の柄を握る 仕は右拳を顔に当て其の怯む時に乗じ右足を柄越にまたぎ 右足内側より右手を柄に添え 右足にて敵の両手を押し払うと同時に柄を防取る也 此の時敵は我右腋へ匍い倒れる也
(五藤メモ 向うて居る 両手にて柄を押しつける時 直ぐに右手にて面へ当て 其の儘に乗り右足を踏み込み柄へ手をかけもぐ)
古伝神傳流秘書大小詰
二本目骨防扱(ホネモギ 曽田ルビ)
 立合の骨防返に同し故常二なし
古伝神傳流秘書大小立詰
二本目骨防返
 相懸リニ懸りて相手我刀の柄を留めたる時我右の手尓て柄頭を取り振りもぐ也
読み解く
*
嶋 専吉先生の謄写された第19代福井春政先生の大小詰二本目骨防
 「打太刀は両手にて仕太刀の柄を握る、仕太刀は右拳を顔に當てその怯むときに乗じ右足を柄越に跨ぎ右足内側より右手を柄に添へ右足にて打太刀の両手を押払ふと同時に柄を防ぎ取るなり、この時打太刀は仕太刀の右脇へ匍ひ倒る。」


 互いに向き合って立膝に座して居る。敵腰を上げて両手で我が柄を握り押付けてくる。我はとっさに右拳で敵の顔面に殴りつけ、敵ひるむ処を立ち上がって柄越しに右足を掛け敵の手を押付け、右足の内側から右手で柄を掴んでもぎ取って敵を右脇に振り倒す。

 五藤先生は柄を取られたので、右拳を敵の顔面に当てひるむ処を右足を踏み込み柄を握って手前に引き上げ振りもぐ。

 骨防はどのように読むのでしょう、「ほねもぎ」「こっぼう」?。

神傳流秘書 大小詰 二本目骨防扱

 此の業名の読みは、曽田先生のルビが施されています「骨防扱(ほねもぎ)」さてどうでしょう。
 骨防扱は「立合骨防返」に同じだから、常には稽古しない、と云っています。立合とは「大小立詰」のことでしょう。

神流秘書 大小立詰 二本目骨防返

 大小立詰めは、打太刀は小太刀を差し、遣方は太刀を差しての立業です。
 双方スカスカと歩み寄り、相手が我が刀の柄を両手で取って抜かさない様に押し付けて来る。我は透かさず右手を柄頭に取って柄を上に引上げ相手の手を振りもぐ。
 相手が柄を取るのが、右手だけ、両手、左手など在りそうですが工夫次第でしょう。

 対坐した骨防扱では、体を乗り出して柄を取りに来るなど是も同様に我は柄頭を取り上に引上げ振りもぐ。
 振りもぐや打太刀の顔面に柄当てする、其の儘鞘手を引いて片手真向に斬り下す、など出来そうです。

 この「骨防扱」「骨防返」については政岡先生は「防」は「捥」の誤写かも知れない、と仰っています。
 防は防ぐ、ささえる、はらう、そなえる、かためる。
 捥はもぎる、もぎ切る、ねじきる、ねじってはなす。

 無双直伝英信流は現在では土佐より伝わると思い、土佐の方言がよぎるのですが、本来奥羽地方のものであり、居合以外の業は、何処かの流のものと混在していますので時々意味不明の文言に行き当たり当惑します。
 業名に意味を籠めすぎますとあらぬ方に行ってしまうもので、「浮雲」とか「颪」の様な業名の方が正しく伝わる様にも思います。

 神傳流秘書の時代は単純でした、江戸末期には複雑な動作を要求して居ます。幾らでも変化はありうるでしょうが、業技法は単純なものほど有効だろうと思います。

 柄を取られた時の対処の仕方はいろいろあるでしょう。掟に従った業では無いと古伝は言っていました。基本を一本充分稽古した上でさまざまな展開を工夫するのもよいものでしょう。

 稽古を楽しむ心が無ければ、修行もままならないものです。稽古とか修行とかの言葉が日本人には苦しむ事、しごかれる事と刷り込まれています。いたずらに同じ事を繰り返していても多くは得られない事もあるものです。

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2018年2月20日 (火)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位11討込

曽田本その1
3業附口伝読み解く
2、詰合之位
十一本目討込(伝書二ナシ)(留ノ打ナリ)
双方真向二打チ込ミ物打ヲ合ハス也
読み
十一本目討込(伝書になし)(留の打なり)
双方真向に打ち込み物打を合す也
古伝神傳流秘書詰合
11本目討込は有りません。
読み解く

*この業は伝書に記載されていないと曽田先生は仰います。詰合之位は十一本と摺りこまれて、最後の業は討込と定番になっているのです。
神傳流秘書には「以上十本」とあって討込の業は記載されてはいません。
 この業附口伝の十本目の霞剣では「・・五歩退り相中段に次に移る也」とありますから十一本目があって稽古もされていたのでしょう。

 双方スカスカと中段に構えて相進み、間境で左足を踏込み上段に振りかむり右足を踏み込んで真向に打ち下ろす、双方の真中上方で打ち合わせ、物打のあたりで鎬が擦れ合って留める。
 双方じわじわと中段に刀を合わせ、五歩退き血振り納刀する。
 是が演武会で見る殆どです。

 真向打ち合いは双方相手の頭上ど真中を物打で真向に打ち込む様にしないと空振りになり易いものです。
 この業は演武の際の締めの業位に思うものではなく、この真向打ちの極意を知ることが重要です。
 詰合之位十一本の中にこの双方真向に打ち合わせる業は、十一本目討込・十本目霞剣・八本目眼関落の三本もあります。三本とも双方の真ん中上部での物打ち付近の表鎬での摺り合いによる相打ちに留めています。
 太刀打之位では十本目打込一本・七本目絶妙剣、五本目月影は敵八相に打込ですから似ていますがちょっと違います。これを八相の構えから上段に振りかむって真向に打ち込めば同じことになります。ですから、この双方真向拝み打ちは、そのまま双方の頭上に打ち込めば相打ちとなるか、この極意技を会得した者が常にここで勝負を得られます。

 この拝み打ちだけをひたすら稽古するだけの価値は高いものです。何故土佐の居合はこの剣術の極意技を稽古させるように組み込んだのでしょう。
 一刀流の「切り落し」、新陰流の「合っし打ち」に影響されていることはどう考えてみても明らかです。

 「打ち込み」は、双方の頭の中心部に真っ直ぐに打ち込む事がポイントです。
 決して刀を斜めにして受け太刀を意識したものでは無く、厳しく注意すべきところでしょう。打太刀の真向に振り下ろす刀を、仕太刀は十分引き付けて真向に打ち下し斬り落します。
 仕太刀は打太刀の頭上を割って打太刀の刀は仕太刀の脇に摺り落ちます。
 打込むわけにいきませんから敵頭上で寸止めする事になります。
 双方、一歩退いて正眼に戻し物打ちを合せ、静かに元の位置に退がり血振り納刀。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の打込

「打込(伝書になし、留の打なり)共に中段、互に進み間合にて真向に打込み物打を合せて双方青眼となる。
業終って其場にて左膝を跪き血振ひ納刀をなし一旦立ちて更めて正座し帯刀を解き左腰に堤刀にて後退し相互に立礼、更に神前の敬礼を行ひて退場す。」


 十一本目打込みは古伝神傳流秘書にはありません。十本目の霞剣では締まらないと考えて後世の者が追加したのかも知れません。いや曽田先生の独創かも知れません。

 ここは、打太刀が先に真向に斬り込み、仕太刀がそれを斬り落す極意業で締めたいものです。

 以上で業附口伝の詰合之位を終わります。
 嶋先生が昭和17年1942年太平洋戦争に突入し高知にも米軍機が飛来する中を、高知におもむき2週間程第19代福井春政先生や田岡 傳先生に直に指導を受けられた貴重な覚え書です。
 書かれたものから是は曽田先生の業附口伝に依る手附と判断できます。此の頃既に河野百錬先生の「無双直伝英信流居合道」が発行され、曽田先生の業附口伝が世に出て居ました。
 詰合以降は第19代福井春政先生のお持ちの文献から謄写したと書かれています。嶋 専吉先生のお国は何処で、御歳や師匠や所属は何処であったのか、どなたのお弟子さんであったのか、わかりません。

 詰合は居合膝(立膝)から始まる居合らしい組太刀です。古伝神傳流秘書の業手附を学べば「おおらか」力量次第で如何様にも変化を展開できるものです。
 この曽田先生の業附き口伝以降の詰合之位は「位」などと、「しか」とした送りがあるばかりで、特定の動作を要求されてしまい組太刀踊りになってしまう事が残念です。武術は「かたち」の伝承(まね)で終わらせたくないものです。

 詰合之位を終ります。

 

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2018年2月18日 (日)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位10霞剱

曽田本その1
3業附口伝読み解く
 
2、詰合之位
 
十本目霞剱(相中段)
是モ互二立合也敵待カケテモ不苦互二青眼ノ侭スカスカト行場合ニテ互二拝ミ打二討也互二太刀ノ物打チノアタリ合タル所ヲ(中段二直ル)我其侭左ノ足ヲ踏ミ込ミ裏ヨリ払ヒカムリ勝也五歩退リ相中段二移ル也
読み
十本目霞剱(かすみけん)(相中段)
 是も互に立合う也 待ち駆けても苦からず 互に青眼の侭スカスカと行き場合にて拝み打ちに討つ也 互に太刀の物打ちの辺り合いたる所を(中段に直る) 我其の侭左の足を踏込み裏より払い冠り勝也 五歩退がり相中段に移る也
古伝神傳流秘書詰合十本目霞剣
 眼関落之の如く打合せたる時相手より引かんとするを裏よりはり込ミ真甲へ打込ミ勝亦打込ま須之て冠りて跡を勝も有り
読み
 眼関落の如く打合せたる時 相手より引かんとするを裏より張り込み真甲へ打込勝 亦打込まずして冠て跡を勝もあり
読み解く

是も互いに中段に構え、敵は水月刀の刀を合わせた位置で待ち掛けていても良いと言ってますが、双方元の位置に戻ってスカスカと歩み行きましょう。
   双方一歩踏み出すやするすると上段に振りかむり、右足で間を越して拝み打ちに真向に打ち込む。
  互いに物打のあたりで刀を鎬で摺り合わせ、じりじりと中段に直るところ、機を見て我は左足を踏み込むと同時に刀を敵刀の裏に返し払うや振りかむって勝ちを得る。
 中段に刀を合わせ五歩退がり中段のまま次の業に移る。

 霞剣の手附の文章では、「・・我其儘左の足を踏み込み裏より払いかむり勝也」と言って、左足の踏み込みは前に踏み込む教えのようです。
 筋を変わる方が容易なので我は刀を裏から払うや左前に左足を踏み込み振りかむって勝つ、とやっている師伝もあるようです。

 「裏より払い・・」は、双方中段に直った時は我が刀は敵の刀の右側にあって物打の鎬で触れ合っている。
 我は敵の刀の下から左側に返して左足を踏み込むと同時に敵刀を右に払って(張り込んで)其の拍子に振りかむり勝つ。

 古伝はおおらかです。一つの業から幾通りの変化でも方法でも稽古をさせてくれます。今の全剣連の剣道形も制定当初はそれにより幾通りの変化も期待できるとあったはずが「形」に拘り忘れ去られている様なものです。

先日あるところで、そんな話をしていて、「形は申し合わせの・かたち・ではない」が理解できないような、マニュアル育ちが殆どである事にあきれています。
 そうかと思えば、「充分出来る様になって変化を付ける様に出来るまで教えの通りやる」とかたくなです。「充分できる」の意味が解かっていないのでしょう。

 真向に中央で打ち合わせ、「双方切先を正眼に取りつつ退く処」、我は刀を相手の刀の裏に張り込みその拍子に「踏み込ん」で真向に打ち込み勝。ここは左足の稍々左前への踏み込みが良さそうです。真向打ち合わせた刀の物打は相手の頭上に届く処で打ち留められるべきで、手を伸ばしても届かないのでは何のための拝み打ちでしょう。土佐の居合の組太刀にはこのような双方の間の中央での打ち合わせや、請け太刀が多いので手附の奥にあるものを考える研究課題です。
 亦打込まずに上段に冠って勝ちを示すも有。 

 詰合は以上十本で終わり。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の霞剣
 「互に青眼のまゝ(但し剣尖を幾分高目に且つ腕を稍々前方に伸ばす心地にて)スカスカと進み間合にて双方拝み撃ちに物打のあたりにて刀を合せ中段に直るところを仕太刀素早く左足を一歩進め瞬間裏より打太刀の刀を払ひ直に上段に冠り勝つなり。
刀を合せ五歩退り(但し次の「留の打」を演ずる場合は納刀はせず)相中段にて次に移る。」


 この(但し剣尖を幾分高目に且つ腕を稍々前方に伸ばす心地にて)の青眼の構えの仕方を敢えて指導された「何故」が有りません。
 真向相打ちの間を考えての事かも知れません。
 真向打ちは上手な者が下手なものを斬り落してしまいます。敢えて双方の間の中心付近で物打ちあたりで相打ちとするには、稍々遠間で真向に打ち込み鍔が口元辺りに下りて来た時刀を止めれば双方の中間で剣先45度位で物打ちあたりで止められるでしょう。決して刀を斜めにしてバッテンで止めない事です。受け太刀の稽古をしても意味は無いでしょう。
そして本来の真向打ちを知る事も大切でしょう。

古伝神傳流秘書の詰合はここまでの十本で終わっています。
曽田先生の業附口伝は更に一本、十一本目に「討込」が有ります。

 

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2018年2月16日 (金)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位9水月刀

曽田本その1
3業付口伝読み解く
 
2、詰合之位
 
九本目水月刀(相上段)
 是モ同シク立合テ真向へカムリ相掛リニテモ敵待カケテモ不苦我真向へカムリてスカスカト行場合ニテ太刀ノ切尖ヲ敵ノ眉間二突キ込ム様二突ク也其ノ時敵スグニ八相二拂フ其時我スグ二カムリ敵ノ面へ切込ミ勝也互二五歩退リ血振納刀以下同し
読み
 是も同じく立合いて真向へ冠り 相掛りにても 敵待ち掛けても苦からず 真向へ冠りてスカスカと行く 場合にて太刀の切尖を敵の眉間に突き込む様に突く也 其の時敵直ぐに八相に払う 其の時我直ぐに冠り敵の面へ切り込み勝也 互に五歩退がり血振い納刀以下同じ
古伝神傳流秘書詰合九本目「水月」
 相手高山二かまへ待所へ我も高山二かまへ行て相手の面二突付る相手拂ふを躰を替し打込ミ勝
古伝の読み
 相手高山に構え待つ所へ 我も高山に構え行きて 相手の面に突付ける 相手払うを体を替えし打込み勝
読み解く
 是も前回と同じように双方立って上段にかむり相掛に歩み行く。敵は待ちかけていてもよいとありますが双方歩み行くことにします。
 真向上段に構えスカスカと行き場合にて我は敵の眉間に突っ込むように突きを入れる、敵すぐに八相に我が刀を払う、その機に乗じて払われるや左足を左斜めに踏み出し上段に振りかむって右足を踏み込んで敵の面に斬り付ける。互いに切先を合わせ五歩退き血振り納刀する。
 再び刀を抜き中段に構えて次の業に移る。

 是は敵に突きを入れると敵が払ってくるので、その払われた拍子に筋をはずすように左足、右足と踏み込んで敵の面へ切り込み勝つ。としてみましたが、体を替らずに左足右足と踏み込んで真向を打つとした方が業附口伝の動作であろうと思います。
 この突きは、歩みつつ上段からスルスルと正眼に下ろし敵の眉間に突き込む、敵は目の前に切先が迫って来るので思わず八相に払ってしまう、そこに乗じて振りかぶり打ち込む。
 相手は我が刀を払うのであって我が拳では無い。
 我が突きは払われなければ眉間に突き込む意識はあるべきものです、然し其の侭突き間に入れば真向から斬り下されてしまいます。遠間で刀を払わせる気が大切でしょう。


神傳流秘書 詰合 九本目 水月
 相手上段に構え待つ所へ我も上段に構えスカスカと歩み行く、歩みつつ間境で切先を下し右足を踏み込み相手の面に突き付ける、相手之を右足を退き上段から我が右に八相に払って来る、払われるに随い左足を左斜めに踏み込み体を躱し右足を踏み替え相手の面に打込み勝。

或は我が刀を払う当たり拍子に体を替って打込む。
この時相手は、踏み込んで払ってくる事も、退って払うも有りでしょう。我が気勢によるものでしょう。
古伝は、如何様にも変化しても「それは違う」などと言うことなどなさそうです。
師伝の異なる方と、太刀打之事や詰合を稽古しますとその事が理解出来申し合わせの「剣舞」とは違う事が認識できます。

此の業は神傳流秘書の太刀打之事六本目水月刀と同じ様な業でしょう。
「相手高山或は肩遣方切先を相手の面へ突付て行を打太刀八相へ払ふ処を外して上へ勝つ或は其儘随て冠り面へ打ち込み勝も有り」

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の水月刀

「立合て右上段に冠り相掛りにて進み中途仕太刀は幾分刀を下げ間合に至りて打太刀の眉間に突込む様に刺突す、打太刀之を八相に払ふ。
仕太刀隙かさず左の脚を稍々左方に踏み体を軽く左に転はして振冠り、右足を一歩踏み込み打太刀の面を打つ。
(此の場合体を左に開き上段に振冠りたるまゝ残心を示す様式もあり)
刀を合せ双方五歩退がり血振納刀」

 この方が古伝らしい体を替る動作を取り入れています。

 

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2018年2月14日 (水)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位8眼関落

曽田本その1
3業付口伝読み解く
 
2、詰合之位
 
八本目眼関落(相上段)
 是モ互二立チ敵モ我モ真向へカムリ相掛リニテスカスカト行キ場合ニテ互二拝ミ打二討也其ノ時敵ノ拳ト我拳ト行合也其時我スグ二柄頭ヲ敵ノ手元下カラ顔へハネ込ミ勝也(右足ヲドントフミ急二左足ヲ踏ミ込ム也)互二五歩退リ納刀以下同シ
読み
 是も互に立ち 敵も我も真向へ冠り相掛りにてスカスカと行き場合にて互に拝み打ちに討つ也 其の時敵の拳と我が拳と行き合う也 其の時我直ぐに柄頭を敵の手元下から顔へはね込み勝也 (右足をドンと踏み急に左足を踏み込む也) 互に五歩退り納刀以下同じ
参考
古伝神傳流秘書詰合八本目「柄砕」(眼関落ノコトナラン 曽田メモ)
 両方高山後ハ弛之木刀二同し
この「弛之木刀」の業名は曽田本に見当たらず、他の文献からも引用できません。
古伝神傳流秘書太刀打之事七本目「独妙剣」が業附口伝の眼関落と同様な業なので参考にして見ます。
独妙剣
 相懸也 打太刀高山遣方切先を下げ前二構へ行場合尓て上へ冠り互二打合尤打太刀をつく心持有柄を面へかへし突込ミ勝
読み解く

 是も互いに相上段と言うことですが、今までの位弛や燕返では敵は左上段でした。是は双方上段ですが指定がありませんから右足前にした右上段とします。
 互いに右上段に構え相掛にスカスカと歩み寄る。
 場合にて互いに拝み討ちに討つ。互いの真向に真っ直ぐに打ち下ろすので、互いの中央物打付近で鎬を摺り合わせ相打ちとなります。
 右足を踏み込み拳を合わせ押し合い、我は右足をドンと踏んで敵の気を反らす様にはずみを付け、左足を踏み込むや、敵の手元から我が柄頭を跳ね上げて敵の顔面人中を打ち勝つ。
 刀を合わせ互いに五歩退き血振納刀、再び右足前で刀を抜き相上段となって次の業に移る。

相上段ですが、振冠では無く、頭上に45度に剣先を立てて構えて相進みが妥当でしょう。

 真向拝み打ちで双方の鎬を滑って鍔で留める様な打ち込みを見ますが、是では刀が触れるや手元を手前に引く様な動作になってしまい真向拝み打ちのポイントを身に付けることは出来ないでしょう。
 或いは双方拝み打ちして、互いの間の中央で手の内を締めてストップをかけています、これも疑問です。
 古伝神傳流秘書の太刀打之事「独妙剣」が稽古業としては理に適うと思います。
 真向打ち合って拳と拳が行き合うや、ドント右足を踏み付けて敵退かんとする所を即座に柄頭を敵の顔へ跳ね込むのも研究課題でしょう。


 曽田先生は五藤先生の業附口伝を元にして考察されたと思われます。
 神傳流秘書の詰合と五藤先生の業附口伝以外に詰合を書き表した伝書が見当たらない限り当面はこのような業で稽古する以外にありません。


 木村栄寿先生の林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流傳書集及び業手付解説の神傳流業手付では詰合八本目は柄砕「両方高山跡は地の木刀に同じ」とあって「弛と地」の読み違いでしょうがどちらも証明不能です。
 「眼関落」が同じ業である様な「詰合業手付及び口伝」にありますが引き当てるべきものが見当たりません。


 政岡先生の無双直伝英信流居合兵法地之巻にある無双直伝英信流居合兵法之形は文政二年山川幸雄述坪内長順記神伝流秘書による、と書かれています。幸雄は幸雅と思われますが正誤表に記載されていませんので坪内長順が書写した際の誤記かもしれません。
そこでの詰合は詰合之位とされ八本目は眼関落の業名を採用しています。

 眼関落「(相上段から互に切り結び鍔押となる処をはね上げて顔に当てる 政岡先生述)両方高山にかまえ行打合尤も打太刀をさく心持あり柄をかえして突込勝」とされています。この部分は神傳流秘書の太刀打之事七本目「独妙剣」の文言に類似です。この政岡先生の神伝流秘書の出所は不明です。


嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の眼関落

 「互に立合ひて真向に振冠り相掛りにてスカスカと進み間合(此場合は幾分間を近くす)にて互に拝み撃ちに打つ(物打あたりにて)続いて双方の拳が行き合ふ瞬間、一時鍔元にて競り合ひ仕太刀は直に右足にて強く一度大地を踏み付け急に左足を打太刀の右側に一歩稍々深目に踏込みざま、打太刀の手下下より顔へ撥ね込み人中に柄當を加ふ。
刀を合せ互に五歩退き血振、納刀をなす。

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2018年2月12日 (月)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位7燕返

曽田本その1
3業付口伝読み解く
 
2、詰合之位
 
七本目燕返(仕立 納 打左上段)
 是ハ敵モ我モ立ツ也敵ハ刀をヲ抜テカムル我ハ鞘二納メテ相掛リニテ行ク也場合二テ敵我面へ打込ム也我其時右片手ニテ抜キ頭上ニテ請ケスグ二左手ヲ柄二添へ打込ム也敵表ヨリ八相二拂フ也我又スグニカムリテ打込ム也敵スグニ裏ヨリ八相二拂フ也我又スグニカムリテ敵ノ面へ打込ム也(左足ヲ一足踏ミ込)其時敵後へ引我空ヲ打ツ也其時我切尖ヲ下ゲ待也敵踏ミ込ミテ我真向へ打込也我其時左足ヨリ一足退リ空ヲ打タセ同時二カムリテ一足踏込ミ敵ノ面へ勝也
互二五歩退リ納刀後再ヒ刀ヲ抜キ相上段ニテ次二移ル
読み
七本目燕返(つばめかえし)(仕立納 打左上段)
 是は敵も我も立つ也 敵は刀を抜て冠る 我は鞘に納めて相掛りにて行く也 場合にて敵我が面へ打込む也 我其の時右片手にて抜き頭上にて請け 直ぐに左手を柄に添へ打込む也 敵表より八相に払う也 我又直ぐに冠りて打込む也 敵直ぐに裏より八相に払う也 我又直ぐに冠むりて敵の面へ打込む也(左足を一足踏み込む) 其の時敵後へ引き我空を打つ也 其の時我切尖を下げ待つ也 敵踏み込みて我が真向へ打込む也 我其の時左足より一足退がり空を打たせ同時に冠て一足踏み込み敵の面へ勝也
互に五歩退がり納刀後 再び刀を抜き相上段にて次に移る
古伝神傳流秘書詰合「燕返」
相手高山我ハ抜か春して立合たる時相手より打込むを我抜受二請る相手引を付込ミ打込相手右より拂ふを随って上へ又打込拂ふを上へ取り打込扨切先を下げて前へかまへ場合を取り切居処へ相手打込を受流し躰を替し打込勝又打込ま須冠りて跡を勝もあり
読み
燕返(つばめかえし)
 相手高山 我は抜かずして立合いたる時 相手より打ち込むを抜き受けに請ける 相手引くを付け込み打ち込む 相手右より払うを随って上へ又打ち込む  払うを上へ取り打ち込む 扨 切先を下げて前へ構え場合を取り切り居る処へ 相手打込むを受け流し 體を替えし打込み勝つ 又 打ち込まず冠りて跡を勝もあり
読み解く
 前回の位弛で双方刀を合わせ五歩下がります。打太刀は「其のままでも苦からず」ですがここでは双方退いて元の位置に帰ります。
 そこで我は横血振して納刀し、敵は正眼から左足を出し右足を引いて左上段に構えます。
 双方スカスカと歩み行き、間に至れば敵我が真向に右足を踏み込んで打込んでくる。我は右足を出して、抜刀し頭上で十文字に請ける。
 敵再び打込まんと上段に振りかむる処、我は請けるや否や左手を柄に掛け右足を左足と踏み替え敵の右面を打つ、敵是を足を踏み替え裏より八相に払う。
 (この処、業附口伝では敵の打込みを抜き請けに請けた拍子に上段に冠って敵の右面に打ち込んでいます。)
 我は又すぐに振りかむり右足と左足を踏み替え右足前にして敵の左面を打つ、敵又すぐに足を踏み替え裏より八相に払う。
 我は又すぐにかむり、左足を一足踏み込み敵の真向に打ち下ろす。其の時敵右足を大きく後方に引いて、我は空を打つ。敵は同時に上段に構える。
 空を打つや我は切先をそのまま下へ下げ、敵が我が頭上へ打込むように待つ。敵右足を踏み込んで真向に打込む、其の時我は左足より一足下がり右足を追い足にして下がり敵に空を打たせ同時にかむりて右足を一足踏み込んで敵の面を打ち勝。

 足捌きを踏み替えにして古流らしくしてみましたが、歩み足で右・左・右・左と進み左足を引いて右足を踏み込んで勝つ。
 其の場合も直線的な動きばかりではなく、筋を変わりながら打込み、払われる、直線的に踏み込み空を切るなどの動きを稽古したいものです。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の燕返

「打太刀は上段、仕太刀は刀を鞘に納めたるまゝ相掛りにて前進、間合にて打太刀は仕太刀の正面に打込む、仕太刀は素早く抜刀剣先を左方に右双手にて頭上十文字に請け直に双手上段となり左足を一歩進め相手の裏ら面に打込むを打太刀は右足を一歩退き裏より之を八相に払う。
仕太刀更に右足を一歩進め表て面に打込むを打太刀亦左足を一歩退き表より八相に払う。
仕太刀は直に振冠りて左足を一歩進め打太刀の正面に打込む、この時打太刀は左足より大きく退きて仕太刀に空を打たせ。
次で打太刀は右足を一歩踏込み仕太刀の真向に打下す、仕太刀は之に応じて左足を大きく引き体を後方に退きて打太刀に空を撃たせ(此の際拳は充分に手許にとるを要す)振冠りざま右より踏込み打太刀の正面を打つ。
刀を合せ原位置に復し互に五歩退きて血振ひ納刀をなす」

*古伝の「扨切先を下げて前へかまへ場合を取り切居処へ相手打込を受流し体を替し打込勝」の「受け流し体を替し」は業附口伝同様なくなっています。
 受け流しつつ体を変わり打込む動作は稽古しておきたいものです。

この業で敵に躱されて空を切った時、切先を下げて頭上に打ち込ませる時、体を前屈みにして頭を下げているのを見かけますが、誘いをかけているつもりでしょうが、そんな誘いに乗るでしょうか。空を切った切先を稍々下げた瞬間敵は打ち込んで来るものです。

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2018年2月10日 (土)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位6位弛

曽田本その1の
3業附口伝読み解く
 
2、詰合之位
 
六本目位弛(仕坐納 打左上段)
 是ハ敵ハ立チ我ハ坐スル也敵ハ太刀ヲ抜イテカムル我ハ 鞘二納メテ右片膝立テ坐スル也敵スカスカト来テ拝ミ打二討ツ也我其時アタル位ニテスッカリと立チ其侭左足ヲ一足引キテ抜敵二空ヲ打タセ同時二右足ヲ一足踏ミ込ミ面へ切リ込ミ勝也
仕太刀ハ此ノ時刀ヲ合ハセ五歩退キ血振ヒ納刀
打太刀ハ其位置二テモ五歩退リテモ不苦
読み
六本目位弛(くらいゆるみ、くらいはずし?)(仕坐納 打左上段)
 是は敵は立ち我は坐する也 敵は太刀を抜いて冠る 我は鞘に納めて右片膝立て坐する也 敵スカスカと来て拝み打ち討つ也 我其の時、当たる位にてスッカリと立ち其の侭左足を一足引きて抜き 敵に空を打たせ同時に右足を一足踏み込み面へ切り込み勝也
仕太刀は此の時刀を合わせ五歩退き血振い納刀
打太刀は其の位置にても五歩退りても苦からず
古伝神傳流秘書詰合五本目「位弛」
 我居合膝二坐したる所へ敵歩ミ来りて打込むを立さま二外し抜き打ち二切る 或は前の如く抜合たる時相手より打を我も太刀を上へはづし真向へ打込ミ勝
読み
 我居合膝に坐したる所へ 敵歩み来たりて打込むを 立ち様に外し抜き打ちに切る 或いは 前の如く抜き合いたる時相手より打つを 我も太刀を上へ外し真向へ打込み勝
読み解く

 「位弛」はくらいはずし、くらいゆるみと読んだら良いのでしょう。
 是は敵は左上段に構える。左上段と曽田先生のメモがあるのでそうしますが、その意味があるかは疑問です。
 左上段は左足を前に出し刀を上段に構え切先は高く45度位に取り柄頭は左足先の辺りに向けます。従って出足(この場合は左足)から前進します。
 我は刀を鞘に納めたまま立膝(居合膝)に座しています。敵スカスカと歩み来て拝み打ちに頭上へ打ち込んで来ます。

 我は敵が上段に構えて歩み寄って来るので刀に手を掛け腰を上げ刀を抜き出し間を計り、敵間境に接するや立ち上がりつつ刀を物打まで上方に抜き、敵踏み込んで拝み打ちに打つや左足を後方に一足引いて右足を追い足捌きにスッカリ立ち、刀を左肩を覆う様に抜き上げ、敵刀に空を打たせるや右足を一足踏み込んで敵の面へ切り込んで勝つ。

 敵はすでに上段に構えて間を越して来ますから、打ち込んでくる起こりは間をよく読んで立ち上がり、充分待って拝み打ちに打つをとらえて左足を後方に引いて間を外して空を切らせるものです。

 この場合の、深く敵が攻め込んでいれば、抜き上げた刀で敵の刀を摺り落とす事も考慮して頭と左肩を十分カバーした抜き上げが大切です。刀を抜いてしまい受け太刀にするのではないでしょう。
 現代居合の正座の部附込の業に相当します。

 敵の切り込みを左足を一足引いて外すのですが、直線に引いたのでは、敵の切り込んで空を切った切先は我が正中線上にあります。我が其の侭真直ぐ打込めば、敵は切先を上げて刺突する事も出来ます、此処は筋を替るか、外した瞬間に斬り下すかでしょう。

 仕太刀は正眼に構え打太刀も正眼に合わせ互いに五歩退いて仕は血振納刀、打は左上段に構え次の業に移る。打はそのままの位置にとどまり、仕に合わせて上段に構えるもよい。とありますがここでは双方下がることにします。

神傳流秘書 詰合 六本目位弛

 我居合膝に座して居る処へ相手上段に振り冠って歩み来たり、真向に打込んで来るのを、立ち上がり右足を引き刀を上に抜き上げ拳を返して真向に打込む。

 或は双方居合膝に坐し、左足を引いて膝に抜合う、相手より上段に振り冠り打込んで来るのを、我は右足を左足に引き付け刀を上に突き上げる様に相手刀を摺り上げ落とし上段に振り冠り踏み込んで真向に打込み勝。

 古伝の位弛では「或は・・」以下の業は現在では見る事の無い動作です。別の業とも思えるのですが、心持ちは同じと言えます。
 刀を体すれすれに引き上げる様に切先下りに抜き上げて相手の打ち込みを右足を引いて間を外すや打込む、相手が深く討ち込んで来た場合は上に抜き上げた表鎬で摺り落してしまうわけです。
 大森流(正座の部)逆刀(附込)の「向より切て懸るを先々に廻り抜打に切・・」の動作の仕組みとなります。

 或は以下は、双方抜き合せた所よりの変化です。「太刀を上へはずし」をどのようにするかがこの間合いでの応じ方でしょう。
 「位弛(くらいゆるみ)」弛は、はずす事ですから、我が体を打ち間から外す事が大切です。

嶋 専吉先生による第19代福井春政先生の「位弛」
 「仕太刀は納刀其の位置に在て立膝。打太刀は五歩退きて立姿のまゝ一旦納刀の後、改めて抜刀左上段の構へ。
 但し帯刀より前進中抜刀するも苦しからず、此場合発足即ち右歩にて抜刀、次の左歩にて上段に冠り、続いて前進のこと。

 打太刀上段にてスカスカと前進し拝み撃に仕太刀の真向に打下す、仕太刀は打太刀の刃が将に己が頭に触るゝ位にて其刹那、敏速に左足より一歩体を退きつゝ刀を抜きて、スッカリと立ち打太刀に空を打たせ直に右足を一歩踏み込み上段より打太刀の面を撃つ。
刀を合はせ各五歩退き血振ひ納刀。
但し次の業例へば「燕返」に移る如き場合打太刀は後方に退らず、その位置に止るも苦しからず
。」

 この場合も古伝の「或は前の如く抜合たる時相手より打を我も太刀を上へはづし真向へ打込み勝」の新たな業は伝承されて居ません。
 神傳流秘書が江戸末期から明治以降に書物で伝承されなかった為と考えてもおかしくないものです。

 「位弛」の敵の切り込みを外し抜き打つ場合、演武を見ていますと、空を切った打太刀は、頭を下げ「さあ、此処へ打込んでください」とばかりの態勢です。そんな稽古を繰返しても意味は無さそうです。外すと打つが一拍子、あるいは外して筋を替えて打つ二拍子。敵も空を切って打たれるのを待つ体制は詰合を「奥」と心得れば如何に・・。

 

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2018年2月 8日 (木)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位5鱗形

曽田本その1
3業付口伝読み解く
 
2、詰合之位
 
五本目鱗型(仕打 納)
坐リ方同前左足ヲ一足引キテ抜合ス也其時敵スク二我面へ上ヨリ打ツ也我モスグ二太刀ノ尖ヘ左ノ手ヲ添へテ十文字二請テ左ノ足ヲ踏ミ込ミ摺込ミ勝也刀ヲ合セ血振ヒ納刀
読み
五本目鱗形(うろこがた)
 座り方同前 左足を一足引きて抜合す也 其の時敵直ぐに我が面へ上より打つ也 我も直ぐに太刀の切尖へ左の手ヲ添へて十文字に請けて左の足を踏込み勝也 刀を合わせ血振い納刀
古伝神傳流秘書詰合五本目鱗型
如前抜合せ相手打込むを八重垣の如く先に左手を添え請留直に敵の太刀を摺落し胸をさす也
読み解く
 座り方は前と同じ様に、刀を鞘に納め立膝に双方詰合って座す。
 敵の起こりを察して我は左足を引いて抜き打ちに敵の膝に抜きつけ、敵も同様に左足を引いて是を膝前で相打ち。
 敵すぐに左足を床に着け上段に振り冠り右足を踏み込んで真向に打ち下ろす。
 我は左足を床に着け太刀の切先に左手を添え前額上に十文字に刃を上にして是を請ける。ここまでは4本目八重垣と同様です。
 我は左足をやや左に踏み込んで切先に左手を添えたまま敵刀を右腋に摺り落とし切先を敵喉に付けて勝つ。
 青眼になり、切先を合わせ血振納刀。

 敵太刀を十文字に請けるや、即座に左足を踏み込み左半身となって敵刀を請けたまま右手を右脇に下げ敵刀を摺り落とし詰める。ここがポイントです。

神傳流秘書 詰合 五本目鱗形

 如前抜合せ相手打込むを八重垣の如く切先に左手を添え請留直に敵の太刀を摺落し胸をさす也(2014年11月11日)

 前の如く抜き合せ、ですから是も居合膝に相対し、相手より左足を引いて右足に抜き付けて来るのを請け止め、上段に振り被らんとする処、相手左足を右足に引き付け右足を踏み込んで真向に打込んで来る。
 我顔前頭上にて切先を左にして左手を添えて十文字に刃で請ける。
 左足を踏み込み十文字請けした交点を軸にして、左手を相手の顔面に摺り込む様に、相手太刀を右下に摺り落とし、相手の胸に詰める。

 詰合の一本目発早の場合は、双方膝前で抜き合せ、我れが先んじて上段から真向に打ち込んで勝ちを制しました。
 今度は相手が我が真向に打ち込んで来るのです。一本目で勝ち口を理解しないまま、此の五本目鱗形にしてようやく仕組みが申し合わせの棒振りではならない事を気付かせてくれる良い業です。

 十文字請けの方法をどの様にするかは、簡単に「切尖へ左の手を添えて」しか表現されていません。
 切尖は切先ですが、物打ち辺りに拇指と食指の股に刀の棟を当て四指を敵の方に刀の外にして添える様に指導される様ですが、是で良いのでしょうか。
 拇指と食指の股から小指の下の膨らみへ斜めに刀棟が乗る様に添える事も研究すべきでしょう。
強い打ち込みを想定すれば左手の添え方は充分考慮すべきものです。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の 鱗形

「前同様に抜合せ打太刀は右より進み仕太刀の面上に打下すを仕太刀左足より体を退き左手を棟に添へて頭上十文字に請け止め続いて左足を一歩踏込み(この時右跪となり)左手を刀に添へたるまゝ対手の刀を己が右方に摺り落しながら喉を刺突の姿勢となる。
此の時打太刀は左足より体を退き刀を左方に撥ね除けられたるまゝ上体を稍々後方に退く。
次で刀を合せ血振ひ(若し続て次の「位弛」を演ずる場合は打太刀は五歩後方に退きて血振ひ)納刀す。


 この(若し・・)の括弧書きを読んでいますと、形を演武会向けに打つ事を意図しているようです。
 打太刀が五歩下がって血振いでは、仕太刀は其の間、其の位置で正眼に構えて座して居る事になります。

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2018年2月 6日 (火)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位4八重垣

曽田本その1
3業付口伝読み解く
2、詰合之位
 
四本目八重垣(仕打 納)
 是モ同シク詰合て坐し前ノ如ク左足一足引テサカサマ二抜合也 敵其侭我面ヲ打テクルヲ我又太刀ノ切尖へ左手ヲ添ヘテ面ヲ請クル也 夫レヨリ立テ敵スク二我右腋ヲ打ツツヲ我其侭刀ヲ右腋二サカサマ二取リテ此ノ時右足ヲ一足引キ請ケ留ル也 敵又立チテ左ノ脇ヲ打チ来ルヲ我又左足ヲ一足引キテ左脇ヲ刀ヲ直二シテ請ケ止ムル也 敵又上段ヨリ面へ打チ来ルヲ我又右足ヲ引キテ上ヲ請テ敵カムル処ヲ我右足ヨリ附込ミ勝也刀ヲ合セ原位置二帰リ血振納刀
読み
 是も同じく詰合て坐し前の如く左足を一足引きて逆さまに抜合也 敵其侭我が面を打ちて来るを我が太刀の切尖へ左手を添えて面を請くる也 夫れより立ちて敵直ぐに我が右腋を打つを 我其の侭刀を右腋に逆さまに取りて 此の時右足を一足引き請け留むる也 敵又立ちて左の脇を打ち来るを 我又左足を一足引きて左脇を刀を直にして請け止むる也 敵又上段より面へ打ち来るを 我又右足を引きて上を請けて敵冠る処を我右足より附込み勝也 刀を合わせもとの位置に帰り血振納刀
古伝神傳流秘書詰合四本目八重垣
 如前抜合たる時相手打込むを我切先二手を懸けて請又敵左より八相二打を切先を上二して留又上より打を請け相手打たむと冠を直耳切先を敵の面へ突詰める(我切先二手を懸希て請け敵右より八相二打を切先を下げて留又敵左より八相二打を切先を上二して留又上より打を頭上尓て十文字に請希次二冠るを従て突込むもあり 曽田メモ)
読み
八重垣(やえがき)
 前の如く 抜き合いたる時 相手打込むを我れ切先に手を掛けて請け 又 敵左より八相に打つを切先を上にして留める 又 上より打つを請け 相手打たんと冠るを直に切先を敵の面へ突き詰める
 (我れ切先に手を掛けて受け 敵右より八相に打つを切先を下げて留め 又
 敵左より八相に打つを切先を上にして留め 又 上より打つを頭上にて十文字に請け 次に冠るを従いて突き込むもあり 曽田メモ) 
読み解く
なぜか、大江先生の正座の部五本目八重垣の業名はこの詰合から取ったものでしょう。元は大森流陽進陰退が業名ですが、重信流の詰合を無視して「八重垣」の業名を正座の部の五本目に当てる意義はあったのでしょうか。

 双方居合膝に座し、相手左足を引いて下に抜きつけるを我も左足を引いてこれを下に請ける。
 相手即座に右足を左足に引付右足を踏み込んで真向に打ち込んでくるを、我左足、右足と引いて、切先に左手を添え顔面頭上にこれを十文字に請ける。
 相手再び上段に振り冠って左足を踏み込んで我が左胴に八相に打ち込んでくる。我右足を引いて切先を上にし柄を下にして左脇にこれを刃で請ける。
 相手さらに、上段に振り冠って撃ち込んで来るを、左手を切先に添えたまま顔前頭上に受ける。
 相手又、撃ち込まんと上段に振り冠る処、我すぐに右足を踏み込み切先を相手の面に突き詰める。

 神傳流秘書は、下で合わせ、十文字に上で請け、左脇で請け、再び頭上に十文字に受け、直ぐに突き詰めるのです。
 曽田先生のメモは、下で合わせ、十文字に上で請け、右脇で請け、左脇で請け、又十文字に上で請け、直ぐに突き詰める。と云うのも有りと括弧書きで挿入されています。これは江戸末期の八重垣がその様に変わって来ていたのでしょう。

 何度でも撃ち込まれて稽古するのも良いのですが機を捉えて反撃する事も学ぶ例でしょう。

 古伝の稽古では、下で合わせ、十文字受けして、次は相手次第で右か左に受けるのもありでしょう。
*

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の八重垣

 「是も同じく詰合ひ対座より左足を一歩退きて倒か様に抜合はせたる後、打太刀は右より進み左跪にて仕太刀の正面に打込み来るを仕太刀左より体を少しく退き左跪にて剱尖を左方に左手を棟に添へて頭上十文字に請止む。
続て打太刀、左足を一歩進め(打太刀は一応立ち上り左足を一歩進め右膝を跪きて)仕太刀の右脇に打込むを仕太刀右足を一歩退き刀を倒か様にとりて(左手を棟に添へたるまゝ刀を体に近く剱尖を下方に略々垂直にして)右跪にて請止む。
打太刀更に立ちて一歩右足を進め左跪にて仕太刀の左脇に打込み来るを仕太刀左足を一歩退き刀を直にとりて(左手を棟に添へ剱尖を上に刀を垂直にし)脇近くに之を請留む(左跪)。
打太刀更に右足より進みて上段より正面へ打ち込むを仕太刀は右足を一歩退き左手を棟に添へて再び頭上十文字に請け止め次で打太刀右足を退き振冠るところを仕太刀右足を一歩進め附込み打太刀の喉を突く。
(この際打太刀の左膝と仕太刀の右膝とは相接する如く向ひ相ふ)
次で刀を合せ原位置に復し血振ひ納刀す。」

*(この際打太刀の左膝と仕太刀の右膝とは相接する如く向ひ相ふ)に注目すると、仕太刀は深く打太刀に附け入って詰める事になります。
第19代の詰合は古伝の神傳流秘書とは事なり、業附口伝に添う様です。
業附口伝は、曽田先生が「田口先生のご指導と実兄(五藤先生の高弟土居亀江)の口伝よりあらましを記したり」です。

 

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2018年2月 4日 (日)

曽田本その1の3業附口伝読み解く2詰合之位3岩波

曽田本その1
3業附口伝読み解く
2、詰合之位
 
三本目岩波
 詰合テ坐スル也前ノ如ク左ノ足一足引テサカサマ二抜合セ敵ヨリスグニ我右ノ手首ヲ左ノ手二テトル也我其侭敵ノ右ノ手首ヲ左ノ手二テ取リ右手ヲ添ヘテ我左ノ脇へ引倒ス也刀ヲ合セ血振ヒ納刀(□方右手ヲ添エル時刀ヲ放シ直二相手ノひぢヲトルナリ)
読み
三本目岩波(いわなみ)
 詰合て坐する也 前の如く左の足一足引て逆さまに抜合せ 敵よりすぐに我が右の手首を左の手にて取る也 我れ其の侭敵の右の手首を左の手にて取り 右手を添へて我が左の脇へ引き倒す也 刀を合わせ血振い納刀
 (□方右手を添える時 刀を放し直ぐに相手の肘に取るなり)

参考
古伝神傳流秘書詰合三本目岩浪
 拳取りの通り相手より拳を取りたる時我よりも前の如く取り我が太刀を放し右の手尓て敵のひぢのかゞみを取り左脇へ引た保春
*
読み
三本目岩浪(いわなみ)
 拳取の通り相手より拳を取りたる時 我よりも前の如く取り 我が太刀を放し 右の手にて敵の肘のかがみを取り 左脇へ引き倒す
読み解く
 双方下に抜きつける処、今度は相手が先に我が拳を制してくる。
 引き落とされる前に我も即座に相手の拳を取り、拳を取られた右手の太刀を放すと同時に右手を後ろに引くや相手の手を外し、相手の右手の肘のかがみに右手を付け左脇へ引き倒す。業附口伝では相手に取られた右手は「我れ其の侭敵の右の手首を左の手にて取り 右手を添へて」と我が右手の動作があいまいです。古伝の様に我よりも前の如く取り我が太刀を放し右の手尓て」としておきます。
 後はどの様に制するかは指定がありません。顔面を、水月を、金的を拳で打つもあり、脇差を抜いて突くもありでしょう。
 

 此の業を演ずるのを見ていますと、打太刀が遣方の右手首を先に取っているだけで、遣方が右手を取りに来るのを待っているような仕方がまま見られます。
 ゆっくり順番通り稽古するのは当然ですが、打太刀が二本目の拳取の如く拳を取るや下に制されると、遣方は手も足も出ません。
 遣方はどのタイミングで応じるのか、二本目の稽古を生かす事はできるのかなど課題を持ちませんと意味のない踊りです。
 知ったかぶりで、「申し合わせだから」では、稽古する意味はありません。演武会の見世物を演じるのがせいぜいの事ならば上手に順番通り踊って居ればいいでしょう。

嶋 専吉先生による、第19代福井春政先生、田岡 傳先生の詰合之位「岩浪」

 「前と同様に抜合わせたる後、打太刀左膝を跪き左手にて仕太刀の右手首を把る、仕太刀も亦之に応じて打太刀の右手首を捉へ右手に在る刀を放ち右拳を(稍々内側に捻る心地にて)対手の掌中より奪ひ之を内側より相手の右上膊部に添へて己が左脇へ投げ倒すなり。次で刀を合はせ左跪坐にて血振ひの後納刀すること前と同様なり。」

 前と同様に「双方左足を一歩後方に退きて立ち上ると同時に互に対手の右脛に斬り付くる心にて(剣先を下方に)抜き合す」ですから双方右足前、左足を後ろに退いて立って抜き合わせて居ます。
 「打太刀左膝を跪き」仕太刀の右手首を取っています、ここは、打太刀の左足を仕太刀の右足側面に踏込んで左膝を付かなければ、手首を制する事は難しそうです。
 二本目の「拳取」で仕太刀は「抜き合せ続いて仕太刀は迅速に左足をその斜左前即ち対手の右側に踏込み・・打太刀の右手首を・・」と、同じ事を打太刀にさせるべきかと思いますがそのように指導されたのでしょう。
 打太刀が、仕太刀の右手首を取って左膝を踏み込んで床に着けば容易に仕太刀は制せられてしまいそうです。
 17代に指導された儘を覚書されたのでしょうから、そのまま否定せずに稽古して見ますが、仕太刀も跪いて応じませんと反対にねじ倒されそうです。

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