曽田本その1の3業附口伝読み解く3大小詰

2018年3月 8日 (木)

曽田本その1の3業附口伝読み解く3大小詰8山影詰

曽田本その1
3業附口伝原文
3、大小詰
八本目山影詰
 打ハ仕ノ後ロ二坐ス後ヨリ組付也其時仕ハ頭ヲ敵ノ顔面二當テ敵ヒルム隙キ二我刀ヲ抜キテ打ノ組タル手ヲ切ル也
 (五藤先生ハ一當シテ仰向二ソリカエルト記セリ)
 後ロヨリ組附頭ニテ一當テシテ仰向二ソリカエル
 
読み
八本目山影詰(やまかげづめ・やまかげつめ)
 打は仕の後ろに座す 後より組付也 仕は頭を敵の顔面に当て 敵怯む隙に我が刀を抜きて打の組みたる手を切る也
 (五藤先生は一当てして仰向けに反り返ると記せり)
 後より組附き頭にて一当てして仰向けに反り返る
 
古伝神傳流秘書大小詰八本目山影詰
 是は後より相手組を刀を抜き懸其手を切ると一緒に我も共に後へ倒るゝ也
 以上八本
読み
 是は 後より相手組むを 刀を抜き懸かり其の手を切ると一緒に 我も共に後ろへ倒るゝ也
 以上八本
読み解く

 曽田先生の手附で業は充分理解できます。細かいところですが、打・仕と言っておきながら敵・我と出てくるので「おや!」と思ってしまいますが、校正しているものではなく曽田メモですから意味が通じればいいでしょう。

 打は仕の後ろに双方立膝に坐しいる、打は腰を上げ仕の後ろから両手を廻し仕の左右の上腕を羽交い絞めにする。
 仕は即座に後頭部で打の顔面を打つ、打がひるむ隙に太刀を抜いて打の組み付いている手を切る。
 (後藤先生は、顔面に後頭部で一当てして仰向けに反り返って打の組み付を外す。)

神傳流秘書大小詰八本目山影詰
 後ろから相手が抱き着いて我が両腕を絞めして来る時、刀を抜き上げて組み付いている相手の手を切りその拍子に後ろに相手と一緒に押し倒れる。

 後ろから両肘の辺りをがっちり羽交い絞めされたら、刀は抜き出せません。やはり顔面当ては稽古から外せそうもありません。
 不意の羽交い絞めか、我が刀に手を掛けたのを制せられたのか、この場合は神傳流秘書は何も言って居ません。状況はいろいろでしょう。

 これらの形は、「かたち」を学んで実戦に役立つものにしませんと、喧嘩慣れした暴漢には勝てない。
 申し合わせの「かたち」では演舞(武)会の余興です。

 一つの業から何通りもの変化を場に応じてこなせる様に修錬するものでしょう。師匠に習った方法だけがすべてで、他所で見聞きしたものを「違う」と言って否定するのは心得違いです。
 古伝を学ぶ時は、まず書かれている文章の通り動作を付けて見るべきで、抜けた部分は想像するのですが、尤も自然な続きの動作を模索すべきで決めつけてしまうと古伝では無くなってしまいます。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小詰八本目山影詰
「打太刀は仕太刀の後ろに坐す。打太刀、仕太刀の後より組みつく、その時仕太刀は頭を打太刀の顔面に當て打太刀の怯む隙に己が刀を抜きて打太刀の組みたる手を切るなり。
(五藤先生は「一と當てして仰向に反り返へる」と記せり)。」

 この、嶋先生の文章の括弧の部分は曽田先生のメモ書きそのものです。
やはり、18代穂岐山先生・19代福井先生・20代河野先生いずれも、谷村派の組太刀は伝書に依る伝承はされず、下村派の曽田虎彦先生の写された伝書に基づいて稽古されたと云う事が実態だったと判断できます。

以上で大小詰八本の業は終了です。

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2018年3月 6日 (火)

曽田本その1の3業附口伝読み解く3大小詰7左伏

曽田本その1
3業附口伝読み解く
3、大小詰
七本目左伏
 右伏ノ反対業也
 (左脇二坐ス右手胸ヲ取リ其手ヲ押へ前へ伏ル 五藤正亮先生の教示)
読み
 右伏の反対業也
 (左脇に坐す 右手胸を取り其の手を押へ前に伏せる 五藤正亮先生の教示)
六本目右伏
 打ハ仕ノ右側二並ヒテ坐ス打左手ニテ仕ノ胸ヲトル仕ハスグニ其ノ腕ヲ巻キ込ミ逆手ヲトリ前二伏セル也
 (右腋二坐ス左手ニテ胸ヲトリ来ル其手ヲ押へ伏セル 五藤正亮先生ノ教示)
読み
六本目右伏(みぎふせ・みぎぶせ)
 打は仕の右側に並びて坐す 打左手にて仕の胸を取る 仕は直ぐに其の腕を巻き込み 逆手を取り前に伏せる也
 (右腋に坐す 左手にて胸を取り来る 其の手を押え伏せる)
七本目左伏
 組み立てます。
 打ハ仕ノ左側二並ヒテ坐ス打右手ニテ仕ノ胸ヲトル仕ハスグニ其ノ腕ヲ巻キ込ミ逆手ヲトリ前二伏セル也
 (左腋二坐ス右手胸ヲトリ来ル其手ヲ押へ伏セル 五藤正亮先生ノ教示)
読み
六本目右伏(みぎふせ・みぎぶせ)
 打は仕の左側に並びて坐す 打右手にて仕の胸を取る 仕は直ぐに其の腕を巻き込み 逆手を取り前に伏せる也
 (左腋に坐す 右手にて胸を取り来る 其の手を押へせる)
古伝神傳流秘書大小詰七本目
 是は左の手を取る也事右伏二同左右の違計也尤も抜かんと春る手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇つ保へ當り又留られたる手を此方より取引倒春事も有也
読み
古伝神傳流秘書大小詰七本目
 是は 左の手を取る也 事 右伏に同 左右の違計也 尤も抜かんとする手を留められたる時は 柄を放し身を開きて脇つ保へ當り 又 留られたる手を此方より取引倒す事も有也
読み解く

打は腰を上げて右に振り向き右足を右前に踏み込んで仕の胸を右手で取る。仕はすぐに腰を上げつつ打の右手肘を左手で巻き込んで右手で打の手首を取り逆手を取って打を前に俯けに倒す。

 古伝神傳流秘書大小詰七本目左伏
是は左の手を取る也事右伏に同左右の違計也尤も抜かんとする手を留められたる時は柄を放し身を開きて脇つぼへ當り又留られたる手を此方より取引倒す事も有也

 前回の右伏の逆でしょう。我が左側に相手は並び座すとします。
相手腰を上げ我が左手を取る。我右手を相手の斜めに首筋から廻し胸を取り身を開いて左に押し伏せる。

 我れが抜かんとして柄に右手を懸けているならば其の右手首を相手に取られて抜かさない様に押し付けて来る。
 我は此の時柄手を放し、左足を引いて左に開き、鍔を持つ左手で相手の脇坪に柄頭で打ち当てる。又、柄手を留められた場合、柄手を放し相手の手を取り左手を相手の肘に懸け体を開き引き伏せる事も有。

右伏・左伏も状況に応じて臨機黄変に対処する事を教えている様です。

古伝は、流の奥義を悟られない様に抜けだらけの文言が通例と聞いていますが、寧ろ微細な業技法に拘らず千変万化の動作を要求している様に思えます。

現代居合は、昇段審査や競技大会の審査に容易な様に限られた技法を突き詰めてしまい
古伝の大らかな奥深さを忘れています。

武術は形ではない、と古流剣術の先生から強く指摘されます。現代居合が形にこだわり振り冠りの角度は・・、など些細な処に目を付けるほどの事ばかりをしています、武的美を求める競技の様になってしまいます。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小詰七本目左伏
「(右伏の反対の業なり)」

 



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2018年3月 4日 (日)

曽田本その1の3業附く伝読み解く3大小詰6右伏

曽田本その1
業附口伝読み解く
3、大小詰
六本目右伏
打ハ仕ノ右側二並ヒテ坐ス打左手ニテ仕ノ胸ヲトル仕ハスグニ其ノ腕ヲ巻キ込ミ逆手ヲトリ前二伏セル也
 (右腋二坐ス左手ニテ胸ヲトリ来ル其手ヲ押へ伏セル 五藤正亮先生ノ教示)
読み
六本目右伏(みぎふせ・みぎぶせ)
 打は仕の右側に並びて坐す 打左手にて仕の胸を取る 仕は直ぐに其の腕を巻き込み 逆手を取り前に伏せる也
 (右腋に坐す 左手にて胸を取り来る 其の手を押え伏せる)
古伝神傳流秘書六本目右伏
 我右の方に相手並ひ坐し柄を取られたる時直に我右の手を向の首筋(後)より廻し胸を取り押伏せんと春るに相手いやと春くはるを幸に柄を足に懸て後へ投倒春 又抜かんと春る手を留められたる時も右の通り二取倒春
読み
 我が右の方に相手並び坐し 柄を取られたる時 直ぐに我右の手を向こうの首筋(後)より廻し胸を取り 押し伏せんとする 相手嫌とすくばるを幸いに柄を足に懸けて後ろへ投げ倒す  
 又 抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取り倒す
読み解く

 大小詰の六本目は右伏、七本目は左伏です。打の坐す位置が右か左か、打が仕の胸を取る手が左か右かの違いになります。ここは「右伏」です。
 打は仕の右側に並び、小太刀を差して立膝に坐す。
 仕は打の左側に太刀を差して立膝に坐す。この仕打の間隔はどれくらいでしょう。通常畳一枚に2名の割付で座ります。向き合った場合は凡そ膝頭の間隔で2尺~3尺でしょう。横は1尺~2尺位そんなものでしょう。

 打は腰を上げて左に振り向き右足を左前に踏み込んで仕の胸を左手で取る。仕はすぐに腰を上げつつ打の左手肘を右手で巻き込んで左手で打の手首を取り逆手を取って打を前に俯けに倒す。

 打は、腰を上げるとすぐに右足を踏み込んで廻り込み、習い性で右手で仕の胸を取りに行ってしまいます。何故左手なのでしょう。仕の胸を左手で取り右手で小太刀を抜かんとする処を引き伏せられる。かな・・。

 この業附口伝の右伏は古伝神傳流秘書では想定が違います。

神傳流秘書大小詰六本目右伏
 我右の方に相手並び坐し柄を取られたる時直に我右の手を向の首筋へ後より廻し胸を取り押伏せんとするに相手いやとすくばるを幸に柄を足に懸て後へ投倒す又抜かんとする手を留められたる時も右の通りに取倒す

 我が右側に相手は並んで坐す。
 相手右手(左手でもいいでしょう)を伸ばして我が柄を取る、我直ぐに右手を相手の首筋へ後ろから廻し相手の胸を取り、押伏せようとすると、相手押し伏せられまいと柄を放して力を入れて反り返ってくるを幸い、柄を反り返って浮いた左膝下に懸けて後ろへ投げ倒す。
 又、我が抜こうと柄に手を懸けた時に、相手が我が柄手を取り右から押し付けてくる時も、我は柄手を放し相手の首筋に右手を後ろから廻し胸を取り押伏せる、相手は押伏せられまいと後ろに反り返ろうとするのを幸いに、浮いた相手の左膝下に柄を懸け後ろに投げ倒す。

 又、以降の相手に「抜かんとする手」を止められるとは、右柄手を制せられたのでしょう。柄手を放して相手の首筋に右手を懸けるのは聊か難しい。

 この曽田先生の業附口伝の手附は古伝神傳流秘書の業技法とは異なります。
 相手は我が柄では無く左手で我が胸を取る、我は直ぐに其の相手の左腕に右腕を上から巻き込み左手で相手手首を逆手に取り前に押し倒す。

 古伝は柄をとるのを、右手、左手どちらとも云って居ません。五藤先生のでは左手で胸を取る。首に巻くのではなく、五藤先生は取に来た左腕を逆手に取って制しています。

 曽田先生の業附口伝は古伝神傳流秘書の成立から大よそ100年弱経っているのですから、業技法も変化するのでしょう。
 神傳流秘書は特定の人しか見る機会はなかったとも思えますから、口伝・口授などではどんどん変わってしまうでしょう。

 高知県の無双直伝英信流、夢想神伝流の修行をされる方々が旧家を訪ねて探し求める以外に此の事は解らない儘に終わるでしょう。
 先の大戦で高知市は空爆で火の海だったので、火を免れた周辺の旧家を歩く以外に無さそうです。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生に依る大小詰六本目右伏
「打太刀は仕太刀の右側に並びて坐す。打太刀左手にて仕太刀の胸をとる、仕太刀は直にその腕を巻き込みて逆手をとり前に伏せるなり」

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2018年3月 2日 (金)

曽田本その1の3業附口伝読み解く3大小詰5胸捕

曽田本その1
3業附口伝読み解く
 
3、大小詰
 
五本目胸捕
 互二對坐打ハ仕ノ胸ヲ捕りテ突ク仕スグニ右手ニテ支エ左手二持タル柄頭ヲ敵ノ脇坪二當テル也又胸ヲ捕リテ引ク時ハスグニ刀ヲ抜キテ突ク也
(向ヲテ居ル右手ニテ胸ヲトリ突ク時ハ其手ヲヲサへ左手ニテ脇坪へ當ル 五藤正亮先生ノ教示)
読み
五本目胸捕(むねとり・むなとり)
 互に対坐 打は仕の胸を捕りて突く 仕直に右手にて支え左手にて持ちたる柄頭を敵の脇坪に当てる也 又胸を捕りて引く時は直ぐに刀を抜きて突く也
(向こうて居る 右手にて胸を取り突く時は 其の手を押え 左手にて脇坪へ当てる 五藤正亮先生の教示)
古伝神傳流秘書大小詰五本目胸留
 詰合たる時相手我胸を取り突倒さんと春る時我右の手尓て其手を取り左の足を後へ引柄頭尓て相手の脇へ當る又引く時は随而抜突く也

読み
古伝神傳流秘書大小詰五本目胸留(むねとめ・むなとめ)
 詰合たる時 相手我が胸を取り突き倒さんとする時 我右の手にて其の手を取り 左の足を後ろへ引き 柄頭にて相手の脇へ当てる 又 引く時は随って抜き突く也
読み解く

 互いに立膝で座している、打が腰を上げて右手で仕の胸を取って突いてくる。仕は右手で倒されまいとして支え、左手で柄頭で敵の脇坪に突き当てる。
又、敵が胸を取って引き込もうとする時はすぐに刀を抜いて突く。

 胸を取られて突き倒されそうなので右手で支え(十六代五藤先生は敵の右手を押える)、左手で柄頭を以て敵の脇坪に当てる。五藤先生は左手で敵の脇坪を突くでした。
 想定が抜けていますからそれを加味しておけば、我は刀を抜かんと左手を鯉口と鍔に取る処、敵は我が胸を捕り突いてくるので敵の手を押さえ左手で持ちたる柄頭で脇坪に当てる。
 脇坪は脇の下の窪んだ所でしょう。

 敵が胸を取って引っ張り込まれる時、太刀を抜いて突くのは敵との間隔が近すぎれば、敵の手を振り払って、左足を後方に引くなりして間を取って抜き出し突くでしょう。
 敵が胸を取って突き倒そうとしたが我は右手で支えて堪えるので、敵は手を離し後ろに引くならば容易に太刀を抜き突く事も出来そうです。

 柄当てと、太刀を抜いて突くのを別々にして二つの業をとらえましたが、ここは、我が左手を刀に掛ける処、敵に胸を取られて突き倒されそうになるので右手で支え踏ん張り、左手で鯉口と鍔を持ちたる柄頭で敵の脇坪に打ち当てる。
 敵怯んで引く所を右手を柄に取り左足を引き、鞘を引いて太刀を抜き切っ先を返して敵の胸を突く。
 この方が業らしいのですが、業手附に忠実に従って稽古した上で見直すべきでしょう。

神傳流秘書 大小詰 五本目胸留
詰合たる時相手我胸を取り突倒さんとする時我右の手にて其手を取り左の足を後へ引柄頭にて相手の脇へ當る又引く時は随って抜き突く也

 詰め合って座している時、我が鍔に手を掛けるや、相手は腰を上げ右足を踏み込んで我が胸を右手で取り、突き倒そうとする。
 我も腰を上げ右手でその手を取るや左足を後方に退き柄頭を以て相手の脇腹にあてる。 又、左足を引くに従って刀を抜出し、切っ先を返して抜き突く。

 この場合は、相手に我が胸を取らせたまま、押されて退くのに従って、左手で持つ刀の柄頭で相手を突くでしょう。
 又は、相手が我が胸を取り突き倒そうとして、我に防がれ敵が後へ引くに従って刀を抜き突く。

 業は二つのようにも読み取れます。
「・・柄頭にて相手の脇へ當る、又相手引くに随って突く也」。「又」を「別に」とするか「それから」とするかですが、ここは一つの業として演じる方が良いのでしょう。

嶋 専吉先生の第19代福井春政先生の大小詰五本目胸留
「互に対座す。打太刀は仕太刀の胸を捕へて突く、仕太刀直に右手にて支へ左手に持ちたる柄頭を打太刀の脇坪に當てるなり。又胸を捕りて引くときは直に刀を抜きて突くなり。

 嶋先生の写されたものは曽田先生の業附口伝と同じものです。省略しても良いでしょうが、「福井先生御所蔵の文献をそのまゝ拝借謄写して他日の研究を期すことゝし・・」と「はしがき」に記されています。
 出処は曽田虎彦先生の業附口伝と想像しますが、是が曽田先生の元本かも知れませんので引続き載せて行きます。

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2018年2月26日 (月)

曽田本その1の3業附口伝読み解く3大小詰3柄留

曽田本その1
3業附口伝読み解く
 
3、大小詰
 
三本目柄留
 打ハ仕ノ右側二並ヒテ坐ス仕ノ抜カントスル柄ヲ留ム仕ハ右手ヲ頸二巻キ敵ヲ前二倒サントス打倒サレマジト後二反ル其ノ時スグニ仕ハ打ノ体ノ反リテ前足ノ浮キタル下ヨリ(膝)柄ヲカケテ後へ倒ス力ヲ添フル也
(右向二坐ス抜カントスル柄ヲトル我右手ニテ首ヲマキ前ヘ押ㇲ敵後トへソル二付後へ倒ス其時柄ヲ足へカケ倒ス也)
読み
三本目柄留(つかどめ)
 打は仕の右側に並びて坐す 仕の刀を抜かんとする柄を留む 仕は右手を首に巻き前に倒さんとす 打倒されまじと後ろに反る 其の時直に仕は打の体の反りて前足の浮きたる下より(膝)柄を懸けて後ろへ倒す力を添うる也
 (右向きに坐す 抜かんとする柄を取る 我右手にて首を巻き前へ押す 敵後へ反るに付き後へ倒す 其の時柄を足へ懸け倒す也 後藤教示)
古伝神傳流秘書大小詰三本目柄留
 抱詰の通り両の手尓て柄を取り下へ押付られたる時向の脇の辺りへ拳尓て當扨我右足尓て相手の手を踏み柄をもぐ常の稽古尓は右の足を押膝尓てこぜもぐ
読み
古伝神傳流秘書大小詰三本目柄留
 抱詰の通り両の手にて柄を取り下へ押し付けられたる時 向うの脇の辺りへ拳にて当て さて 我が右足にて相手の手を踏み柄を捥ぐ 常の稽古には右の足を押し膝にて「こぜもぐ」
読み解く
 打は仕の右側に同じ方向を向いて坐す、仕は刀を抜かんとして柄に手を掛けようとする処、打は腰を上げ左向きに仕の方に振り向き右手で仕の刀の柄を抜かさない様に取り押さえる。
 仕は腰を上げ右に振り向き打の首に右手を巻き、打を前に倒そうと引き込むと打は倒されまいとして後ろに反る。打の反って右足が浮いた処へ柄を掛けて後ろへ倒す。

 是は神傳流秘書では右伏の業でしょう。やはり時代が変われば業も変化するようです。是は是、あれはあれで稽古すればよいのでしょう。

嶋 専吉先生の謄写した第19代福井春政先生の大小詰三本目柄留
 「打太刀は仕太刀の右側に並びて坐す。仕太刀の抜かんとする柄を留む、仕太刀は右手を頚に巻き打太刀を前に倒さんとす、打太刀倒されまじと後に反る、その時直に仕太刀は打太刀の体の反りて前足の浮きたる下より(膝)柄をかけて後ろへ倒す力を添ふるなり。」

*曽田先生の業附口伝そのままです。

神傳流秘書 大小詰 三本目柄留

 抱詰の通り両の手にて柄を取り下へ押付られたる時向のわきの辺りへ拳にて當扨我右の足にて相手の手を踏み柄をもぐ常の稽古には右の足を押膝にてこぜもぐ

 抱詰の様に相手が両手で我が柄を取って下へ押し付けられた時、我は相手の脇の辺りに右拳で打ち当て、相手が怯んだ隙に我が右足を踏み込んで相手の柄を取った手を踏み付け柄を捥ぎ取る。
 常の稽古では、相手の手を足で踏み付けるのは礼を失するので、右の膝で手を押し膝でこぜもぐ。
 「こぜもぐ」はよくわかりません。政岡先生は「無理して放す」とされていますがそんな感じでしょう。

 政岡先生の引用された伝書と少し文言が異なるので読ませていただきます。
「抱詰の通り両手にて柄をとり下へおしつけられたる時相手のあぎの辺りへ拳にて当て扨我が右足にて相手の手を踏み柄をもぐ常の稽古には右の足にて押膝にてこぜもぐ」
「あぎ」はあご、「もぐ」ははなす、「こぜる」は無理して動かす。

*政岡先生の方法は、顎のあたりに一当てするので脇の辺りと違いますが、古伝と一致します。

 江戸中期と末期の間に、この柄留が変わってしまったのか、大小詰の冒頭にある「是は業にあらざる故に前後もなく変化極りなし始終詰合居合膝に坐す気のり如何様ともすべし先大むね此順とする」とありました。

 

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2018年2月22日 (木)

曽田本その1の3業附く伝読み解く3大小詰1抱詰

曽田本その1の3
業附口伝原文
3、大小詰(朱書(括弧書)ハ五藤正亮先生ノ教示)
一本目抱詰
 互二對坐打ハ仕ノ柄ヲ両手ニテ取ラントススグニ仕ハ両手ニテ打ノ二ノ腕ヲ下ヨリ差シ上グル様二掴ミ我脇二引キ倒ス也
(向フテ居ル敵我刀ノ柄ヲ両手ニテ押付ケル時敵ノ両肘へ手ヲカケウスミ上ヶ左二振リ倒ス)
読み
大小詰(だいしょうづめ)
一本目抱詰(だきづめ)
 互に対座 打は仕の柄を両手にて取らんとす 直ぐに仕は両手にて打の二の腕を下より差し上ぐる様に掴み 我が脇に引き倒す也
(向こうて居る敵 我が刀の柄を両手にて押し付ける時 敵の両肘へ手を懸けウスミ(臼見)上げ左に振り倒す)
古伝神傳流秘書大小詰一本目抱詰
大小詰(是ハ業二あらざる故二前後もなく変化極りな之始終詰合位居合膝二坐春気のり如何様とも春べし先大むね此順二春る)
重信流
一本目抱詰
 楽々居合膝二詰合たる時相手両の手尓て我刀の柄を留る時我両の手を相手の両のひぢ二懸介て躰を浮上り(引て?)其侭左の後の方へ投捨る
読み
一本目抱詰
大小詰
 (是は業にあらざる故に前後もなく変化極りなし 始終詰合位居合膝に坐す 気乗り如何様ともすべし 先ず概ねこの順にする)
 楽々居合膝に詰合たる時 相手両の手にて我が刀の柄を留める時 我両の手を相手の肘に懸けて体を浮き上がり(引いて?)に其の侭左の後ろの方へ投げ捨てる
読み解く

嶋 専吉先生の写した第19代福井春政先生の大小詰一本目 抱詰
 「打太刀は仕太刀の柄を両手にて捉らんとす、
仕太刀は直に両手にて打太刀の二の腕を下より差し上ぐる様に掴み己が左脇に引き倒す。


 嶋先生の謄写された物は曽田先生の書かれた業附口伝と同じ動作です。


 打は小太刀を帯し、仕は太刀を帯して互いに立膝に座して対座する、打は腰を上げ仕の柄を取ろうと腰を上げ乗り出して両手を伸ばしてくる。
 仕はすぐ様、両手で打の二の腕を下から差し上げる様に掴み絞り込んで制し、腰を上げて打を浮かし左脇に引き倒す。

 五藤先生の教示では、打(敵)は仕(我)の柄を両手で取り押し付ける時打の両肘に両手で下からかけ「うすみ上げ」左へ振り倒す。すでに柄を取られて、押し付けられています。打の肘を両手で少し持ち上げる様に腰を上げて打を浮かし左へ振り倒す。

 我が柄を押さえ様と手を出してきたところか、すでに柄を取られたかの状況の違いです。
 どのように敵の両肘に手を掛けるのが最も有効でしょう。抱き詰めと言う業名を考えれば両腕で敵の両腕肘の辺りを抱き抱える様にするのが実戦では有効でしょう。ここでは業手附に素直に従って稽古します。


 大小詰は我は太刀を差し、敵は小太刀を差して居合膝(立膝)に座す。
そのようにするとは、指定されていません。然し大小詰の呼称から判断します。


 詰合之位は「神傳流秘書の詰合」に(重信流也是より奥之事極意たるに依って確実に稽古する也)とありますから、奥居合は立膝によると現代では常識となっています。
 さらに神傳流秘書の大小詰の括弧書きには(是は業にあらざる故に前後もなく変化極りなし始終詰合居合膝に座す気のり如何様ともすべしまず概ねこの順にする)とはっきり仕様を付けています。
 
 「詰」は詰め合って座すでしょう。立膝の詰め合いで双方の間隔は右爪先または左膝頭間で三尺位であまり広く取らないこと。畳一畳に二人が向き合って座すもっとも自然な位置取りでしょう。

 ここで、この大小詰は「打・仕」と「敵・我」を言い換えてあって前回までの詰合が「敵・我」とは異なる書き方が気になります。この手附は曽田先生が口伝によって書かれたもので太刀打之位・詰合之位とは違う参考文献に依っているかも知れません。是以後の手附はすべて「打・仕」の使い方です。

 五藤メモとした部分は第十六代五島孫兵衛正亮先生の教示であると、曽田先生の注意書きがあります。それでは「敵・我」であらわしています。曽田先生の手附と五藤先生の教示を対比しながら業を稽古していきます。



 詰合は、矢張り重信流と云う事で、奥の事として極意であるから格日(確実)に稽古するものと始めに有りました。
 双方太刀を帯して居合膝に坐したる時の攻防、或は立っての攻防でした。大小詰は相手は小太刀、我は太刀を帯します。

 此の大小詰は、「是は業にあらざる故」と云います。是は業では無いと云うのはどの様な事をさすのか解りません。
 刀を抜いて抜き打つ居合の業技法では無いと言うのでしょうか。内容から見て心得とは云い難いのですが、柔術でも剣術でも無く其の混合とでも言うのでしょうか。

 「前後もなく変化極りなし」は順番はどうでもいいから前後して稽古しても、状況に応じて変化極まりないと考えて工夫しろと言う様です。
 詰合では業を一本目から順次稽古する事で高度の業技法へ導いてくれます。従って順序をわきまえずに稽古するには相当のレベルに達する事も必要です。

 「始終詰合組居合膝に坐す」と座し方は双方詰合って組む。詰合うとは膝詰と云う様に双方の間隔は近く手を伸ばせば容易に相手の胸ぐらを掴める程でしょう。居合膝の名称が出ていますが、どの様であったかは不明です。
 片膝立ちした座仕方として置きます。此の頃すでに居合膝と云ったのか、この武術を習う人達の通称かも知れません。

 この業名は抱詰(だきずめ)でしょう。
 相手は小太刀を差し、我は太刀を差して向かい合って居合膝に坐す。「楽々居合膝に詰合たる時」の楽々をどのように解釈するのか、失伝した大小詰であり当然のようにその「楽々居合膝に詰め合う」仕方も失念しているのでしょう。

 「楽々」の書写が間違っていることもあるでしょうが、そのまま曽田先生に敬意を払って、相手をにっくき敵と意識する事無く貴人と接するが如く、さりとていたずらに緊張せずに作法に従って楽々居合膝に互いに接する。
 相手は腰を上げて、爪立つや我が刀の柄を両手で抜かさないように押えてくる。
 我は相手の両肘に下から両手を掛け絞り上げるように同時に腰を上げ、相手が浮き上がる処、左足を引き体を左に開いて左後方に投げ捨てる。

五藤先生は明治30年1897年に亡くなっています。
曽田先生は明治23年1890年生まれ、行宗先生に師事したのが明治36年1903年です。
曽田先生と五藤先生の直接の接点はありえないでしょう。

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