無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事

2020年6月22日 (月)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の資料

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の資料
 抜刀心持之事の手附に随い現代居合との関連を述べて来ました。その上で古伝の業は現代居合とは違う事を要求している事を指摘し「昔は」と云う先輩諸先生の昔を忍んでみました。多くの先輩諸氏の昔は、自分の思い付きの昔に過ぎず「師の誰々より指導を受けたものは」と云う先輩はまだましです。
 解説に当たり参考とさせていただいた資料を掲げておきます。

1、曽田本神傳流秘書
  抜刀心持之事
  大森流居合之事
  英信流居合之事
  etc
2、曽田本英信流居合目録秘訣
  外之物ノ大事
  上意之大事
  極意ノ大事
3、無雙直傳英信流居合兵法叢書 河野百錬
4、林崎抜刀術兵法夢想神傳重信流 木村栄寿著

5、剣道の手ほどき 大江正路監・堀田捨次郎共編
6、無雙直傳英信流居合兵法地之巻 政岡壱實
7、居合兵法無雙神伝抜刀術 尾形郷一貫心
8、居合道ーその理合と神髄 檀崎友影著
9、夢想神伝流居合道 山蔦重吉著

10、無雙直伝英信流居合術全 河野百錬著
11、無雙直傳英信流居合道 河野百錬
12、大日本居合道図譜 河野百錬

13、居合読本 中山博道校閲・太田龍峰著
14、居合詳説 山内豊健・谷田左一共著

15、全日本剣道連盟居合(解説) 全日本剣道連盟
16、無雙直伝英信流居合道解説第二巻 池田聖昂著

17居合の研究夢想神伝流奥伝 松峯達男著

18、土佐英信流居合 福留麒六著・宮本知次
19、道理を愉しむ居合道口座夢想神伝流 石堂倭文著

20詳解田宮流居合 妻木正麟著
21、柳生新陰流道眼 柳生延春
22、etc

 

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2020年6月21日 (日)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の22賢之事他

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の22賢之事
1の23クゝリ捨
1の24軍場之大事

抜刀心持之事22本目賢之事、23本目クゝリ捨
手附は有りません。

大江正路の奥居合立業に賢之事に相当する業は古伝に手附が無いので似た動作を特定不能です。
大江居合の奥居合、居業・立業と古伝無雙神傳英信流居合兵法を動作若しくは想定によって対比してみます。
1、 霞:向払
2、 脛囲:柄留
3、 四方切:四角
4、 戸詰:両詰
5、 戸脇:両詰の替業
6、 棚下:棚下
7、 両詰:向詰
8、 虎走り:虎走
9、 行連:行連
10、連達:行連
11、惣捲り:五方切
12、總留:放打
13、信夫:夜之太刀
14、行違:連達
15、袖摺返:行違(想定ちがい)
16、門入:なし
17、壁添:人中(想定ちがい)
18、受流:弛抜
19、20、21、暇乞:抜打上中下(手附なし)
20、なし:抜打
21、なし:賢之事
22、なし:クゝリ捨
23、なし:軍場之大事
24、なし:追懸切

 大江居合と古伝抜刀心持之事との対比では大江居合の奥居合に有って古伝に無いのは「門入」が相当します。檀崎先生、山蔦先生ともに
門入りは古伝の「隠れ捨」(たぶん「クゝリ捨」の事でしょう)としています。「賢之事」は「袖摺返」を当てています。私は大江先生の「袖摺返」は古伝の「行違」の想定違と判断しています。
 古伝の抜刀心持之事で業名があって手附の無い「賢之事」及び「クゝリ捨」が袖摺返と門入である確証が得られません。もう一つ山蔦先生は奥居合立業の十二本目に「両士引連」の業名で古伝抜刀心持之事「行違」の動作を充当しています。是も私の資料では確証が得られません。

1の24軍場之大事:具足のゆるきを取り押上る心得肝要也、故に着料の具足は押上られてものどにつかへざる様に仕置べきなり、高き所などより飛ぶ時おのづとのどにつかゆる事有るもの也、心得に有儀也。


  具足がゆるくて押し上がらない様に着なさいと云う教えの様です。具足については興味有る方にお任せしておきます。

 以上を以て古伝神傳流秘書抜刀心持を終ります。

 誰でも、無双直伝英信流や夢想神伝流を習いに行けば、大江正路流の居合を指導されます。どんなに夢想神伝流は無双直伝英信流と違うと云って見た所で、それは抜き付けの所作やフィニッシュの角度の違い程度のもので、その理合いも動作も似たようなもので、どちらも出来て当たり前でいいのでしょう。それは現代居合の奥伝を稽古して、古伝神傳流秘書の抜刀心持之事を研究して見れば明らかな事です。
 一本目「霞」の古伝は「向払」ですが、古伝は「向へ抜付返須刀に手を返し又払ひて打込ミ勝」だけの事で、あらゆる想定を自分で考えて稽古する様に「格を放れて早く抜く也重信流」と始めに添え書きされています。格とは形ですから、指導された初歩の想定動作に捉われずに稽古しなさいと言って居るわけです。
 教えられた形は、あくまでもその業のとっかかりの稽古業であり、現代風に見れば昇段審査の格に過ぎません。古伝の一行足らずの手附からあらゆる状況に応じられる修業を積まなければ武術にはなり得ないと、改めてこの抜刀心持之事を読み直してみた次第です。


 

 

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2020年6月20日 (土)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の21弛抜

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の21弛抜(はずしぬき・ゆるみぬき?)

抜刀心持之事21本目弛抜
前の如く歩み行敵より先に打を体を少し開き弛して抜打に切なり

 大江正路の奥居合立業の部十八番受け流しが相当しそうです。:(進行中左足を右足の前に踏出し身を変して請流す)左足を出すとき、其の左足を右斜に踏み出し、中腰となり、刀の柄元を左膝頭の下として、刀を抜き直に其手を頭上に上げ、刀を斜とし、体を左斜前より後へ捻る心持ちにて受け流し、左足を踏みしめ、右足を左足へ揃へ、右拳を右肩上に頭上へ廻し下し、上体を稍々前に屈めると当時に真直に左斜を斬る、揃へたる足踏みより左足を後へ引き、血拭い刀を納む。
 是は、大森流の六本目流刀の立業です。「体を少し開き弛して抜打に切なり」とは言えません。受け流すための動作は、敵に外される危険性が高い上に、刀で刀を受ける受太刀は受けた瞬間に折れる可能性が高く、刃で受ければ刃こぼれや、食い込まれて流せないなどありえます。

 細川義昌系統の尾形郷一貫心の奥居合はこの業に相当する業は見当たりません。大江先生の「受け流し」に相当する奥居合之業も見当たりません。

 檀崎友影の奥居合立業その十受流:意義 敵、吾、正面より斬込み来るを頭上に抜き、敵刀を受流して敵の首に斬付けて勝つの意である。動作 正面に向かって前進中、左足を出すと同時に刀に両手をかけ左足を右前に出しながら、刀を頭上に抜いて受け、右足を右に一歩踏み出して流し、左手を添え左足を後方に引きながら敵の首に斬り下し納刀する。
 
 山蔦重吉の奥居合立業十本目受流(弛抜 ゆるみぬき):進行中、自分の敵が真正面から斬込んで来るので、刀を右斜め横に抜くや、左足先を右に向け、右足の前に踏出して、敵の刀を受ける。右足を右斜めに運んで、その刀を受流し、左足先を敵の方に向け、左手を柄に添え、右足を左足に揃えるように踏込むと同時に、敵の肩口に斬り付ける・・。

 敵の斬り込みを刀で受け、体を右向きから左向きに軸回転させながら受け流し、改めて斬る様です。古伝の手附は「歩み行敵より先に打を体を少し開き弛して抜打に切る也」です何処にも受け流しなどと書いて無いし、摺落す動作も無い、体を開いて外せと云っています。外した時が切った時、其の為には我が頭上に斬り込ませる「懸かり待つ」心得が必要です。此処まで稽古して来た幾つもの業技法を以て応じる稽古を要求しているのでしょう。
 古伝の無雙神傳英信流居合兵法は良く組み立てられています。古伝の手附を読んで、それまでの業技法の延長線上の動作でお茶を濁させてはくれそうにありません。

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2020年6月19日 (金)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の20抜打

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の20抜打

抜刀心持之事20本目抜打
歩み行中に抜打に切敵を先に打心也

 大江正路の奥居合には立業の抜打は存在しません、置き捨ててしまったか、習わなかった、古伝を知らなかった。大江先生には下村茂市からも五藤正亮からも無双直伝英信流の相伝は無かったとされるのですが、大江先生は8人ほどに根元之巻を印可されていますから目録位はとも思いますが、五藤正亮からの目録ななどの資料の話は聞いたことが有りません。

 細川義昌系統の尾形郷一貫心による奥居合之部十八抜打(出合頭に斬る)正面へ歩み往きつつ、鯉口を切り右手を柄へ掛けるなり、右足踏込み、出合頭に(正面へ)抜打に斬付け、左足を右前足に踏揃へると同時に刀を納め終る。
 尾形先生の抜打の文章だけでは、抜打が横一線なのか、真向打下しなのか、片手袈裟なのか解りません。大森流の抜打は「刀を右前へ引抜き刀尖をひだり後ろへ突込み、諸手上段に引冠りて斬込み」です、英信流の抜打は「両膝を伸しつつ、刀を右前へ引抜き(膝が立つと同時に両足爪立て)刀尖を左後へ突込み、諸手上段に引冠りて斬込み」です。奥居合の二十本目抜打は「頭を下げ礼をして俯きたるまま、両手引込め鯉口と柄を執り、急に腰を伸しつつ、刀を右前へ引抜き刀尖を左後へ突込み、諸手上段に引冠りて斬り込み」ですから、上段からの真向斬下しでいいのでしょう。

 檀崎友影の奥居合には抜打に相当するものは見当たりません。
 
 山蔦重吉の奥居合には抜打に相当するものは見当たりません。

 古伝抜刀心持之事には立ったまま歩み行敵を抜打にする業が存在したのです。この業を大森流の十一本目抜打の業を立って演じる事は出来ます。「歩み行く時正面から敵が刀を抜いて真向から斬込まんとする、我は左足を踏み込み刀に両手を懸け刀を抜きかけ、敵が斬下すや左足を右足に引き付け同時に柄頭を正中線を通して左肩を覆う様に上に抜き上げ敵刀を摺り落し、左手を柄に添え振り冠るや右足を踏み込み敵の真向に斬り下す。血振り納刀す」

 全日本剣道連盟居合の12本目「抜打」:要義 相対して直立している前方の敵が、突然、切りかかってくるのを、刀を抜き上げながら退いて敵の刀に空を切らせ、更に真っ向から切り下ろして勝つ。
 是では、古伝の抜刀心持之事の抜打にはなりません。

 然し、この抜刀心持之事の抜打は「歩み行中に抜打に切り敵を先に打心也」が手附けです。無雙神傳英信流居合兵法は成立が江戸時代中期1700年代の農民と武士の中間の武芸者によって組み立てられたと思われます。武術に思想的要素を持つよりも、必ず勝つと云う思想で組み立てられていたとしたならば、敵の害意を察するや、抜打つ事が最優先であって、敵の動きに従って勝つ柳生新陰流の「活人剣」など無用だったかもしれません。
 再び、然し、それでは柳生新陰流の「色付色随」の教えを充分知る者には勝てないでしょう。次回は「色に付き色に随う」に沿った「弛抜」になります。

 

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2020年6月18日 (木)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の17抜打上中下

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の17抜打上中下

抜刀心持之事17本目抜打上中下(暇乞三本)
手附は有りません。
曽田虎彦メモ:暇乞三本 格の低き者に対する黙礼の時、等輩に対する礼の時、目上の者に対する礼の時

英信流居合目録秘訣極意の大事暇乞:仕物などを云付られたる時抔其者の所え行て四方山の咄抔をして其内に切るべし、隙無之ときは我が刀を取って「又近日」と立さまに鐺を以て突き倒し其侭引ぬいて突なり、又は亭主我を送って出るとき其透間を見て鐺にて突たおして其侭引きぬいて突くべし。
*
 大江正路の奥居合立業十九番暇乞:(黙礼)正座し両手を膝上に置き黙礼し、右手柄に掛かるや刀を斜に抜き付け上段にて斬る。
   二十番暇乞:(頭を下げ礼をする)両手を板の間に付け、頭を板の間近く下して、礼をなし、両手を鞘と柄に同一に掛け直ちに上に抜き上段となり、前面を斬る。
 二十一番暇乞:(中に頭を下、右同様に斬る)両手を膝上に置き黙礼より稍々低く頭を下げ礼をなし、右手を柄に掛け刀を斜に抜き上段にて斬る。(止め)(立合終り)
 大江先生の暇乞三本の順序がおかしいですね、現代風に直せば十九番・二十一番・二十番でしょう。この文章は堀田捨次郎が大江居合を見て記述したもので大江先生は監修したことになっていますが疑問です。手附にはその動作に至る思いが伝わるのですが伝わってきません。「黙礼し、右手柄に掛かるや刀を斜に抜き付け上段にて斬る」の文章ですが、現代居合の暇乞が摺り込まれていますから「刀を抜き上げ上段に振り冠って斬り下す」とイメージが先行します。この文章では、「黙礼し、右手を柄に掛け刀を斜め前に抜き出し、上段に振り冠り切り下す」のように読んでしまいそうです。
 大正7年1918年今から102年前土佐の居合無双直伝英信流の解りやすい解説書として、世に出された現代居合です、この解説内容で誤り伝えられたことも多かったろうと思います。
 抜打上中下を暇乞として、暇乞いの際の暗殺行為、闇討ちを嫌ってこの暇乞いを正式な演武会では禁じているのも、大森流の順刀(大江居合の介錯)を介錯の仕方を教える業だからと、是も忌み嫌って演じる事をご法度にされてしまっています。古伝は「抜打」であって「暇乞」では無い。座しての挨拶の際敵が仕掛けて来たので「抜き打つ」のであれば別に嫌う理由は無いでしょう。曽田メモについてはその謂れは古伝には見られません。曽田先生が聞きかじったか師匠の行宗貞義による口授に一部にあったのかも知れません。明治のお化けのように思います。然るべき方々で見直すべき時期でしょう。

 細川義昌系統の尾形郷一貫心の奥居合二十番目抜打:(対座して居る者を斬る)正面に向ひ対座し、刀を鞘なり前腹へ抱え込む様に横たえ両手を前につかへ、頭を下げ礼をして俯きたるまま、両手引込め鯉口と柄へ執り、急に腰を伸しつつ、刀を右前へ引抜き刀尖を左後へ突込み、諸手上段に引冠りて斬込み、刀を開き納めつつ、両足の踵上へ臀部を下すと共に、納め終り、爪先立てたる足先きを伸し正座して終る。
 暇乞の呼称は使用していませんが、「両手を前につかへ、頭を下げ礼をして俯きたるまま」の一節が暇乞いをイメージするのは大江居合に慣らされてしまったからでしょう。暇乞の時が最も危険の伴う時とも云える、武術は隙を見せて敵を誘いその誘いの際の隙に付け込むことは当然のことです。力任せに威圧しながら遮二無二斬り込むのは武術とは言えません。

 檀崎友影の奥居合居業その九暇乞:意義 暇乞は上意打とも称え、主命を帯びて使者に立ち、敬礼の体勢から抜打にする意にして、又彼我挨拶の際、彼の害意ある気配を察知して、其の機先を制して行う方法である。 動作 正面に向って正座し、その座した体制から僅かに頭を下げ礼をなす間もなく、俯いたまま両足爪先を立て抜刀、抜打と同じ要領で雙手上段より斬下し、血振り、納刀する。
 その十暇乞:動作 正面位向って正座し、両手をつき、頭をやや深く下げるや、その体勢にて刀を抜き上段より斬下すこと、前と同要領である。
 その十一暇乞:動作 両手をつき頭を深く下げた瞬間抜打すること、前に同じ。この技は、十本目、十一本目とも意義は九本目と同じであるが、動作のうち頭を浅く下げる、深く下げるの違いがある。十本めは九本めよりやや深く、十一本目はさらに深く下げた場合の動作である。

 山蔦重吉の奥居合立業十三本目暇乞(三本あり):奥居合中唯一の正座のわざである。これも上意討ちのひとつであり、主君の命令を受け、使者として敵となるべき者を訪問して、お互いの挨拶の際に、敵が刃向かう心持のあるのを感知し、機先を制し、挨拶の途中に抜打ちに、敵を正面より斬倒すわざである。三つの動作がある。1、正面に向かって正座し、頭を少し下げ(黙礼程度の会釈)礼をかわす間をおかず、うつむいたまま一気に抜刀、上段より敵の正面を斬下す。2、両手をつき頭を低く下げ、その体勢にて抜刀、敵が頭を下げるところを斬る。3、両手をつき深々と礼をして、体を起しながら抜刀、敵が頭を上げるところを斬る。暇乞の動作を前述のとおり三通りに分けてあるが、要するに自分にも最も有利、有効な動作を、敵の気配や動きに応じて採る点から、分けてある訳である。

 暇乞の業名につられ、上意打の名目でこの抜打三本を演じていますが、既に大森流居合之事十一本目抜打で充分稽古してきている筈です。機先を制して抜き打つのではなく、礼をする事で害意の有る敵が斬り込まんとする気に乗じて確実に斬る事は出来るでしょう。礼で頭を下げるのは我が先か、敵が先か、頭を下げる際何処を見ているのか、研究課題の多い業です。
 参考にし古伝の大森流居合之事十一本目抜打:座している所を向より切て懸るを、其のまま踏ん伸んで請流し打込み開いて納る。尤も請流に非ず此の処筆に及ばず。
 この手附を「座して、挨拶の際頭を下げる所を向より切て懸るを、其のまま踏ん伸んで請流し打込み開いて納る。尤も請流に非ず此の処筆に及ばず」と解釈すれば現代の暇乞いとも通じて来ます。大江先生の暇乞の「刀を斜めに抜」の効果が出る所でしょう。古伝の抜打上中下の手附が無いことが、抜打の心得で自分で考えろと云うのかも知れない、古伝の大らかな凄い所かも知れません。

 

 
 

 

 

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2020年6月17日 (水)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の16虎走

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の16虎走り
抜刀心持之事16本目虎走
居合膝に座して居立って向へ腰をかゞめつかつかと行抜口の外へ見へぬ様に抜付打込納又右の通り腰をかゞめ後へ引抜付打込也

英信流居合目録秘訣上意之大事虎走:仕物抔云付られたる時は殊に此心得入用也、其外とても此心得肝要也。敵二間も三間も隔てゝ座し居る時は直に切る事不能、其上同座し人々居並ぶ時は色に見せては仕損る也、さわらぬ躰に向ふへつかつかと腰をかゞめ歩行内に、抜口の外へ見えぬ様に体の内にて刀を逆さまに抜きつくべし、虎の一足の事の如しと知るべし、大事とする所は歩みにあり、はこび滞り無く取合する事不能の位と知るべし。

 此処で云う「虎の一足」は英信流之事二本目「虎一足」だろうと思いますが、「虎一足」を受け太刀として習った現代居合の学者には理解できないかもしれません。
 英信流居合之事二本目虎一足:左足を引き刀を逆に抜て留め扨打込み後前に同じ
 大森流居合之事十本目虎乱刀:是は立事也幾足も走り行く内に右足にて打込み血震し納る也
 どちらも現代居合のドタバタ足を踏み慣らす様な動作や、膝への斬り込みを刀で受け留めること、更には横一線の抜き付けなど、この古伝からは思い描けません。

 大江正路の奥居合居業八番目虎走り:(中腰となり、走り抜斬又後ざりして抜斬る)座したる處より柄に手を掛け、稍々腰を屈め、小走りに数歩進み出で、右足の踏み出したる時抜き付け、同体にて座して斬る(血拭ひ刀を納むるや)刀を納めて二三寸残りし時屈めたる姿勢にて、数歩退り左足を退きたる時中腰にて抜付け上段となり座して斬る。
 
 細川義昌系統の尾形郷一貫心の奥居合之部九本目虎走:(次の間に居る者を斬り、退る処へ追掛け来る者を斬る)正面へ向ひ居合膝に座し、左手を鯉口に、右手を柄に執り抱へ込む様にして立上り、上体を俯け前方へ小走に馳せ往き腰を伸すなり右足踏込んで(対手の右側面へ)抜付け、左膝を右足横へ跪きつつ、諸手上段に引冠り、更に右足踏込んで斬込み、刀を開き納めたるまま立上り、又刀を抱へ込む様に前に俯き小走に退り腰を伸ばすと同時に、左足を一歩後へ退き、追掛け来る者へ(右側面へ)大きく抜付け、又左膝を右足横へ跪きつつ、諸手上段に引冠り右足踏込んで斬込み、刀を開き、納め終る。

 檀崎友影の奥居合居業其の八虎走:意義 敵、前方に逃げ去るを、吾、小走りに追いかけて是を倒したるに他の敵、出で来りて吾に仕掛けんとするを、吾後退し、間合を計って斬付け勝つの意である。動作 正面に向い立膝に座し、刀に両手をかけ、刀柄を右腰に付けると同時に体を低くして立上り、前方に小走りして、右足を踏込むや、抜付け左膝を跪くと同時に左肩側から振冠り真向に斬下し、血振り納刀しながら右足を左足に退きよせ、刀柄を右腰方に引付けながら、更に低く立上りて小走りに戻り、左足を退くと同時に抜付け、左膝を跪くと同時に振冠り斬下し、血振り、納刀する。

 山蔦重吉の奥居合居業八本目虎走り:中腰、前かがみの姿勢(丁度虎が獲物を追うように)で柄を右腰につけ、逃げる敵を小走りに追いかけ、斬り間合に入った時上体を起こし、同時に右足を踏み込んで敵の上膊に抜付け、左膝をついて上段からその敵を斬り下す。血振り、納刀しつつ右足を左足に引寄せ、柄を右腰に引寄せながら半蹲踞となる。半蹲踞の姿勢で、まだ刀は五、六センチ納めのこしているころ、他の敵が正面よりより攻撃して来るので、小走りに自分が後退しながら斬間合に入った時、前の動作と同じく抜付け、左膝をつき斬下す。

 此処に掲載させていただいた、これ等の流派の古伝の虎走なのですが、「柄口外へ見えぬ様に体の内にて刀を逆さまに抜きつくべし」の心持ちは手附の文章からは読みとれません。柄を抱え込む様に、柄を右腰に付けるが見えぬ様にと云えるかどうかです。逆さまに抜き付けるのではなく横一線の抜き付けばかりです。さかさまの抜き付けとは、下からの斬り付けでしょう。追い懸ける足捌きも小走りであってドタバタ音を立てずスルスルと走り接近することでしょう。古伝英信流居合目録秘訣は言っています。

 

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2020年6月16日 (火)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の15放打

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の15放打

抜刀心持之事15本目放打
行内片手打に切納ては又切数きはまりなし

 大江正路の奥居合立業の部十二番總留め:(進行中三四遍斬っては納む)右足を出して、刀を右斜へ抜き付け、左足を出して抜付けたる刀を納む、以上の如く四五回進みつゝ行ひ、最後の時は其まゝにて刀を納む。
 大江先生、業名を總留と改変されています。細川先生は放打です。この違いは何処にも謂れが残って居ません。

 河野百錬は昭和8年1933年の無雙直伝英信流居合術全では大江先生と同様場の状況を記載していませんでしたが、昭和13年1938年の無雙直傳英信流居合道では奥居合立業之部其四惣留の意義で「吾れ狭まき板橋又は堤、或は階段等の、両側にかわせぬ様な場所を通行の時、前面より敵仕掛け来るを、其の胸部に斬り付け、一人宛を仆して勝の意なり。」と何処からこの様な状況の業と特定されたのか解りませんが書き込まれ、現代居合でも無双直伝英信流や夢想神傳流などでもその様に指導され演じられています。

 細川義昌系統の尾形郷一貫心による奥居合放打:(右側へ来掛る者を一々斬る)正面へ歩み往きつつ、鯉口を切り左足踏出したる時、右手を柄に掛け右足踏出し、右前へ抜付け、左足を右前足に踏揃へる、同時に刀を納め、又右足踏出して抜付け、左足を右前足に踏揃へるなり刀を納め、すること、数度繰返し(三回位して)刀を納め直立の姿勢となり終る。
 この細川居合は高松から広島貫汪館に伝わり、細川居合が残された古伝の趣が感じられます。状況説明で「右側へ来掛る者を一々斬る」はこの動作では読み取れません。右だろうと左だろうと正面だろうと、後にしてもこの抜打を繰り返し稽古すれば十分応じられるもので、板橋だとか後から取ってつける様な事は古伝が笑っています。前回の五方切の教えも同様に、いたずらに特定せずにその業を演じ乍らあらゆる想定に応じる稽古業として完成させられれば素晴らしいものです。一考を要します。

 檀崎友影居合道ーその理合と神髄奥居合立業その7放打(総留):意義 吾、狭い板橋または土堤の細道等、体をかわせぬ場所を通行の時、前面の敵の胸部に抜打し、又其の影にひそみ居る敵に対して勝つの意である。動作 正面に向かって直立し、前方に歩みながら左足を踏出すと同時に両手を刀にかけ、右足爪先を左向きに踏込むと同時に腰を充分左にひねり、半身となって抜打に右斜に(敵の胸辺に)斬付け、納刀しながら左足爪先が右足右に爪先前方足裏を返しながら腰を下して運びながら納刀、又右足を一歩踏込んで、前述同様に斬付けること三度して、斬付けた所より腰をひねって正面に向い、血振り、納刀する。
 檀崎先生の放打の右足の踏み出し、左足の納刀時の足裏返し、独特の方法ですが、右足も稍々左ならば多少斬撃力に影響するかもしれませんが、状況変化に応じられない足捌きにならない事が良いのでは、左足の爪先足裏返しなどは何故と問いたい処です。

 檀崎先生の門人松峯達男先生は「右足爪先をやや左前方に向けて」とされ「右斜め前にいる第一の敵の胸部に抜打ちに切りつけ」ですから教えを充分理解されているのでしょう。しかも敵は、前方右手に坐位する三人の敵とされています。敵の場の想定に拘り過ぎるのも、現代居合の特色ですが、古伝はもっとおおらかです。左足の返しも一考を要します。但し允可とかの審査では審査側が好きなように想定して、特定の形を演じさせれば良いのでしょう。

 山蔦重吉の夢想神傳流奥居合立業四本目総留(放打):狭い板橋、土堤、細道、階段など、両側に体を自由にかわせないような、障害のある場所を進行中、前面に数人の敵がいる。腰を充分左にひねって、右片手抜打ちに敵の肩口、胸部を斬下し、第二、第三の敵も同様に片手抜打ちに斬る。最後に、腰を右にひねり、正面に向き直り、血振り、納刀するわざである。足の運びに二様ある。第一の敵に対し、右足を(足先を左向き)踏込み、腰を左にひねり半身になり(左足先も左向き)右片手抜打ちに斬下す。次に左足を鷺足の如く右足の右横に(左足は爪先を左向きにしたまま)腰を落して踏みつけながら、いったん納刀、右足を第一の敵に対するごとく右へ踏出すと同時に、片手抜打ちに第二の敵に斬付ける。これを数回くり返す。斬付けたときは、いつも半身で敵に対し自分は左向きになっている。伝書の放し打ちは、斬付けのとき左、右の足は前方、敵の方に向いているところが前述と異なる。
 山蔦居合は同門の足捌き体裁きをそれと無く疑問に思われている様な・・。

 抜刀心持之事は、古伝の手附に従ってまず、師匠に習った通りに体が勝手に動いてくれるまで稽古する事で、問題点が見えて来る。片手抜打ちに依る敵の胸部への抜き付け、膝への抜き付け、敵の攻め込む角度による初動の足捌き、その日の合同稽古の事前運動としてやってみるのも良さそうです。

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2020年6月15日 (月)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の14五方切

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の14五方切

抜刀心持之事14本目五方切
歩み行内抜て右の肩へ取り切り又左より切又右より切又左より切段々切下げ其侭上へ冠り打込也

英信流居合目録秘訣 外之物ノ大事 惣捲形十:竪横無尽に打振て敵をまくり切る也故に形十と有也常の稽古の格には抜打に切りそれより首肩腰膝と段々に切り下げ又冠り打ち込む也

 大江正路の奥居合立業の部惣捲り:(進行中面、肩、胴、腰を斬る)右足を少し出して、刀を抜き、其足を左足に引き寄せ、右手を頭上へ廻し、右肩上に取り、左手を掛け稍々中腰にて(右足より左足と追足にて)敵の左面を斬り、直に左肩上に刀を取り、追足にて敵の右肩を斬り、再び右肩上段となりて、敵の左胴を斬り、再び左肩上段となり右足を踏み開き敵の右腰を目懸け刀を大きく廻し体を中腰となして敵の右腰を斬り、中腰のまゝにて上段より正面を斬る、(左面斬り込みより終りの真面に斬ることは一連として早きを良とす。)
 抜刀心持之事14本目五方切は古伝の英信流居合目録秘訣「総捲形十」でしょう。大江先生の業名も「惣捲り」です。古伝の手附の「抜て右の肩へ取り切り」は出来ているのですが、英信流居合目録秘訣の「常の稽古の格には抜打に切り」の教えは出来ていません。抜いて構えて斬る是では居合にならないでしょう。

 細川義昌系統の尾形郷一貫心による奥居合之部五方斬:(前方に立って居る者を斬る)正面へ歩み往きつつ、鯉口を切り左足踏出し、右手を柄に掛け右足踏出す、同時に刀を引抜き刀尖を左後へ突込み、頭上より右肩へ執り対手の左大袈裟に斬込み、其刀を右上より振り返へし頭上より左肩に執り対手の右大袈裟に斬込み、又、其刀を左上より振返して右腕外へ執り、腰を低めて、対手の左腰より横一文字に斬込み、甲手を返して左腕外へ執り、更に腰を下げ対手の向脛を横に払ひ腰を伸しつつ、諸手上段に振り冠り(真向乾竹割に)斬下し、刀を開き、納め終る。
 尾形先生の文章では、抜いて八相に構えてから袈裟切している様です。惣捲形十の「常の稽古の格には抜打に切り」です。

 檀崎友影の奥居合立業その6五方斬(惣捲):意義 敵、正面より斬込み来るを、吾、刀を抜くと同時に一歩退きて敵刀を摺り落しながら右肩にとり、敵の退く所を追撃して勝つの意である。動作 正面に向かって直立し、前方に歩みながら、右足を一歩踏出すと同時に、刀に両手をかけ、刃を上にして十五センチ位抜き、右足を後方に一歩退きながら、刀を上方頭部、左肩を囲むようにして抜き取りながら、敵の斬込み来る刀を摺り落すや、右横水平に首後肩にとり、右足を踏込み、敵の左面に斬付け、更に刀を返して左足を踏込み、右肩に斬付け、尚も右足を踏込んで左胴に斬付け、更に左足を踏込んで敵右腰を一文字に斬払い、振り冠り、右足を踏込んで真向より斬下し、血振り、納刀する。
 檀崎先生の五方切は敵が切って懸るのを、一歩下って外すや斬り込む動作が付加されました。この動作は大江先生も、河野先生の昭和8年1933年の無雙直傳英信流居合術全にも無かった動作で、河野先生の昭和13年1938年の無雙直傳英信流居合道の奥居合立業之部「惣捲」に記載されている「敵正面より斬り込み来るを、吾れ刀を抜き一歩退きて敵刀を摺り落しつゝ上段に冠り・・」とそっくりです。

 山蔦重吉の奥居合立業三本目惣捲(五方切):一応五人の敵が前面にいるとして、第一の敵が正面から斬込んで来るのを、右足を一歩うしろに引きながら敵の刀を左に受流し、返す刀で右足を踏込み、その敵の左横面を斬り、刀を返して左足を踏出して前進第二の敵を右肩より袈裟に斬り、再び刀を返して右足を踏出し、第三の敵の左胴を斬り、さらに左足を一歩踏み出して刀を水平に返し、第四の敵の胴を右側より諸手で横一文字に斬り払って、刀を上段にとり前進、第五の敵を真向から斬下すわざである。敵は五人に限らない。要するに前面の多数の敵を追撃する刀法と考える。
 考えるのは自由ですが、こんなに五人も切ったのでは、と思いますが、稽古業の想定ならばそれも良いでしょう。山蔦先生も河野百錬の第一の敵の斬り込みを受流し左面を斬るから始まります。後の先が居合の心得で、我から抜き打つ古伝五方切の「歩み行内抜て右の肩へとり・・」は外されてしまった様です。英信流居合目録秘訣惣捲形十では「抜打に斬り」とまで言って居るのを無視してしまう分けです。
 恐らく、そのつもりだと云うのでしょう。敵の斬り込みがあったならば、出足を退いてしまえば敵の刀は空を斬るはずです。そこまで稽古で身に付けなければ唯の形演舞に過ぎません。ただ、外された敵は切先を我喉元に付けて踏み込めば突いて来ます。
 

 

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2020年6月14日 (日)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の13追懸切

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の13追懸切

抜刀心持之事13本目追懸切
抜て向へ突付走り行其侭打込也
 
英信流居合目録秘訣の外之物ノ大事追懸切:刀を抜我が左の眼に付け走り行て打込、但敵の右の方に付くは悪しゝ急にふり廻り抜きハロヲが故也。

 
大江正路による奥居合立業にはこの「追懸切」に相当する、業名も動作も見当たりません。

 この「追懸切」は刀を抜いて、左青眼に構えて走り行き、間境で上段に振り冠って踏み込んで前方の敵に斬り下す、但し斬り込む際敵の右の方に付くのは良くない、振り向いて抜き払われるためだ。
 抜刀して追い懸けるのでは居合では無いと云う事で抹殺してしまったのでしょうか。居合を抜く敵に対して攻めていく稽古は是非やっておきたいものです。敵の動作は河野百錬の創案した抜刀法の「後敵抜打」が右廻りの抜き付けで相当します。合わせて同刀法には「後敵逆刀」による左廻りで振り向き、下から切り上げる業も有ります。

 細川義昌系統の尾形郷一貫心の奥居合之部十五本目追掛斬:(前方へ歩み行く者を斬る)正面へ歩み往きつつ、鯉口を切り左足踏出したるとき、右手柄に掛け右足踏出すと共に、刀を引抜き刀尖を前に柄頭を腹部へ引付諸手となり、小走に前方へ走り往きつつ上段に振冠り右足踏み込んで斬込み、刀を開き納める。

 檀崎友影の奥居合立業には、古伝抜刀心持之事「追懸切」に相当する業名および動作は有りません。中山博道は居合の手附は残して居ません。同時に奥居合の指導はされていなかった様な気もします。河野百錬の現代居合と森本兎久身による五藤正亮の居合あたりから組み立てられた檀崎先生の独習による奥居合であれば、この業は無視されても仕方が無いでしょう。

 山蔦重吉の奥居合立業11本目追かけ斬り:大江先生が古伝を整理された時に捨てられたわざの一つと想像される。一般には行われていないが、実戦には多く起こりうるものと考えられるので略述する。逃げて行く敵を小刻みに追いかけながら徐々に刀を抜き、敵に追いついた時、一気に抜刀、敵の背後から、敵の首、腕あるいは胴へ抜付け、さらに追いこんで上段より敵の頭上を斬下す。通常、武士の心意気として士分の者をうしろから斬ることはしない慣しであるが、上意討(主君の命令で斬る場合)などの場合、何としても敵を討たねばならないとき、こうした攻撃方法もある得るわけである。
 内容には古伝との違いがあるのですが、大江先生が捨てた業とか何を元に、「夢想神傳流居合道」に書かれたのか聞いて見たいものです。業についても古伝の手附は抜刀して構えて追かけた上で斬って居ます、この山蔦居合の元は何か興味がありますが、夢想神傳流の方にお任せしておきます。

 抜刀心持之事は古伝神傳流秘書では、大森流・英信流・太刀打之事・坂橋流棒・詰合・大小詰・大小立詰・大剣取の各稽古を積んだ上で学ぶ「格を放れて早く抜く也」と前書きされた形や順番などに捉われずに自由に考えて業を稽古しろ、然も早業を目指せとも言って居ます。

 

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2020年6月13日 (土)

無雙神傳英信流居合兵法1抜刀心持之事1の12夜ノ太刀

無雙神傳英信流居合兵法
1、抜刀心持之事
1の12夜ノ太刀

抜刀心持之事12本目夜ノ太刀
歩み行抜て躰を下り刀を右脇へ出し地をハタと打って打込む闇夜の仕合也

英信流居合目録秘訣夜之太刀:夜中に仕合には我れは白き物を着るべし、敵の太刀筋能見ゆるなり場合も能知るゝものなり放れ口もなりやすし。白き肌着抔を着たらば上着の肩をぬぐべし、構は夜中には下段宜し、敵の足を薙ぐ心得肝要なり。或は不意に下段になして敵に倒れたると見せて足を薙ぐ心得も有るべし。

居合兵法極意巻秘訣闇夜之事:闇の夜は我が身を沈めて敵の形を能見透かすべし、兵器の色をはかるべし、若難所有らば我が前に当て戦う可べし。敵の裾をなぐる心持よし。

 大江居合の信夫を思わせる夜ノ太刀の動作の秘訣です。夜の仕合には白いものを着ろ、闇夜では体を沈めて敵の様子を能く見ろと云っています。抜刀心持之事では敵を音で誘って其処に打ち込んで来るのを打てと云うのです。
 其の為我は敵を認識出来ていて敵は我を認識していないので誘い出して打つのが良いと云う風に捕えた先生方の多い事。
 深夜の真っ暗闇でも慣れて来ると灯りが無くても大凡周囲を認識できるものです。若い頃は登山を志して何度も夜の訓練をしたものです。この夜ノ太刀の動作は敵に音で誘いを懸けそこに打ち込んで来るのを待って打ち込む兵法の極意の一つでしょう。

 大江正路の奥居合立業十三番目信夫:(暗打ち)左足より右足と左斜方面に廻りつゝ、静に刀を抜き、右足の出でたるとき、右足を右斜に開き、体を稍々右横へ屈め、中腰となり、その刀尖を板の間に着け、左足を左斜に踏み込みて上段より真直に斬る、其まゝの中腰の体勢にて、血拭い刀を納む。

 大江正路に指導を受けた岩田佐一が山内豊竹と共著で「図解居合詳説」を出されています。その奥居合立業十三番目信夫(暗打ち):目的 暗夜に斬り掛らうとする敵に対して是を避け、我から刀尖を板の間に著けて音を立て、敵をして其の處を斬らしめ、其の敵がのめる處を斬り付けるのである。直立体で正面に向って立つ。数歩進み出て刀に両手を掛け、左足右足と左斜の方向に廻りながら静かに刀を抜き、其の右足の出た時、右足を右斜に踏み、両足を斜に開き、体を稍々右横に屈めて中腰となり、其の刀尖を板の間に着けて、敵を誘ってその處を斬らせ、敵がのめる處を、我は左足を右斜に踏込んで、左手を添へて上段に冠って真直に斬り下すのである・・。
 大江居合の信夫の解説をしてくれています。

 細川義昌系統の尾形郷一貫心による奥居合之部十四本目夜太刀:(暗夜に斬込み来る者を斬る)正面へ歩み往き止まりて、左足を大きく披き、体を右へ倒し低く沈め、正面より来掛かる者を透かし見つつ刀を引抜き向ふへ突だし、刀尖で地面を叩き、其音に斬込み来るを、急に右足諸共体を引起しつつ諸手上段に冠り(空を斬って居る者へ)右足踏込んで斬込み、刀を開き納め終る。

 檀崎友影の奥居合立業その五夜の敵(信夫):意義 暗夜、前方に幽かに敵を認め、吾、左側に体をかわし、敵の進み来る真正面の地面に、吾、剣先を着けて、敵を誘い寄せ、敵、其の所に斬込み来るを上段より斬下して勝つの意である。動作 ・・前に歩みながら静かに刀に両手をかけると同時に体を沈めて、前方敵を透し見る心持にて、左足を左にふみ出すと同時に、刀柄を右腰に引き付、右足の踵を左足の外側に、爪先を敵側に向け、左足爪先にややそろう様に運ぶと同時に刀を抜き放ちながら、左足を大きく左後方に引いて、刀刃を左横に五指上向く様に拳を返し、腕を延し、刃先は最初前進したる直線上の床を軽く二度位打付けるによって、敵、其の所に斬込み来るを、右側より振り冠って真向より斬下し、血振り、納刀する。

 山蔦重吉の奥居合立業五本目信夫(夜の太刀):・・暗夜のわざで、前方に敵がいて自分の方に向って進んで来る。敵をかすかに認め、自分の体を左に転じて、進んで来る敵の正面をさける、体を沈めて、刀先で軽く地をトントンと二、三回叩いて音をたてると、誘われてそこに敵が斬込んでくるのを空を斬らせ、左斜め前に左足を踏み出して、上段より敵を斬下すわざである。

 わかりやすいか否かは別として、似たようなもので、敵を前方に認め、進行方向の筋を左に避け、刀を抜いて元の進行方向の筋上を切先で叩き、敵を誘い込んで左足を踏み込んで斬り付ける。暗闇で敵も我を認めている筈です。
 筋を外すこと、元の筋上に敵を誘い込んで切る、懸かり待つ心得を教える事かも知れません。それにしても、自分は敵を認識できているのに敵は自分を未だ認知できないなどは、有るかもしれませんが、実戦ではどうでしょう、自分に有利に解釈するのもいかさない。まかり間違って音を立てた所に敵が斬り込み空を切ってのめるなど、そんなへぼを相手に仕合などしても始まらない。古伝の手附から、この動作は刀を抜いてからの動作で居合とは言えない攻防でしょう。筋を替って抜刀し、元の筋上の地を刀でハタと打つそこへ斬り込んで来る様に出来るとは思えませんが、誘いの方法としては有り得るものとして、工夫する事と考える方が良さそうです。
 何より気になるのは、英信流居合目録秘訣でも居合兵法極意巻秘訣でも敵の足を薙ぐと極意を示しているのに、諸先輩方の教えは皆上段からの斬り下しです。古伝抜刀心持之事は「地をハタと打って打込む」ので何処と指定していないのです。大江居合は堀田捨次郎によって「剣道手ほどき」に無双直伝英信流居合術として大正7年1918年に発行されていますから、それ以降の先生方は大江居合を参考にされ、古伝は置き去りだったのだろうと思ってしまいます。

 

 
 

 

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